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第一章 片思いの相手から、ツキアッテ…そう言われたら、どんな気持がするんだろう…。
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こういう表情を見せた時のリナが一番恐い事を桂は長年の付き合いで知っていた。
その美しい面差しを怒りで歪め、自分を見詰める様はさしずめ般若の面のように鬼気迫って恐ろしい…。
桂は溜息を吐きながら、一応宥める事を試みた。
「なぁ。なんでお前がそんなに怒るんだよ。」
リナは信じられないと言うように桂を見つめてヒステリックな声を上げた。
「かっちゃん。バカにされてるって思わないわけ?そこまで…お人好しなのも考え物だわ。」
イヤ…分かっているけどさ…。
バツが悪く、どう見ても形成不利で桂の言葉の語尾は頼りなく消えていってしまう。
リナは綺麗に手入れされた眉を寄せると、桂を鋭く睨みつける。
「分かってない!絶対かっちゃん分かってない!どうしてそんな事OKしちゃったのよ!信じらんない!」
リナの怒りの声を聞きながら、桂は今日の昼間亮と交わした会話を思い出していた。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「俺と付き合わない?」
まるで、当たり前の事を言うようにその言葉を口にした亮。
一瞬だけその言葉を聞いて胸が喜びでざわめいた。でもその言葉に普通だったら存在するような甘い雰囲気はまるで無くて…。
「どういう事でしょうか?」
戸惑いながら聞いた俺。瞬間、脳裏に彼と彼の恋人の姿が浮かんだ。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
リナは険悪な表情を浮かべたまま続けた。
「ねぇ、彼が言っている事は愛人契約ってことでしょ?ふざけているわよ!」
イヤ…違うよ…。桂は亮との会話を思い出して否定する。
「愛人は愛情があって成立するだろ。彼が言った申し出に愛情は存在しないから…。」
それを聞いてリナが桂の頭をボコっとゲンコで叩いて叫んだ。
「何冷静に解説してんのよ!その方がもっと性質が悪いわよ!」
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
動揺で震えそうになる声を押さえながら、聞き返した。
「貴方には…確か恋人が…いらっしゃるはずじゃ…。」
そうだよ。当たり前と言った表情で答える彼。健志は俺の世界で一番大事で愛しい恋人さ。
うっとりと恋人を思い出しているのだろう…優しい、遠くを見るような瞳で言う。
それじゃ、どうして?と言う問いは彼が続けて言った言葉で遮られた。
「俺…フリーセックスはしない主義なんだ。」
「…はぁ…。」
ますます亮の言っている事が分からない。
誰だって不特定多数のセックスは嫌だろう…。それが俺とどう関係あるんだ???
混乱して目を白黒させた桂を見て、クスクスと笑いながら亮は続けた。
「健志さ、先週から仕事の都合でニューヨークに行ったんだ。あっちで新しい支店を開設するとかで、応援でね。それで10ヶ月ばかり日本には帰ってこないんだ。」
どうして他人の恋人が単身赴任する話しが自分に関わってくる???
桂は混乱したまま、亮を見詰めた。
脳裏にJ's Barでいつも見かけた二人の姿が甦る。幾らかの憧れと羨望を持っていつも見ていた…。
精悍でシャープな面差しの亮…。その彼といつも並んで立っていた恋人の健志。
彼もまた一目を引く魅力的な容姿の男性だった。どこから見てもバランスの取れた、パーフェクトなカップル。
それが亮と健志だった。
「それはお気の毒ですね…。」
なんて答えて良いのか分からず、桂は一応慰めのような相槌を打った。それを聞いて亮がニヤリと笑った。
「だろ!スゴイ気の毒じゃない?俺って。」
なぜか嬉しそうに桂の言葉を利用する亮。
「…はぁ…。」
亮は足をゆっくり組み返ると、桂の顔を魅力に飛んだ微笑を浮かべて見ながら言った。
「俺…恋人がいないのって嫌なんだよ。寂しくってさ。もちろん健志が一番なんだけど…。でも居ない者はしょうがないだろ。俺だって大人だから、傍にいて…なんて我侭言いたくないし。」
「…はぁ…?」
桂はさっきから呆けたような返事しか出来ない自分に歯噛みしながら、それでも同じ返事をしてしまう。
依然彼の言いたい事が分からない…。
俺と彼が付き合うことと、彼のフリーセックス嫌いと、彼の恋人が単身赴任中と、彼が寂しがりやなのと、彼が大人ぶるのと…一体どう関係するのか???
混乱したまま、事態を把握しようと桂は言葉を絞り出した。
「すみません。貴方の恋人が単身赴任中なのと、貴方が寂しがりやなのと、俺と貴方が付き合うことがどう繋がってくるんでしょうか?俺…頭悪いんで…良く理解できないんですが…。」
訳も無く自分を卑下した言い方をしてしまって情けなくなる。
亮はコーヒーを啜ると一呼吸置いて桂を見た。自分の話しを思うように理解してもらえなくて、幾らか焦れたようにふぅっと息を軽く吐出す。
「だからね。俺の本命の恋人は10ヶ月留守なわけ。俺は恋人無しじゃ我慢出来ない性質なんだ。でも、フリーセックスは嫌。だから健志が帰国するまで、あんたと付き合いたいんだ。」
「………」
亮がニッコリ微笑んで続ける。
「俺ってスゴイ誠実だろう。あんた一人と付き合う。その間、もちろん浮気は絶対しないからさ。」
「………」
「で…どうかな…?」
その美しい面差しを怒りで歪め、自分を見詰める様はさしずめ般若の面のように鬼気迫って恐ろしい…。
桂は溜息を吐きながら、一応宥める事を試みた。
「なぁ。なんでお前がそんなに怒るんだよ。」
リナは信じられないと言うように桂を見つめてヒステリックな声を上げた。
「かっちゃん。バカにされてるって思わないわけ?そこまで…お人好しなのも考え物だわ。」
イヤ…分かっているけどさ…。
バツが悪く、どう見ても形成不利で桂の言葉の語尾は頼りなく消えていってしまう。
リナは綺麗に手入れされた眉を寄せると、桂を鋭く睨みつける。
「分かってない!絶対かっちゃん分かってない!どうしてそんな事OKしちゃったのよ!信じらんない!」
リナの怒りの声を聞きながら、桂は今日の昼間亮と交わした会話を思い出していた。
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「俺と付き合わない?」
まるで、当たり前の事を言うようにその言葉を口にした亮。
一瞬だけその言葉を聞いて胸が喜びでざわめいた。でもその言葉に普通だったら存在するような甘い雰囲気はまるで無くて…。
「どういう事でしょうか?」
戸惑いながら聞いた俺。瞬間、脳裏に彼と彼の恋人の姿が浮かんだ。
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リナは険悪な表情を浮かべたまま続けた。
「ねぇ、彼が言っている事は愛人契約ってことでしょ?ふざけているわよ!」
イヤ…違うよ…。桂は亮との会話を思い出して否定する。
「愛人は愛情があって成立するだろ。彼が言った申し出に愛情は存在しないから…。」
それを聞いてリナが桂の頭をボコっとゲンコで叩いて叫んだ。
「何冷静に解説してんのよ!その方がもっと性質が悪いわよ!」
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動揺で震えそうになる声を押さえながら、聞き返した。
「貴方には…確か恋人が…いらっしゃるはずじゃ…。」
そうだよ。当たり前と言った表情で答える彼。健志は俺の世界で一番大事で愛しい恋人さ。
うっとりと恋人を思い出しているのだろう…優しい、遠くを見るような瞳で言う。
それじゃ、どうして?と言う問いは彼が続けて言った言葉で遮られた。
「俺…フリーセックスはしない主義なんだ。」
「…はぁ…。」
ますます亮の言っている事が分からない。
誰だって不特定多数のセックスは嫌だろう…。それが俺とどう関係あるんだ???
混乱して目を白黒させた桂を見て、クスクスと笑いながら亮は続けた。
「健志さ、先週から仕事の都合でニューヨークに行ったんだ。あっちで新しい支店を開設するとかで、応援でね。それで10ヶ月ばかり日本には帰ってこないんだ。」
どうして他人の恋人が単身赴任する話しが自分に関わってくる???
桂は混乱したまま、亮を見詰めた。
脳裏にJ's Barでいつも見かけた二人の姿が甦る。幾らかの憧れと羨望を持っていつも見ていた…。
精悍でシャープな面差しの亮…。その彼といつも並んで立っていた恋人の健志。
彼もまた一目を引く魅力的な容姿の男性だった。どこから見てもバランスの取れた、パーフェクトなカップル。
それが亮と健志だった。
「それはお気の毒ですね…。」
なんて答えて良いのか分からず、桂は一応慰めのような相槌を打った。それを聞いて亮がニヤリと笑った。
「だろ!スゴイ気の毒じゃない?俺って。」
なぜか嬉しそうに桂の言葉を利用する亮。
「…はぁ…。」
亮は足をゆっくり組み返ると、桂の顔を魅力に飛んだ微笑を浮かべて見ながら言った。
「俺…恋人がいないのって嫌なんだよ。寂しくってさ。もちろん健志が一番なんだけど…。でも居ない者はしょうがないだろ。俺だって大人だから、傍にいて…なんて我侭言いたくないし。」
「…はぁ…?」
桂はさっきから呆けたような返事しか出来ない自分に歯噛みしながら、それでも同じ返事をしてしまう。
依然彼の言いたい事が分からない…。
俺と彼が付き合うことと、彼のフリーセックス嫌いと、彼の恋人が単身赴任中と、彼が寂しがりやなのと、彼が大人ぶるのと…一体どう関係するのか???
混乱したまま、事態を把握しようと桂は言葉を絞り出した。
「すみません。貴方の恋人が単身赴任中なのと、貴方が寂しがりやなのと、俺と貴方が付き合うことがどう繋がってくるんでしょうか?俺…頭悪いんで…良く理解できないんですが…。」
訳も無く自分を卑下した言い方をしてしまって情けなくなる。
亮はコーヒーを啜ると一呼吸置いて桂を見た。自分の話しを思うように理解してもらえなくて、幾らか焦れたようにふぅっと息を軽く吐出す。
「だからね。俺の本命の恋人は10ヶ月留守なわけ。俺は恋人無しじゃ我慢出来ない性質なんだ。でも、フリーセックスは嫌。だから健志が帰国するまで、あんたと付き合いたいんだ。」
「………」
亮がニッコリ微笑んで続ける。
「俺ってスゴイ誠実だろう。あんた一人と付き合う。その間、もちろん浮気は絶対しないからさ。」
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