リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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リョウゲ

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 黄泉はその青年に見惚れ、ぼうっと突っ立ってしまう。
 少し、少しだけ、容姿の雰囲気が青海と似ている気がする。
威稲樹いいなぎ聖唖せいあだ。よろしく、國哦伐黄泉ちゃん」
「黄泉で、いいです」
 い、威稲樹聖唖と言えば、茶王が人間最強、人間最強と何度も呼ぶ、裏社会で有名な人間最強じゃないか。
「あなたのような方が何故こんなところに……」
「私は君達に後悔して欲しくなくて来たんだ」
 彼一人だけで特殊部隊と呼ばれる隊があるほど強いと聞く。頼り甲斐があると黄泉は期待したが、よく考えたら強いだけではタフィリィから助けられないのでは? と考えた。
「アリシアとはまだコンタクトを取っているところだ。その穴埋めに私が来た。基本的にはアリシアと組んでいるんだが、今回の任務ではたまたま一緒じゃなくてな。手間を掛けてすまない」
「い、いえ」
 整い過ぎて浮世離れした顔が近づいてきて思わず後退する。青海も直視出来ないのか少し顔を逸らしているように見える。
「炎の魔王と人間最強が組んでいるなんて知りませんでした」
「あの子は頭がキレるからな。それにしても、炎の魔王とは何だ? 人間最強はよく言われるから私だと分かるんだが」
 にしたって、声に色気がある。丁寧な口調が相まって声だけでハートを鷲掴みにされそうだと黄泉は思う。その声には威厳さえ感じられる。
「じゃあさっそく、タフィリィを見せてくれるか?」
「あ、いえ。その」
 青海は行く気満々だったらしいが、黄泉がそれを阻んだ。青海は黄泉を見て不思議そうに首を傾げる。
「自分の力でなんとかしたいんです」
 聖唖はただ、黄泉を見つめた。
「昔の事件で助けてもらいました。でも我々はやめなかった。誰かが止めないといけないんです」
「黄泉……」
 青海がそれを聞き、彼女の成長に驚く。
「でも私には力がない。力が欲しいんです。弟子にしてださい、聖唖様」
 黄泉は頭を下げて頼み込んだ。
「……私も、お願いします。聖唖さん」
 黄泉が頭を下げたように、青海も頭を下げる。
「分かった。私に出来るのなら手伝おう」
「ありがとうございます」
 青海と黄泉はその日から修行に励んだ。修行といっても、聖唖は教え方が分からないので彼の動きについていくと言う修行だった。
 聖唖の動きは白馬より何千倍も早く、何千倍も刃物の扱い方に長けていて、黄泉の右手より何千倍も力を持っていた。
 真似するどころか追い付けない、修行にならないので頼み込んでゆっくりにして貰った。それでも白馬以上の実力があるのが分かる。
 修行はスパルタだった、時間を掛けるごとに親戚たちのタフィリィが侵食してしまうからだ。虫たちが融合した状態ではもう助けることができないとアリシアが言っていたそうだ。
 炎の魔王と言う呼び名をアリシアは嫌うだろうと聖唖は言う。だから彼女が来た時はアリシアと呼ぼうと青海と黄泉で決めた。
 聖唖はアリシアとコンタクトを取り続けている。
 ある日、黄泉に声が掛かり、彼女と話す機会が与えられた。
 聖唖の能力協会員だけが使える通信機を借りる。
 隠れ家の中のソファに座って話した。
『こんにちは』
「こんにちは。國哦伐黄泉と言います。よろしくお願いします」
『ええ』
 そこで会話は止まる。相手が話さないのでこちらも話せないでいると、向こうから声がかかる。
『それじゃあ』
「ま、待ってください。私は……自分で初めて何かしないといけないと思った。でもダメだった。私には救う力がなかった。助ける方法がなくてこんなところまで来てしまった。でも貴方になら助けられるかもしれないと聞いて私は、貴方に助けて欲しいと思った。協力ならなんでもする、だから」
『何故そこまでするの?』
 この質問に黄泉は即答した。
「家族だからだ」
『全員? 恐ろしくないの?』
「全員一緒に過ごしてきた大切な人達だ。いくらおぞましいと思っても、恐ろしくなんてない」
 アリシアは押し黙り、黄泉は冷や汗を流す。もし彼女に断られたら、國哦伐家も黄泉も終わりだ。
『分かったわ。もう向かっているところよ。3日で着くからそれまで耐えて頂戴』
「ありがとうアリシア!」
『いいのよ。私もタフィリィは嫌いだから』
 タフィリィはどこの組織にも配られている、彼女にも何かがあったのだろう。深く聞くことはやめた。
 それよりも、助けられるかもしれないことに黄泉は喜びを感じていた。
 黄泉はその後、聖唖と青海とともに修行の時間を過ごした。



        ◇◇◇



 3日後、事件は起こった。

「すまない、外せない任務が出来た。来月までには戻る」
 聖唖はそう言って黄泉の頭を撫で、能力協会の通信機を渡してきた。
「これでアリシアと連絡が取れる」
「は、はい」
 黄泉はそれを受け取る。不安だったが、彼は人間最強だ。彼にしかできない任務もある。引き止めることはできないと思った。
 黄泉は青海と二人だけで修行をすることにした。
 事件が起きたのは修行中だった。
 気付いたのは青海だ。
「黄泉、屋敷の一角から君を狙っている者がいる。おそらくスナイパーだ」
「私を?」
「君は当主候補になったからね」
「今更刺客が送られてくるのか」
「仕方がないさ。もうそろそろ当主が決まる頃だしね」
 黄泉が何となく空を見上げれば、星が光るようにチカチカと何かが光る。
「あそこで光っているものは何だ」
「スナイパーのレンズだよ。あまり見ない方がいい。バレたと思ったら撃ってくるかも」
「そうじゃない」
 黄泉がそう呟けば、青海は彼女の目線の先を見て同じように空を眺めた。
「千里眼の術で確かめてみたら?」
「ああ」
 黄泉は千里眼の術で確かめる。その正体は。

 白い翼。
 白い塊。

 赤鳥の変身後の姿だった。

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