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リョウゲ
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「何であんなところに赤鳥姉さんが……!」
「応援を呼んでくる」
「待て。逃げたとバレたら今度こそ殺される」
「じゃあどうやって」
考えようとしたその時だった。屋敷の上空を黒い竜が通っていく。
「真……黒……」
「数人に見られた。不味いな」
刺客どころではなかった。
聖唖が任務に向かった矢先、滝壺の奥に囚われていた赤鳥と真黒が暴れ出したのだ。
「今日はアリシアが来る日だ。何とか持ち堪えれば……」
細長い竜のようになった真黒が、屋敷を次々に落としていく。
黄泉は屋敷へ駆け出そうとする。
「まずは真黒をどうにかするぞ!」
「大丈夫だ」
青海がそれを呼び止める。
真黒が次に狙う屋敷には、白馬の立ち姿があった。
「今日は白王を交えての会議だ」
「明日は私か」
「話すことは決めてる?」
「ああ。この現状を変える為にタフィリィをやめさせると言うつもりだ」
「そうか。私もそうしようかな」
「パクるな。と言いたいところだが、志は同じだ。言っても構わない」
「そうするよ」
どちらにせよ今話すことではないと理解していた、だが、ゆっくりと赤鳥が降りてくるのを見て、他に何を話そうかと混乱して近くにあった話にありついたのだ。
赤鳥は白い糸を出し、森の中に虫の子供を産む。虫達は屋敷へと向かっていった。
白馬が吊り橋を渡り、真黒の上に飛び乗る。攻撃される真黒は吊り橋を次々と壊し、滝へと突っ込んでいった。白馬は吊り橋にぶら下がっている。数人の屋敷の者達が助けに行った。しかし。
屋敷の上に引っ張り上げられた白馬は、怒気の混じった叫び声をあげて刀を振り回す。屋敷の者達は皆、落ち着けと言って後退する。
黄泉と青海は赤鳥の糸と交戦していた。抜刀した刀を使い、背中合わせで互いを守った。
「どうやってあそこまで行く?」
青海は上を見上げて言った。
「白馬兄さんは目を潰して落とした。私にも落とせる」
黄泉は自分の右腕を見せて笑う、青海が驚いたような顔をしてから、いい案だと言いたげに微笑んだ。
黄泉は上空に右腕を掲げ、一番左のボタンを押した。四角い4つの穴が空いた突起物が出てきて、腕が肘から外れ、空に向かって打ち上がる。
外れた腕は自動的に赤鳥を攻撃している間に目へ突撃した。
赤鳥が悲鳴をあげて落ちてくる。
ゆっくりと、糸を弛ませ、青海と黄泉の上に迫った。
「走れえええええ!!」
「考えてなかったのかい!?」
「すまん!!」
塊自体の大きさが軽自動車ぐらいだったので、何とか避けられたが糸まみれになった。
黄泉の千里眼の術は未来まではまだ見れないがすぐ傍の糸の中の卵から虫が生まれる姿が見えた。
「切れ青海、少しでも生まれさせるな!」
「それより黄泉、君は全身機械じゃない気を付けて」
「分かってる!」
シギュルージュも万能ではない。その気配を感じれば虫達は逃げていくが、ここまで多いとどうなるか分からない。
「生まれた虫達はどこへ向かっている」
「宿主の元へ帰ってるんだ……」
「宿主?」
「発生源の中の発生源。赤鳥姉さんにもっとも虫を与えていたのは……」
生まれた虫達は青海と黄泉を無視して別方向へと飛んでいく。
屋敷の方角に。
大暴れしている、白馬の元に。
「白馬兄さんが……発生源……」
白馬は取り押さえられ、一番古い屋敷の中にある罰を与えられる部屋に閉じ込められた。
黄泉は聖唖に渡された通信機に連絡の音色が鳴っていることに気が付いた。
黄泉はすぐに通信に出る。
「もしもし」
『着いたわ。空に白い化け物が見えたけどそっちに行けばいいの?』
「あ、ああ。頼む」
『電話に出ないから。もう向かってたの。――――もう着いたわ」
通話口と同じ声がして、声のする方へ振り返る。
青海と黄泉は二人して呆然と立っていた。それが出来るのはアリシアの力のおかげだ。
タフィリィは熱に弱い、アリシアの炎が触手を燃やしていく。
「あなたが國哦伐黄泉ね」
「ああ。私だ」
「それでいいわ。敬語じゃなくてもいいわよ」
「来てくれてありがとう。アリシア。早速で悪いが、あれは私たちの姉なんだ。助けたい」
「無理よ」
「は?」
アリシアが冷たく言い放ち、青海と黄泉は呆ける。
「む、無理とはどう言うことだ!」
絞り出すように必死にそう問いかければ、アリシアは眉を下げて言った。
「知らないのね。私は炎――と言うより熱を操るの。炎が身体をすり抜けるように感じるのは熱が蓄積されるからよ。体温に問題がないように調節して一瞬で熱を加えるわ。もし炎が発生してもそれを操ってすぐに熱に変えるの。虫は熱が嫌いだから、身体の外に出ようとするわ。そして身体の外を私の操った高温の炎が纏っている。虫は燃え尽きるわ。でも虫と融合してしまった身体は元には戻せないの。身体ごと燃やすしかないわ」
「融合?」
「熱を通して分かったわ。融合した箇所は少ないけど、もっと少なくても無理なものは無理なの。殺すしかないのよ」
「そ、そんな……待ってくれ、赤鳥姉さんを殺すなんて……」
「どうにか出来ないんですか?」
青海が尋ねると、アリシアは頭を振る。
「家族を失いたくないのは分かるわ。でも、同じような目にあった人達は皆、死んでいるのかも生きているのかも分からない彼等を救う為に。虫か家族か分からない者を瀕死にして燃やしたわ。大切に思っていた家族を傷付けさせないためにね」
「…………」
黄泉はその話を聞いて、自分は何も出来ないのかと思った。だが、今でも右腕が飲み込まれていく感触を感じる。黄泉は思った。だから答える。
「ならば、私に殺させてくれ。赤鳥姉さんを、せめて私の手で」
「黄泉!」
「応援を呼んでくる」
「待て。逃げたとバレたら今度こそ殺される」
「じゃあどうやって」
考えようとしたその時だった。屋敷の上空を黒い竜が通っていく。
「真……黒……」
「数人に見られた。不味いな」
刺客どころではなかった。
聖唖が任務に向かった矢先、滝壺の奥に囚われていた赤鳥と真黒が暴れ出したのだ。
「今日はアリシアが来る日だ。何とか持ち堪えれば……」
細長い竜のようになった真黒が、屋敷を次々に落としていく。
黄泉は屋敷へ駆け出そうとする。
「まずは真黒をどうにかするぞ!」
「大丈夫だ」
青海がそれを呼び止める。
真黒が次に狙う屋敷には、白馬の立ち姿があった。
「今日は白王を交えての会議だ」
「明日は私か」
「話すことは決めてる?」
「ああ。この現状を変える為にタフィリィをやめさせると言うつもりだ」
「そうか。私もそうしようかな」
「パクるな。と言いたいところだが、志は同じだ。言っても構わない」
「そうするよ」
どちらにせよ今話すことではないと理解していた、だが、ゆっくりと赤鳥が降りてくるのを見て、他に何を話そうかと混乱して近くにあった話にありついたのだ。
赤鳥は白い糸を出し、森の中に虫の子供を産む。虫達は屋敷へと向かっていった。
白馬が吊り橋を渡り、真黒の上に飛び乗る。攻撃される真黒は吊り橋を次々と壊し、滝へと突っ込んでいった。白馬は吊り橋にぶら下がっている。数人の屋敷の者達が助けに行った。しかし。
屋敷の上に引っ張り上げられた白馬は、怒気の混じった叫び声をあげて刀を振り回す。屋敷の者達は皆、落ち着けと言って後退する。
黄泉と青海は赤鳥の糸と交戦していた。抜刀した刀を使い、背中合わせで互いを守った。
「どうやってあそこまで行く?」
青海は上を見上げて言った。
「白馬兄さんは目を潰して落とした。私にも落とせる」
黄泉は自分の右腕を見せて笑う、青海が驚いたような顔をしてから、いい案だと言いたげに微笑んだ。
黄泉は上空に右腕を掲げ、一番左のボタンを押した。四角い4つの穴が空いた突起物が出てきて、腕が肘から外れ、空に向かって打ち上がる。
外れた腕は自動的に赤鳥を攻撃している間に目へ突撃した。
赤鳥が悲鳴をあげて落ちてくる。
ゆっくりと、糸を弛ませ、青海と黄泉の上に迫った。
「走れえええええ!!」
「考えてなかったのかい!?」
「すまん!!」
塊自体の大きさが軽自動車ぐらいだったので、何とか避けられたが糸まみれになった。
黄泉の千里眼の術は未来まではまだ見れないがすぐ傍の糸の中の卵から虫が生まれる姿が見えた。
「切れ青海、少しでも生まれさせるな!」
「それより黄泉、君は全身機械じゃない気を付けて」
「分かってる!」
シギュルージュも万能ではない。その気配を感じれば虫達は逃げていくが、ここまで多いとどうなるか分からない。
「生まれた虫達はどこへ向かっている」
「宿主の元へ帰ってるんだ……」
「宿主?」
「発生源の中の発生源。赤鳥姉さんにもっとも虫を与えていたのは……」
生まれた虫達は青海と黄泉を無視して別方向へと飛んでいく。
屋敷の方角に。
大暴れしている、白馬の元に。
「白馬兄さんが……発生源……」
白馬は取り押さえられ、一番古い屋敷の中にある罰を与えられる部屋に閉じ込められた。
黄泉は聖唖に渡された通信機に連絡の音色が鳴っていることに気が付いた。
黄泉はすぐに通信に出る。
「もしもし」
『着いたわ。空に白い化け物が見えたけどそっちに行けばいいの?』
「あ、ああ。頼む」
『電話に出ないから。もう向かってたの。――――もう着いたわ」
通話口と同じ声がして、声のする方へ振り返る。
青海と黄泉は二人して呆然と立っていた。それが出来るのはアリシアの力のおかげだ。
タフィリィは熱に弱い、アリシアの炎が触手を燃やしていく。
「あなたが國哦伐黄泉ね」
「ああ。私だ」
「それでいいわ。敬語じゃなくてもいいわよ」
「来てくれてありがとう。アリシア。早速で悪いが、あれは私たちの姉なんだ。助けたい」
「無理よ」
「は?」
アリシアが冷たく言い放ち、青海と黄泉は呆ける。
「む、無理とはどう言うことだ!」
絞り出すように必死にそう問いかければ、アリシアは眉を下げて言った。
「知らないのね。私は炎――と言うより熱を操るの。炎が身体をすり抜けるように感じるのは熱が蓄積されるからよ。体温に問題がないように調節して一瞬で熱を加えるわ。もし炎が発生してもそれを操ってすぐに熱に変えるの。虫は熱が嫌いだから、身体の外に出ようとするわ。そして身体の外を私の操った高温の炎が纏っている。虫は燃え尽きるわ。でも虫と融合してしまった身体は元には戻せないの。身体ごと燃やすしかないわ」
「融合?」
「熱を通して分かったわ。融合した箇所は少ないけど、もっと少なくても無理なものは無理なの。殺すしかないのよ」
「そ、そんな……待ってくれ、赤鳥姉さんを殺すなんて……」
「どうにか出来ないんですか?」
青海が尋ねると、アリシアは頭を振る。
「家族を失いたくないのは分かるわ。でも、同じような目にあった人達は皆、死んでいるのかも生きているのかも分からない彼等を救う為に。虫か家族か分からない者を瀕死にして燃やしたわ。大切に思っていた家族を傷付けさせないためにね」
「…………」
黄泉はその話を聞いて、自分は何も出来ないのかと思った。だが、今でも右腕が飲み込まれていく感触を感じる。黄泉は思った。だから答える。
「ならば、私に殺させてくれ。赤鳥姉さんを、せめて私の手で」
「黄泉!」
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