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リョウゲ
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炎の魔王の件で、黄泉は青海を探していた。
蔵の中にいるかと思ったが、おらず、黄泉は滝壺の砂金の隠れ家に向かうことにした。
あそこは情報を集めやすいし、外部との連絡手段があると青海も言っていた。
実は私達は、遊園地の後に赤鳥姉さんと白馬と別れ、ある場所で連絡手段(通信機)を、ある人物に手渡してから屋敷へ帰った。
能力協会――カナキリを保護する組織の協会員の人物だ。名前は聞きそびれたが、ごく普通の人に見えた。もしかしたらあの人もカナキリだったのかもしれないが。
黄泉は砂金の隠れ家に着くと、扉の前で踏みとどまった。
扉を開けたら、砂金が笑って迎えてくれそうな気がしたからだ。
黄泉は目を瞑って俯く。どうしようかと迷っていると、扉が勝手に開いた。
「姉さ――」
「監視カメラで来るのが見えてね」
「……青海」
青海は黄泉を招き入れ、シアタールームに座らせた。
「何を見せる気だ」
「パソコンから連絡があった。映すよ」
そこにはこの間会ったあの男がいた。
「やあ、黄泉さん。名前はそこの彼から聞いたよ。そして彼と話して決めた。僕では力になれない、だからもっと上の人に話した」
「それで?」
「まず君たちの要求を聞きたいそうだ」
要求……それならたくさんあるとも。
「タフィリィを知っているか?」
「タフィリィ?」
「知らなくてもいい。報告に書いてくれ。私達國哦伐家はいつからかタフィリィと言う依存性のある虫を食べるようになった」
む、虫を……と協会員がいいながら、パソコンに打ち出していく。
「私達はその中でも稀で食べていない者だ。我々はタフィリィに脅かされ、凶暴化した彼等は我を失い暴れ続ける、後は殺すか幽閉するかだ。幽閉されても後に殺されるだろう。私達は彼等を助けたい。家族だからだ」
「要求はそれだけか?」
「……アリシア・バルマティッジに来て欲しい」
「あの事件があったのにか!?」
それは知っているのか、と思うがゆっくりと黄泉は頷いた。協会員は、「困ったな」と呟く。
「今彼女は能力協会に所属している」
「なっ」
に、逃げてから能力協会に!?
「詳しく言えば能力協会が彼女達を保護したんだ。アリシアさんは今トップ中のトップ。動いてくれるかは分からないが、今は任務中でここにはいない」
そんな……!
「どうにかならないのか!」
「どうって言われても」
「連絡は、場所はどこだ、私達が見つけてくる!」
「上に確認してみる」
そう言って男が画面から消える。少し話してから一言二言相槌を入れて、戻ってきたと思えば、彼は頭を下げた。
「少し時間が欲しい。報告はメールで上の人に送った。返事が来るのには少し時間がかかる」
「分かった。ありがとう」
通話は切れ、青海が黄泉の隣に座る。
「見てたよ。白馬と君が赤鳥と真黒を捕獲するところ」
「……白馬兄さんは知っていた」
「そうか。そりゃそうだね。化け物が出てきて駆り出されるのは当主に最も近い彼だ」
「一族で殺し合っているようなものだ。なぜ國哦伐家はタフィリィを持ち込んだ?」
「持ち込んだのは碧王だ。虫の中にある或る液体を人の体内に取り込めば彼の望む何かが起こるんだと思うよ」
或る液体を体内に……。
「喰われるだけじゃ……?」
「虫は喰われなかった。虫で身体中を満たせば化け物になった。化け物は進化する。人の姿にも戻れる。人の姿をしていても、体内にある或る液体には喰われない」
虫を取り込むことで、溶解されずに或る液体を取り込める……。
「或る液体を取り込んで何の意味が?」
「強くなれるから皆取り込むのさ」
「…………」
確かに、右腕の破壊力は凄い。シギュルージュを付けて貰ってからは一段と威力が上がった気がする。普段付けていて分かるのは前より自然に動かせるようになったと言うことだ。
「強くなりたい、私も」
「タフィリィはダメだ」
「分かっている。だからアリシアと、能力協会に助けを求めたんだ」
「そうだね。私も強くなりたいよ」
能力協会からの連絡を待ち、数日が経ってしまった。
◇◇◇
能力協会とはカナキリを保護する組織だ。だが、たまに他の種族も保護することがあった。コノカのアリシア・バルマティッジはもちろん、ヴァラヴォルフもだ。
そんな能力協会からやってきたのは、たった一人の青年だった。
青海がこっそり迎え入れたらしく、黄泉は彼らのいる砂金の隠れ家に向かっていた。
たった一人で何が出来る、何故アリシアじゃないんだと心の中で悪態をつく。
黄泉は絶望を感じていた。
黄泉が隠れ家の扉を開けば、ホテル並みのソファとテーブルが並ぶ一角に青海とその人物がいた。
青年は後ろ姿だけで、オーラを放っているように見える。
まるでこの世にいないかのようだ。
空色の髪の青年。
背丈は青海より少し高いくらいでそこまで変わらない。
容姿は……
青年と青海が立ち上がる。
青年が、ゆっくりと黄泉に振り返った。
なんて美貌だ。
なんて、美しいのだろう。
蔵の中にいるかと思ったが、おらず、黄泉は滝壺の砂金の隠れ家に向かうことにした。
あそこは情報を集めやすいし、外部との連絡手段があると青海も言っていた。
実は私達は、遊園地の後に赤鳥姉さんと白馬と別れ、ある場所で連絡手段(通信機)を、ある人物に手渡してから屋敷へ帰った。
能力協会――カナキリを保護する組織の協会員の人物だ。名前は聞きそびれたが、ごく普通の人に見えた。もしかしたらあの人もカナキリだったのかもしれないが。
黄泉は砂金の隠れ家に着くと、扉の前で踏みとどまった。
扉を開けたら、砂金が笑って迎えてくれそうな気がしたからだ。
黄泉は目を瞑って俯く。どうしようかと迷っていると、扉が勝手に開いた。
「姉さ――」
「監視カメラで来るのが見えてね」
「……青海」
青海は黄泉を招き入れ、シアタールームに座らせた。
「何を見せる気だ」
「パソコンから連絡があった。映すよ」
そこにはこの間会ったあの男がいた。
「やあ、黄泉さん。名前はそこの彼から聞いたよ。そして彼と話して決めた。僕では力になれない、だからもっと上の人に話した」
「それで?」
「まず君たちの要求を聞きたいそうだ」
要求……それならたくさんあるとも。
「タフィリィを知っているか?」
「タフィリィ?」
「知らなくてもいい。報告に書いてくれ。私達國哦伐家はいつからかタフィリィと言う依存性のある虫を食べるようになった」
む、虫を……と協会員がいいながら、パソコンに打ち出していく。
「私達はその中でも稀で食べていない者だ。我々はタフィリィに脅かされ、凶暴化した彼等は我を失い暴れ続ける、後は殺すか幽閉するかだ。幽閉されても後に殺されるだろう。私達は彼等を助けたい。家族だからだ」
「要求はそれだけか?」
「……アリシア・バルマティッジに来て欲しい」
「あの事件があったのにか!?」
それは知っているのか、と思うがゆっくりと黄泉は頷いた。協会員は、「困ったな」と呟く。
「今彼女は能力協会に所属している」
「なっ」
に、逃げてから能力協会に!?
「詳しく言えば能力協会が彼女達を保護したんだ。アリシアさんは今トップ中のトップ。動いてくれるかは分からないが、今は任務中でここにはいない」
そんな……!
「どうにかならないのか!」
「どうって言われても」
「連絡は、場所はどこだ、私達が見つけてくる!」
「上に確認してみる」
そう言って男が画面から消える。少し話してから一言二言相槌を入れて、戻ってきたと思えば、彼は頭を下げた。
「少し時間が欲しい。報告はメールで上の人に送った。返事が来るのには少し時間がかかる」
「分かった。ありがとう」
通話は切れ、青海が黄泉の隣に座る。
「見てたよ。白馬と君が赤鳥と真黒を捕獲するところ」
「……白馬兄さんは知っていた」
「そうか。そりゃそうだね。化け物が出てきて駆り出されるのは当主に最も近い彼だ」
「一族で殺し合っているようなものだ。なぜ國哦伐家はタフィリィを持ち込んだ?」
「持ち込んだのは碧王だ。虫の中にある或る液体を人の体内に取り込めば彼の望む何かが起こるんだと思うよ」
或る液体を体内に……。
「喰われるだけじゃ……?」
「虫は喰われなかった。虫で身体中を満たせば化け物になった。化け物は進化する。人の姿にも戻れる。人の姿をしていても、体内にある或る液体には喰われない」
虫を取り込むことで、溶解されずに或る液体を取り込める……。
「或る液体を取り込んで何の意味が?」
「強くなれるから皆取り込むのさ」
「…………」
確かに、右腕の破壊力は凄い。シギュルージュを付けて貰ってからは一段と威力が上がった気がする。普段付けていて分かるのは前より自然に動かせるようになったと言うことだ。
「強くなりたい、私も」
「タフィリィはダメだ」
「分かっている。だからアリシアと、能力協会に助けを求めたんだ」
「そうだね。私も強くなりたいよ」
能力協会からの連絡を待ち、数日が経ってしまった。
◇◇◇
能力協会とはカナキリを保護する組織だ。だが、たまに他の種族も保護することがあった。コノカのアリシア・バルマティッジはもちろん、ヴァラヴォルフもだ。
そんな能力協会からやってきたのは、たった一人の青年だった。
青海がこっそり迎え入れたらしく、黄泉は彼らのいる砂金の隠れ家に向かっていた。
たった一人で何が出来る、何故アリシアじゃないんだと心の中で悪態をつく。
黄泉は絶望を感じていた。
黄泉が隠れ家の扉を開けば、ホテル並みのソファとテーブルが並ぶ一角に青海とその人物がいた。
青年は後ろ姿だけで、オーラを放っているように見える。
まるでこの世にいないかのようだ。
空色の髪の青年。
背丈は青海より少し高いくらいでそこまで変わらない。
容姿は……
青年と青海が立ち上がる。
青年が、ゆっくりと黄泉に振り返った。
なんて美貌だ。
なんて、美しいのだろう。
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