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ディーヴァ
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空の旅、それはまるで異世界に来たかのような感覚に陥る。雲の上を進む楽しさは飽きることを知らない。
そんな空が見える窓――のない部屋に奏は閉じこめられていた。否、閉じこもっていた。
ヘリが飛行船の収納口にしまわれ、奏はラドから自分に言い渡された部屋に入った。
「なんで……どうして」
奏は何度も何でこうなったのかを考えた、だが、考えれば考えるだけ答えは遠のいていく。あまりにも突然すぎて、あっという間の出来事すぎて、夢であることを望まない時間はなかった。
彼らとは幼い頃から一緒だった、殺したいと思われる理由があったのかと考えると、もしかしたら幼い頃から一緒にいる間が長いため、何かが募っていったのではないかと考えている。
恨みが徐々に徐々に積み重なり、殺したくなるほど嫌われたのだ。
なんとか和解する方法はないのだろうか。
奏は自分で死ぬとカナタに言ったが、死ぬ勇気など持ち合わせていないため、余計に胸が痛くなった。
こんなことなら。やっぱり殺してもらえば良かった。
そんなことを考えていたら、扉からノックの音が聞こえてくる。
奏はボーッと扉を眺めていた、動こうとしなかったわけじゃない、少しバカなことを考えてしまっただけだった。
心が折れて苦しんでる時、必ず2人がいてくれたから、2人が扉の向こうにいるんじゃないかと、一瞬今まで起きたこと全部が夢なんじゃないかと期待した。
ハァ、とため息を吐きながら入って来たのはラドだった。ラドは奏を見て、ぐっと拳を握り締めた。
「お前それ……まだ付けてたのか……」
ラドが言っているのは奏の付けているピンクのカチューシャのことだろう。
「これは、私に似合ってるから……」
奏はそれを触って、ミドノとカナタのことを思い出す。
それは2人が誕生日にくれたもの。
奏に似合いそうだったからと、買って来てくれて、奏に付けてくれたもの。
笑って、やっぱり似合うと言ってくれたもの。可愛いって言ってくれたもの。
「確かに似合うけど……」
ラドの顔が曇る。
眉が歪な方向に曲がり、奏を見る目は心配と言う色1色になる。
「忘れた方がいいこともあるって言ってるだろ……?」
お兄ちゃん、何言ってるの。
忘れたとしても命が狙われるのよ。それに。忘れるってそんな簡単なことじゃない。
「お前のためにも、あいつらのためにも……忘れた方が──」
「やだ……」
「は?」
「やだよ……」
ラドはその答えに表情を少し変える。
変わらず心配だと表情が言っているが、彼らが憎いとも言っている。
奏のことを裏切ったことが許せなかった。本当の妹を思うように心配し、憎んでくれた。
まるで本当の〝お兄ちゃん〟のように。
「…………、1人で寂しいって歳でもないだろ、そ、それに、なんだったら俺がいるし……」
気のせいかラドの顔が赤くなった気がした。まあ気のせいだろうと奏はあまり気にしなかった。
「そんなんじゃない……話せなくなるのが嫌なの、このままずっと、この状況が変わらなかったら、2人と話せなくなったら、そんなのやだ……」
──体育座りはいい。誰にも泣き顔を見られないから。
私は泣き虫だ。
泣き虫の私に体育座りは欠かせない。
そんな私を知っているカナタとミドノは、私が体育座りするだけで心配する。例えば、体育の授業、全校朝会、遊びのルール、などなど。
──……また2人のこと考えちゃってるし……。
忘れないといけないのかな。
忘れられるのかな。
忘れられれば苦労しないのにな。
本当は……分かってる、忘れなきゃならない。自分のためにも。
でも私には2人しかいなかったんだ。
どう忘れろって言うのよ。
奏は自分の足に埋めていた顔を少しだけあげる。
「お兄ちゃん……これからどこに行くの、2人は何で私を殺そうとしたの……」
お兄ちゃんが知ってるのは、1つ目の質問だけだろうけど……。
勝手に言葉が出ちゃったから……。
お兄ちゃんが2つ目の質問に答えられる筈もない。
「いい質問だな、まず2つ目の質問から答えてやろうか?」
「知らないくせに……」
「…………。知ってるって言ったら……?」
──……?
お兄ちゃんが、知ってる訳。
「知ってるんだ」
ラドの真剣な顔を見て、そんな真剣な顔するんだ、と奏は思った。
真剣な顔……? そんな顔をするってことは。
本当に、知ってるいると言うのなら。
「知ってることを全部教えてお兄ちゃん」
ラドはぴくりとも表情を変えずに、
「ああ……」
と頷いた。
それからラドは話し始めた。
奏のベッドに腰かけて、肩がぶつかるほど近い距離に来たので奏は文句を言う。
「邪魔……」
「すみません……」
相変わらずボディタッチの多い人だなまったく……。
「相変わらず酷い対応だなまったく……」
奏の思ったことを、ラドはいつも似たように話す。
気が合うのか、昔一緒に過ごした時に移ったのか。知らないけど。
「13年前、いきなり現れたんだ……」
「何が?」
「ある種族」
「種族? それとどう関係があるの……?」
ラドは奏の目をじっと見つめる。
奏は少し顔を赤くさせながらも見つめ返した。
この人も結構なイケメンなのでそれをされると照れるのだけれど。
て言うか13年前って……お兄ちゃんいくつよ。あ、確か3才くらい上だったっけ。じゃあ上司か誰かに聞いたのね。
「率直に言うとお前はその種族の一人なんだ」
「えっと……そ、そうなんだ……」
現実味のない話だなぁー……。
でも、傷口が治ったことにもそれが関係しているのなら、少しはその話が信じられるだろう。
それにしたって私が種族の一人って……ずっとミドノとカナタといたのに?
「お前は地球に六種類いる種族の中の一つ。頑丈な体、頑強な精神の維持、強硬な考え方、頑固でバカでアホで──」
へぇ! 私って強いんだ! そうね、強いわ強いわ。その種族だわ。
──奏は今現在病んでいるために変な想像をしている──……と言うわけではなく、ただそんな馬鹿馬鹿しい現実話についていけないだけだ。
──なんて夢のある話なの……!
──……そう、夢のある……。
――途中バカとかアホとか言ってなかったか?
そんな空が見える窓――のない部屋に奏は閉じこめられていた。否、閉じこもっていた。
ヘリが飛行船の収納口にしまわれ、奏はラドから自分に言い渡された部屋に入った。
「なんで……どうして」
奏は何度も何でこうなったのかを考えた、だが、考えれば考えるだけ答えは遠のいていく。あまりにも突然すぎて、あっという間の出来事すぎて、夢であることを望まない時間はなかった。
彼らとは幼い頃から一緒だった、殺したいと思われる理由があったのかと考えると、もしかしたら幼い頃から一緒にいる間が長いため、何かが募っていったのではないかと考えている。
恨みが徐々に徐々に積み重なり、殺したくなるほど嫌われたのだ。
なんとか和解する方法はないのだろうか。
奏は自分で死ぬとカナタに言ったが、死ぬ勇気など持ち合わせていないため、余計に胸が痛くなった。
こんなことなら。やっぱり殺してもらえば良かった。
そんなことを考えていたら、扉からノックの音が聞こえてくる。
奏はボーッと扉を眺めていた、動こうとしなかったわけじゃない、少しバカなことを考えてしまっただけだった。
心が折れて苦しんでる時、必ず2人がいてくれたから、2人が扉の向こうにいるんじゃないかと、一瞬今まで起きたこと全部が夢なんじゃないかと期待した。
ハァ、とため息を吐きながら入って来たのはラドだった。ラドは奏を見て、ぐっと拳を握り締めた。
「お前それ……まだ付けてたのか……」
ラドが言っているのは奏の付けているピンクのカチューシャのことだろう。
「これは、私に似合ってるから……」
奏はそれを触って、ミドノとカナタのことを思い出す。
それは2人が誕生日にくれたもの。
奏に似合いそうだったからと、買って来てくれて、奏に付けてくれたもの。
笑って、やっぱり似合うと言ってくれたもの。可愛いって言ってくれたもの。
「確かに似合うけど……」
ラドの顔が曇る。
眉が歪な方向に曲がり、奏を見る目は心配と言う色1色になる。
「忘れた方がいいこともあるって言ってるだろ……?」
お兄ちゃん、何言ってるの。
忘れたとしても命が狙われるのよ。それに。忘れるってそんな簡単なことじゃない。
「お前のためにも、あいつらのためにも……忘れた方が──」
「やだ……」
「は?」
「やだよ……」
ラドはその答えに表情を少し変える。
変わらず心配だと表情が言っているが、彼らが憎いとも言っている。
奏のことを裏切ったことが許せなかった。本当の妹を思うように心配し、憎んでくれた。
まるで本当の〝お兄ちゃん〟のように。
「…………、1人で寂しいって歳でもないだろ、そ、それに、なんだったら俺がいるし……」
気のせいかラドの顔が赤くなった気がした。まあ気のせいだろうと奏はあまり気にしなかった。
「そんなんじゃない……話せなくなるのが嫌なの、このままずっと、この状況が変わらなかったら、2人と話せなくなったら、そんなのやだ……」
──体育座りはいい。誰にも泣き顔を見られないから。
私は泣き虫だ。
泣き虫の私に体育座りは欠かせない。
そんな私を知っているカナタとミドノは、私が体育座りするだけで心配する。例えば、体育の授業、全校朝会、遊びのルール、などなど。
──……また2人のこと考えちゃってるし……。
忘れないといけないのかな。
忘れられるのかな。
忘れられれば苦労しないのにな。
本当は……分かってる、忘れなきゃならない。自分のためにも。
でも私には2人しかいなかったんだ。
どう忘れろって言うのよ。
奏は自分の足に埋めていた顔を少しだけあげる。
「お兄ちゃん……これからどこに行くの、2人は何で私を殺そうとしたの……」
お兄ちゃんが知ってるのは、1つ目の質問だけだろうけど……。
勝手に言葉が出ちゃったから……。
お兄ちゃんが2つ目の質問に答えられる筈もない。
「いい質問だな、まず2つ目の質問から答えてやろうか?」
「知らないくせに……」
「…………。知ってるって言ったら……?」
──……?
お兄ちゃんが、知ってる訳。
「知ってるんだ」
ラドの真剣な顔を見て、そんな真剣な顔するんだ、と奏は思った。
真剣な顔……? そんな顔をするってことは。
本当に、知ってるいると言うのなら。
「知ってることを全部教えてお兄ちゃん」
ラドはぴくりとも表情を変えずに、
「ああ……」
と頷いた。
それからラドは話し始めた。
奏のベッドに腰かけて、肩がぶつかるほど近い距離に来たので奏は文句を言う。
「邪魔……」
「すみません……」
相変わらずボディタッチの多い人だなまったく……。
「相変わらず酷い対応だなまったく……」
奏の思ったことを、ラドはいつも似たように話す。
気が合うのか、昔一緒に過ごした時に移ったのか。知らないけど。
「13年前、いきなり現れたんだ……」
「何が?」
「ある種族」
「種族? それとどう関係があるの……?」
ラドは奏の目をじっと見つめる。
奏は少し顔を赤くさせながらも見つめ返した。
この人も結構なイケメンなのでそれをされると照れるのだけれど。
て言うか13年前って……お兄ちゃんいくつよ。あ、確か3才くらい上だったっけ。じゃあ上司か誰かに聞いたのね。
「率直に言うとお前はその種族の一人なんだ」
「えっと……そ、そうなんだ……」
現実味のない話だなぁー……。
でも、傷口が治ったことにもそれが関係しているのなら、少しはその話が信じられるだろう。
それにしたって私が種族の一人って……ずっとミドノとカナタといたのに?
「お前は地球に六種類いる種族の中の一つ。頑丈な体、頑強な精神の維持、強硬な考え方、頑固でバカでアホで──」
へぇ! 私って強いんだ! そうね、強いわ強いわ。その種族だわ。
──奏は今現在病んでいるために変な想像をしている──……と言うわけではなく、ただそんな馬鹿馬鹿しい現実話についていけないだけだ。
──なんて夢のある話なの……!
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