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権力系ホモ★グリス王国編
誰か胃薬持ってない?
しおりを挟むガタンゴトン…ガタンッ
「うぁっ?」
揺れで目が覚めた。
ガタガタ揺られて、ぼんやりした脳のまま目を開けると、俺の頭上にはロイの顔が。
「………ロイ?」
「…おはようコージ。良く眠れた…?」
「うん、それはもう…。……え? 馬車?」
「…今朝、コージ全然起きなかったから…寝かせたまま運ぼうってなって…」
「そっすか…。で、ロイが膝枕してくれたと」
「……じゃんけんで勝った…」
あ、じゃんけんで決めたのね。
ロイに膝枕されたまま首を動かすと、ルークさんとカイルがちょっと不満そうな顔で、反対側のソファに腰掛けていた。
「おはよう、コージくん」
「寝坊助め。6時出発だと言うのに、もう10時だぞ。あと4時間で到着だ」
「……ごめん。ルークさんも、ごめんなさい」
寝坊した俺が悪いなって思って謝ったけど、ルークさんとカイルは慌てた様子で否定した。
「怒っている訳ではないんだ! すまない、ロイに嫉妬して、つい声が暗くなってしまった…」
「ね、寝顔を見詰める為にわざと起こさなかった。コージが悪い訳じゃない」
………本当、俺に甘いなぁこの2人。普通に寝坊なんだから叱れば良いのに。
……あれ? ちょーっと待って…?
「…俺、どうやってこの馬車まで運ばれたんだ…?」
「無論、お姫様抱っこで」
「……………………………………………」
早朝6時。
一部の店や、長期クエストに行く冒険者なんかは既に行動を開始している時間だ。
その時間に、俺はお姫様抱っこされて街の中を移動した…?
俺は現実から目を背けるよう、ロイの膝に顔を埋め、ルークさんとカイルが『ズルい』とか『ロイ代われ』とかなんとか言ってるのも無視して、二度寝を決め込んだ。
…すやぁ。
********************
ぶにぃ…
「ふがっ」
「やっと起きたか。寝過ぎだぞ。低血圧か?」
「…だからって、ぶたっぱなにしなくても」
「不細工で絶妙に可愛いぞ」
「嬉しくないぃ」
カイルのイタズラで目を覚ました俺。
むくりと起き上がって、ボサボサになった髪を軽く整えてから振り返ると、ロイがちょっと青くなっていた。
「…ロイ?」
「待って。あッ…、足痺れた…」
「………今何時?」
「12時を過ぎた頃だな」
6時からこの馬車で膝枕してて、1度10時に起きたけど更にまた2時間…。そりゃ痺れるわな。
「ごめんロイ!」
「大丈夫…。コージの寝顔と体温で幸せだったから…」
「……ツンツン」
「ぐぁッ」
プルプルするロイにイタズラ。ルークさんも一緒にイタズラ。
「コー…ッジ…、ギルマス…ッ! ちょッ…」
ツンツン。ツンツンツン。
ごめんね。膝枕してくれたのにね。キスするから許してね。
ロイで遊んでお詫びのキスをした後、俺達は膝を突き合わせて打ち合わせなう。
結局昨日は俺、先に寝ちゃったからどういう対策をする事になったのか、分かってないんだよな。
どういう風に王様と話すのか…、というか王様って人間がもう未知だ。え? 本当に人間?
「コージくんは、聞かれた事に素直に答えてくれるだけで構わない。その他は私達が対応する」
「意地の悪い質問や、答えにくい質問を投げ掛けられたら、俺達の服の裾を引っ張るか、俺達を見ろ。助けてやる」
「意地の悪い質問って…」
「『身体を使って媚を売ったようだが、古龍殿らとの性交の際、腹は破けなかったか?』」
「えっっっっ。……ひでぇ。流石に真正面からそれ言われたら泣きそう…」
いやでも…、それ言っちゃったらセキ達怒るでしょ…。言ったらおバカ過ぎるよ…。
「この国の王は賢いが、その下はバカが多い。同じ人間と思わぬ方が良いだろう。コージとは正反対の生き物だ」
「カイルも中々ひでぇ!!」
あーけどなんか、安心感はすごいな。ルークさんにカイルにロイ。それにセキセイオウが守ってくれる。
……やっぱ、自分の心配より王様達の心配をした方が良いな、うん。
万が一の時には、セキセイオウに命令してでも止めなきゃ…。カイル達が暴れた際には『重力操作』を使って止めよう。
魔法を妨害する魔道具が使われていた場合は…、あ、『色彩の上書き』!
攻撃されたら、あれで城の騎士達が持ってる剣を没収して攻撃手段を失くさせよう!
カイルもいるし…、これで大丈夫、だよな?
*******************
「着いちゃったぁぁぁ……」
前世のアルバイト中は、バイト先の社員さんを前にしただけでもちょっと緊張してたぐらいなのに…。
大臣に宰相に王様。バカか? 胃痛で死ぬぞ俺は…!
馬車が王都の第2の壁の下を、検問無しで潜る。
カーテンの掛かった小窓からチラッと外を覗くと、滅茶苦茶注目されていた。
当然だ。王家の馬車の周りに、龍人っぽいの3体飛んでるんだから。
城も見えてきて、本格的にド緊張。そうすると自然に無口になる訳で、ルークさんもカイルもロイも励ましてくれている。
ありがてぇ…。
「みんな、は…お城、入った事ある?」
「オーディアンギルドを立ち上げる際に、1度だけ」
「聖騎士団長としては何度かあるが」
「1度兄さんに会いに来たけど、偉そうな人達に家族問題に口出しされて、それから来てない」
「あー…」
つまり全員来た事あるのね。ロイどんまい。
「王様は比較的、話の通じる人だと思ったけど…」
「王に『手を出してはいけない』って確信させなければならない」
「コージくん。答えられるものには全て答えなさい。称号や、属性の事もだ。嘘でないと分かれば、簡単に手出し出来ない」
「鑑定して貰えば分かるんだがな。お前が鑑定持ちなせいで、『偽装』を疑われる可能性もある」
うぐっ。…まぁ、今まさに『偽装』してますしね…。
「コージくん、大丈夫だ。死人が出るような事態は、我らも極力避けよう」
両肩をルークさんに掴まれて、そんな事言われたら、もう信じるしかないよな。
コンコン、ガチャ
「お待たせ致しました、阿山様。さぁ、こちらにどうぞ」
「は、はい!」
ポールさんに手を差し伸べられて、俺は馬車の外に出た。
ムッとした表情のルークさんとカイルとロイが次いで出てきたが、俺はただただ、目の前の巨大な城を眺めていた。
リアル城。THE・城。シンデレラ城をイメージして貰えると分かりやすいと思うけど、もう…、なんか全体的に『城』だった。
ここまで城らしい城ある?
「阿山康治郎様ですね? お待ちしておりました」
城の大門の前。
細目で長身の男の人が、深緑のカッコいいコートを靡かせて、俺に一礼。身分の高い人なんだなってのが、一発で分かる立ち居振舞いだ。
「宰相を務めます、ブルーノ・ダブルディです。以後、お見知りおきを」
「どうもご丁寧に…」
んなバカみたいな事しか言えないのは俺です。
だって宰相って事は、首相って事でしょ? 総理大臣でしょ? そら緊張しますわ。
それに…ブルーノさん、隙が…隙がないんだ……。多分前世は蛇系の爬虫類だよこの人…。そして俺はアマガエル…。ケロケロ。
たっかい背も相まって威圧感がやばたにえん。
けど、背後からセイとオウがぬぅっと出て前に立ってくれたから、もう安心だ。大人しく守られておきましょう。
「よっ! おひさ~! 前に城で会ったよな?」
「…えぇ。お久しぶりです。オウ様、セイ様」
「そう警戒するな。お前達が警戒すべきなのは我でも、オウでも、ルーク達でも、コージでもない。セキだ」
「…赤古龍様でしょうか」
「あぁ。1ヶ月前、セキをここに連れて来なかった理由は、自制心が効かないからだ。セキであれば、最初に兵士に絡まれた時点で、城を半壊させていただろう」
「……………」
「最近はコージに手懐けられてはいるが、コージが傷付けば半壊では済まないぞ。無論、我らもコージを傷付けられれば、黙ってなどいない」
「肝に銘じておきます」
…セイとオウすっげー! あの爬虫類さ…ごほんっ、ブルーノさんがちょっと圧倒されてる!! してるのは脅迫まがいの事だけどさ!
「…どうぞ、こちらに。王がお待ちです」
スタスタテクテクトコトコポテポテ
立派な赤い絨毯が敷かれた廊下を歩く俺ら。
え? なんか俺の足音だけおかしくない? おいカイル、振り返るな。ルークさん、にやけてるの分かってるんですよコラ。
せめてまともに緊張させてくれよ…。地味に気が抜けて辛いんですけど。
「…謁見の間では、無闇な魔法の使用は控えてください」
「む! 妨害魔道具は仕掛けていないのか!?」
「仕掛けても無意味でしょう。古龍の皆様が人化を解くだけで城は陥落しますから」
「なるほど!! 確かに!!」
やった! これで自分の身は守れる!!
「阿山様」
「はっはいっ!?」
使えそうな結界魔法を脳内でリストアップしていると、いつの間にか豪勢な扉の前にいて、謁見の間だって事が分かった。
ブルーノさんが振り返って、俺の顔を覗き込むようにして俺の名前を呼んだ。
思わず後退って、カイルとルークさんが俺の前に出る。
「…………大臣や丞相…、つまり文官らは、利益を前にすると少々頭が弱くなり…、阿山様を軽視する発言をするやも知れません。どうか寛大なお心で、ご容赦ください」
「へ…? はぁ…」
言っちゃったよ。頭が弱くなるってハッキリ言っちゃったよこの人。
いや、ジルから送られてきた会話を聞いたら、分かるんだけどさ。
でも、なんで俺に言うんだろ? 万が一の際にはセキ達を止めてくれって?
勿論。当然。止めましょう。死人が出る前に。
「では、開けます」
ギィーーーーー……
さて、いよいよ対面だぜ王様。手加減してくれよ、頼むから。本当に頼みます。
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