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いい音出すじゃないか。よく出来た玩具だ、いや楽器かな?
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川名の言葉通りの霧野は好奇の目に晒されながら廊下を犬同然の姿で歩き回らされた。
組員らの霧野を見る目には、同情に満ちたものもも少なからずあったにはあったが、多くが嗜虐や悦びに満ちていた。
閉塞感のある男社会の中で、出世の次に面白いことといえば、目立った功績を上げていたものが陥落した時である。そして、この世界に相応しくない見目麗しい彼の痛めつけられた容姿が余計に彼らの視線を集めるのだった。
組長である川名が歩けば皆頭を下げ、普段なら間を置いて上がる頭がそのままあがらず床を這いまわる物に一心に注がれた。
彼の歩いた後はすぐにわかった。
床を這う身体から時折体液が流れ落ちて床を穢すのだった。それは汗であったり、涎であったり、涙であったり、注ぎ込まれた精液が身体をつたって流れ落ちるものであったり、彼自身の精液のほとばしる前兆とも言える透明な甘い汁であった。
廊下を汚した印を辿れば彼の元にたどり着いた。
「おはようございます。」
霧野の知った声であったが、頭を上げる気には到底ならない。そもそも応接間を出てから一度たりとも頭をあげていなかった。何も見たくなかった。
しかし、霧野は自身の体を弄び踏みしだき舐めさせてきた男達については、足元を一目見るだけで誰なのか判断出来るほど、全てを記憶してしまっていた。優れた彼の洞察力と適応力とは、仕事のなかでよく生かされたが、身を落としてからは彼を苦しめるばかりであった。もはや理性など捨て白痴になりたいほどだった。
「随分でかい犬ですね、ノアはどうしたんです。」
竜胆と久瀬が霧野のすぐ横に立って川名と話していた。竜胆は川名ではなく霧野を見下ろしながら話をしていたが誰もそれを咎めない。久瀬は竜胆が未だ嬉々とした様子を隠そうともせず霧野を見下ろしていることに半ば呆れていた。
昨日あれだけ出しておいて、よくまだ欲情できる。最早誰に何をされているのかもわかっていない霧野の身体をいつまでも容赦なくもて遊び、他の興が乗った者と二輪挿しまでする始末だ。昨日の記憶がよみがえってくる。
「そんな使い方をしてたら壊れるぞ。」
と、応接間のソファに座り様子を見ていた久瀬が竜胆に声をかけたが暫く無視され、挙句の果てにげらげらと笑われた。
「何言ってんだよ、こんなにビクビクさせてんだぜ、気持ちいいに決まってんじゃん。お前は気持ちよくさせてやる自信が無いんだろ?それとも何か?俺と一緒にすると己の小ささに絶望しちゃうか?お前の奥さんのマンコが小さくてよかったな!」
「てめぇ……もう1回言ってみろ。」
竜胆が身体を起こしながらこちらをゆっくりと見すえ目を細めた。
「いいぜ、何回でも言ってやるよ。みくちゃんはマンコが小さくてよかったな。ハルちゃんはでかいからな、お前じゃ満足出来ないって、な?」
霧野と目が合ったが答える前に三島に突っ込まれてしまい回答が聞こえない。
「……わかった、いいぞ、やってやろう。後からどっちが良かった本人に聞こう。」
「ん~、そうこないとね!」
そうして、竜胆にのせられてしまい、開ききった霧野の臀の上にペニスをならべて比較した。中に入れる前に押し当てただけで、ペニスの下で熱い肉が震えていた。
「ハルちゃん、わかるかな?どっちのがいいかな?」
竜胆がわざとらしく自身の濡れ散々擦ったせいで赤黒いずる剥けたそれを霧野の臀に擦り付けるようにして押し付けていた。
霧野が咳き込みながら「りんどうの、……」と言っていた、否、言わされていた。
「ほら見ろ」
「てめぇが散々虐めるからそう言わざる得ないんだろうが、な、そうだろ、霧野。俺のがいいと言えばしばらく俺がお前を優しく占有してやるから、この品のない馬鹿にされるよりマシだな。」
「ふざけんなよ、なんだその言い草、ハルちゃん、素直に答えていいよ。」
「……、……。」
霧野の歪んだ視界の隅で、乱れた服を直しながら間宮がここには似つかない優しい天使のような顔をして微笑んでいた。「おれのがいちばんいいよね」と口を動かしているのが分かった。更に他の奴らは全員粗チンだねとジェスチャーする。その様子全てがここに似つかわしくなかった。
回らない頭が「うん…、まみやのがいちばんでかいよ……」と霧野に口走らせた。更には言い方が半ば笑いを含んでいたため、その場に他の男達の反感を買ったのは言うまでもなかった。
「ありがと、今の情けない馬鹿みたいな腑抜けた霧野さんなら俺、好きかも。でも、俺は仕事あるからもう帰るね。また今度沢山遊んでやるよ。」
間宮は聞こえてるのかいないのか分からない霧野の前で軽く手を振り、応接間を出ていった。
久瀬と竜胆も反感を買った男達のご多分にもれず、結局2人して同時に霧野を散々に責め立てる結果となった。再び同じ質問が繰り返された。
「くぜのほうがよかった……」と霧野が言えば竜胆がタバコを吸いながら「ふーん……」と機嫌悪そうに笑って床に這う霧野の腰の当たりを踏みつけながら見下ろした。
「本当にわかってんの?じゃあ今から順番にハメてやるから、どっちがどっちのか全問正解しなよ。できるよね?できなかったら嘘ついたってことなるんだよ、わかってるか?おい、目隠し貸せよ。」
そうして目隠しをされた状態の霧野の正答率はそれでも6割程度は当たっていた。
「ん、味わうように締めてるようだな、普段から全部クイズ形式にしてやろうか。これはどっちだ?」
「……、ん、っ……」
「喘いでないで答えな。」
「……りんどう、」
「残念だったな、これ久瀬のだ。やっぱりわかってねぇんじゃねぇか!」
そうしてハズれると、強く臀を叩かれ、気持ちよさに時に射精していた。
「叩かれたくてわざとか?どこまでも嘘つきで計算高い男だな!一生治らないか?こうやって慰みものにされるのもお前の計算の内か?淫乱め!おい、久瀬そのまましてろよ、俺もそこにいれるから。」
「またか?いい加減に……」
久瀬は言いかけたが、2本同時に挿されて苦悶に唸る霧野を見ているのはいい気分であり、竜胆と不思議な共同作業は不快感より不思議な快楽が勝った。女を複数同時に囲い尚且つ全員を満足させているだけあって、竜胆の精力は凄まじいものがあり、ハーレムを形成するライオンの雄のような独特な魅力を携えていた。
「見ろよ久瀬、昨日あれだけされたのにまだ俺たちに敵意があるぜ。こうでなきゃな。」
久瀬は昨日のことを思い出しながら、自分が竜胆の方をじっと見ていたことに気がついて、再び、川名の足元に犬のように這っている男を見下ろした。
妻に抱くのと違った歪んだ性欲が再び体の奥底から湧き上がってくるのを感じた。妻と並べて彼を愉しむのは悪くない試みだろう。久瀬は革靴の底を床に擦り付け、滾り始めた気持ちを抑えた。竜胆のようにあからさまに感情を剥き出しにしては恥だ。
「ノアは先に外に出してる。」
「ノアと違ってはしゃいでもこないし竜胆に噛みつきもしない、おとなしい犬ですね。」
ノアは久瀬にはほとんど興味関心を抱かず無視、竜胆には敵意をむき出しにしていた。ノアは凶暴で扱いづらい犬だというのが殆どの組員の認識だった。
川名の前で竜胆と久瀬は長々と話を始めた。別に今すぐ話す必要も無いことや仕事の話を。3人で共謀して霧野を辱める時間を長めているのである。霧野もそれが分からないほど馬鹿ではなく、苛立ちと羞恥の中、黙って早く終わるのを待っていた。
その内掌と膝が痛み始めた。周囲からは竜胆と久瀬と川名以外の様々な声が聞こえていた。
「なんだありゃ、組長の新しい玩具か。相変わらず陰惨な趣味だなぁ。気分が悪くなる。」
「……ん?澤野さんじゃないですか?あれ。」
「澤野?最近見ないと思ったら、一体何をしてんだアイツは。あそこまでして組長に気に入られたいのか?」
「あははは、いくらあの人でもそんなことせんでしょう。知らないですけど、何かぶっ殺されておかしくないような真似したらしいって聞いてますよ。命乞いでもあんなことしたくないですね、俺なら潔く殺されますよ。」
霧野は遠くから複数の視線を感じるたびに強く目を閉じて、現実逃避に何か別のことを考えようとしていた。
ここは閉じた世界だ。この世界から一歩でも出れば、ここであったことは全て無かったことになる。
霧野の中で現実感の無いまとまりのない思考が浮かんでは消えていった。同時に妖しく欲情した身体が欲望を求めて、性的懲罰の記憶が、現実逃避の隙間に差し込まれるようにフラッシュバックした。
「少し遊んでもらえよ。」
リードが上に引かれて首が締まる。川名はそれ以上何も言わないが「上半身を起こして身体をよく見せてみろ」と言う意味だとすぐにわかる。彼が何を欲しているのか、彼がどんなことをしたら悦ぶのか。今のようにされる以前からよく知っていた。いや、1人研究していた。
過程を気にしたり、回りくどいことをしたりせずとも、彼が期待している成果、結果だけを差し出すだけで、簡単に出世ができ、懐に入りこめた。
逡巡の後、身体を起こして身体を晒した。膝立ちで律義に頭の後ろで腕まで組みまでして、よく見えるようにした。応接間での「練習」通りにするのが正しいのだろう。
身体を起こして初めて近くに立っているのは竜胆と久瀬だけでないことがわかった。他に5、6人の男達がにやにやとした暗い目つきで霧野を見降ろしているのだった。
苛立ちと同じくらい恐怖が湧きたった。以前であれば無かった恐怖だった。それは、自分が性的に食われる立場であるという恐怖だった。
「なんだ?こんな状況で勃起までさせて、ド変態じゃないか。」
久瀬がせせら笑いながら言った。久瀬の視線の先で、霧野の欲望の塊が怒張し、ひきしまった伸びやかな四肢が時折ビクビクと震えていた。霧野の端正な顔つきは曇り、悔しさに歯を食いしばり目を細めていた。穢された身体も良いが、その表情が何より久瀬を欲情させるのだった。
霧野があり得ない、収まれと思う程妖しい欲情が収まらず、視線が集まるほど耐え切れず、それは反り返って先端を濡らして淫乱を主張した。同時に身体の奥底が疼いてたまらない。
久瀬はジャケットの内ポケットから今朝ここに来る前に閉まっておいた革紐を取り出した。手頃な紐が無いかと家の中を探していたところ、靴箱の奥に息子の革靴の予備の紐がかなり残っていることを発見した。
それを懐に収めている時ちょうど学校に行く支度を終えた息子が玄関にでてきた。彼は特に気にとめた様子もなく「父さんはいいよな、登校時間ってやつが無いんだから……」とあくび混じりに言った。続けて俺もヤクザになろうかななどと言ったら叱るところだが、彼は「じゃ、いってきます」とやる気なさげに言って出ていく。
「今の言い方」
妻の美玖が奥で笑っていた。
「あなたに似てきたね。」
「うるさいな……俺に似られても困るんだよ。」
彼がまだ小学生になるかどうかという頃はもっと子供らしい覇気があり「警察官になりたい」と言って久瀬と美玖とを困らせた。
「何に使うの、それ。」
美玖が悪戯っぽい微笑み方をして尋ねてきた。久瀬が用途を素直に伝えると美玖は表情をそのまま「どっちの方が子どもかわからない。写真撮れたら見せてね。」と言った。瞳が暗く嗜虐に満ちていた。
霧野の目の前で無表情に立っていた久瀬が屈みこんだかと思うと、懐から革ひもを取り出して陰茎の先を貫くピアスに結びつけた。
「こうやって使うためにつけてもらったんだろ。昨日見た時から、ずっとこうしてやりたかった。」
軽く引っ張られるだけで痛みと怪しい感覚に、苦悶の表情と裏腹にか細く鳴く様な声が出ていた。誰かが愉快そうに笑っていた。紐の先を持った久瀬が立ち上がって霧野を暗い目で微笑みながら見降ろしていた。
「気持ちよさそうな声上げて。お前としたことが、恥ずかしくないのか?あ?」
久瀬の声色は霧野を脅しているかのようだったが、どこか愉悦が隠しきれていなかった。次に思い切り紐を引かれると、先端を指ではじかれる感覚の何十倍の感覚が霧野の亀頭を中心に痛みとともに弾けて、抑えようとしても声が止まらない。たまにくる鋭い、貫かれるような刺激に、閉じた瞼の下で目が上ずって喉元から聞いた事のないような浅ましい声が出ていった。
「なんか言ってみろよ。」
久瀬が手を弛めてそう言うと霧野の代わりに川名が答えた。
「まだ勝手に口を開く許可を与えてないんだ。そうだな喘ぐ以外『気持ちいいです』くらいなら素直に言っていいぞ。」
「………。」
複数の視線の中で、霧野は歯を食いしばって痛みと苦悶、信じ難い快楽に震えていた。
「喋らないですねぇ、素直に言ったらやめてやってもいいのに。お前らもやってみろよ、面白いから。」
久瀬から竜胆や別の組員の手に紐が練り渡り、それぞれの組員が思い思いの加減で霧野のペニスの先端をいじめ、罵倒した。それでも萎えるどころかさらに青筋立てて雄々しくいきり立ち、息遣いに熱がこもってくるのが男達の嗜虐心を刺激し、霧野の羞恥心を刺激した。思い通りにならない身体だった。
「へぇ~、いい音出すじゃないか。よく出来た玩具だ、いや楽器かな?どっちでもいい。お前のこれは人に遊ばれるためだけにあるんだからな。それ以外の存在価値はない。」
久瀬は霧野のような者には可愛げのある首輪ではなく、この生殖器から伸びた馬鹿げた紐で引き回した方が余程好みで、彼を辱められると思った。
組長が彼をどこまでどうする気か知らないが、もしペニスを欠損させてしまうとこの遊びは出来なくなる。久瀬は時折川名の表情を伺った。苦痛とも快楽とも区別がつかない霧野の反応をそれなりに楽しんでいるようだった。去勢は究極の遊びだが1回しかできない。だから、まだ遊ぶ価値があると見なされているうちは問題ないだろう。
久瀬は、肩で息をし視線をこちらにあげなくなった霧野から視線を川名の方に戻した。
「はい、じゃあ最後は組長が。外してやってもいいし好きにしてください。」
川名は紐を受け取って引くことはせず、紐を軽く張った状態で先端を首輪のリングにつないだ。勃起したペニスの先端から首輪まで一本の細い橋が架かり、身体の動きに連動してペニスを引くのだった。
「良いものもらってよかったな~。お前は散歩中だと言うのにいつまでも発情してとまらないからな。」
川名が機嫌良さげにそう言って霧野の頭を撫でる様子はとても人間が人間に対してやる様子には見えなかった。
組員らの霧野を見る目には、同情に満ちたものもも少なからずあったにはあったが、多くが嗜虐や悦びに満ちていた。
閉塞感のある男社会の中で、出世の次に面白いことといえば、目立った功績を上げていたものが陥落した時である。そして、この世界に相応しくない見目麗しい彼の痛めつけられた容姿が余計に彼らの視線を集めるのだった。
組長である川名が歩けば皆頭を下げ、普段なら間を置いて上がる頭がそのままあがらず床を這いまわる物に一心に注がれた。
彼の歩いた後はすぐにわかった。
床を這う身体から時折体液が流れ落ちて床を穢すのだった。それは汗であったり、涎であったり、涙であったり、注ぎ込まれた精液が身体をつたって流れ落ちるものであったり、彼自身の精液のほとばしる前兆とも言える透明な甘い汁であった。
廊下を汚した印を辿れば彼の元にたどり着いた。
「おはようございます。」
霧野の知った声であったが、頭を上げる気には到底ならない。そもそも応接間を出てから一度たりとも頭をあげていなかった。何も見たくなかった。
しかし、霧野は自身の体を弄び踏みしだき舐めさせてきた男達については、足元を一目見るだけで誰なのか判断出来るほど、全てを記憶してしまっていた。優れた彼の洞察力と適応力とは、仕事のなかでよく生かされたが、身を落としてからは彼を苦しめるばかりであった。もはや理性など捨て白痴になりたいほどだった。
「随分でかい犬ですね、ノアはどうしたんです。」
竜胆と久瀬が霧野のすぐ横に立って川名と話していた。竜胆は川名ではなく霧野を見下ろしながら話をしていたが誰もそれを咎めない。久瀬は竜胆が未だ嬉々とした様子を隠そうともせず霧野を見下ろしていることに半ば呆れていた。
昨日あれだけ出しておいて、よくまだ欲情できる。最早誰に何をされているのかもわかっていない霧野の身体をいつまでも容赦なくもて遊び、他の興が乗った者と二輪挿しまでする始末だ。昨日の記憶がよみがえってくる。
「そんな使い方をしてたら壊れるぞ。」
と、応接間のソファに座り様子を見ていた久瀬が竜胆に声をかけたが暫く無視され、挙句の果てにげらげらと笑われた。
「何言ってんだよ、こんなにビクビクさせてんだぜ、気持ちいいに決まってんじゃん。お前は気持ちよくさせてやる自信が無いんだろ?それとも何か?俺と一緒にすると己の小ささに絶望しちゃうか?お前の奥さんのマンコが小さくてよかったな!」
「てめぇ……もう1回言ってみろ。」
竜胆が身体を起こしながらこちらをゆっくりと見すえ目を細めた。
「いいぜ、何回でも言ってやるよ。みくちゃんはマンコが小さくてよかったな。ハルちゃんはでかいからな、お前じゃ満足出来ないって、な?」
霧野と目が合ったが答える前に三島に突っ込まれてしまい回答が聞こえない。
「……わかった、いいぞ、やってやろう。後からどっちが良かった本人に聞こう。」
「ん~、そうこないとね!」
そうして、竜胆にのせられてしまい、開ききった霧野の臀の上にペニスをならべて比較した。中に入れる前に押し当てただけで、ペニスの下で熱い肉が震えていた。
「ハルちゃん、わかるかな?どっちのがいいかな?」
竜胆がわざとらしく自身の濡れ散々擦ったせいで赤黒いずる剥けたそれを霧野の臀に擦り付けるようにして押し付けていた。
霧野が咳き込みながら「りんどうの、……」と言っていた、否、言わされていた。
「ほら見ろ」
「てめぇが散々虐めるからそう言わざる得ないんだろうが、な、そうだろ、霧野。俺のがいいと言えばしばらく俺がお前を優しく占有してやるから、この品のない馬鹿にされるよりマシだな。」
「ふざけんなよ、なんだその言い草、ハルちゃん、素直に答えていいよ。」
「……、……。」
霧野の歪んだ視界の隅で、乱れた服を直しながら間宮がここには似つかない優しい天使のような顔をして微笑んでいた。「おれのがいちばんいいよね」と口を動かしているのが分かった。更に他の奴らは全員粗チンだねとジェスチャーする。その様子全てがここに似つかわしくなかった。
回らない頭が「うん…、まみやのがいちばんでかいよ……」と霧野に口走らせた。更には言い方が半ば笑いを含んでいたため、その場に他の男達の反感を買ったのは言うまでもなかった。
「ありがと、今の情けない馬鹿みたいな腑抜けた霧野さんなら俺、好きかも。でも、俺は仕事あるからもう帰るね。また今度沢山遊んでやるよ。」
間宮は聞こえてるのかいないのか分からない霧野の前で軽く手を振り、応接間を出ていった。
久瀬と竜胆も反感を買った男達のご多分にもれず、結局2人して同時に霧野を散々に責め立てる結果となった。再び同じ質問が繰り返された。
「くぜのほうがよかった……」と霧野が言えば竜胆がタバコを吸いながら「ふーん……」と機嫌悪そうに笑って床に這う霧野の腰の当たりを踏みつけながら見下ろした。
「本当にわかってんの?じゃあ今から順番にハメてやるから、どっちがどっちのか全問正解しなよ。できるよね?できなかったら嘘ついたってことなるんだよ、わかってるか?おい、目隠し貸せよ。」
そうして目隠しをされた状態の霧野の正答率はそれでも6割程度は当たっていた。
「ん、味わうように締めてるようだな、普段から全部クイズ形式にしてやろうか。これはどっちだ?」
「……、ん、っ……」
「喘いでないで答えな。」
「……りんどう、」
「残念だったな、これ久瀬のだ。やっぱりわかってねぇんじゃねぇか!」
そうしてハズれると、強く臀を叩かれ、気持ちよさに時に射精していた。
「叩かれたくてわざとか?どこまでも嘘つきで計算高い男だな!一生治らないか?こうやって慰みものにされるのもお前の計算の内か?淫乱め!おい、久瀬そのまましてろよ、俺もそこにいれるから。」
「またか?いい加減に……」
久瀬は言いかけたが、2本同時に挿されて苦悶に唸る霧野を見ているのはいい気分であり、竜胆と不思議な共同作業は不快感より不思議な快楽が勝った。女を複数同時に囲い尚且つ全員を満足させているだけあって、竜胆の精力は凄まじいものがあり、ハーレムを形成するライオンの雄のような独特な魅力を携えていた。
「見ろよ久瀬、昨日あれだけされたのにまだ俺たちに敵意があるぜ。こうでなきゃな。」
久瀬は昨日のことを思い出しながら、自分が竜胆の方をじっと見ていたことに気がついて、再び、川名の足元に犬のように這っている男を見下ろした。
妻に抱くのと違った歪んだ性欲が再び体の奥底から湧き上がってくるのを感じた。妻と並べて彼を愉しむのは悪くない試みだろう。久瀬は革靴の底を床に擦り付け、滾り始めた気持ちを抑えた。竜胆のようにあからさまに感情を剥き出しにしては恥だ。
「ノアは先に外に出してる。」
「ノアと違ってはしゃいでもこないし竜胆に噛みつきもしない、おとなしい犬ですね。」
ノアは久瀬にはほとんど興味関心を抱かず無視、竜胆には敵意をむき出しにしていた。ノアは凶暴で扱いづらい犬だというのが殆どの組員の認識だった。
川名の前で竜胆と久瀬は長々と話を始めた。別に今すぐ話す必要も無いことや仕事の話を。3人で共謀して霧野を辱める時間を長めているのである。霧野もそれが分からないほど馬鹿ではなく、苛立ちと羞恥の中、黙って早く終わるのを待っていた。
その内掌と膝が痛み始めた。周囲からは竜胆と久瀬と川名以外の様々な声が聞こえていた。
「なんだありゃ、組長の新しい玩具か。相変わらず陰惨な趣味だなぁ。気分が悪くなる。」
「……ん?澤野さんじゃないですか?あれ。」
「澤野?最近見ないと思ったら、一体何をしてんだアイツは。あそこまでして組長に気に入られたいのか?」
「あははは、いくらあの人でもそんなことせんでしょう。知らないですけど、何かぶっ殺されておかしくないような真似したらしいって聞いてますよ。命乞いでもあんなことしたくないですね、俺なら潔く殺されますよ。」
霧野は遠くから複数の視線を感じるたびに強く目を閉じて、現実逃避に何か別のことを考えようとしていた。
ここは閉じた世界だ。この世界から一歩でも出れば、ここであったことは全て無かったことになる。
霧野の中で現実感の無いまとまりのない思考が浮かんでは消えていった。同時に妖しく欲情した身体が欲望を求めて、性的懲罰の記憶が、現実逃避の隙間に差し込まれるようにフラッシュバックした。
「少し遊んでもらえよ。」
リードが上に引かれて首が締まる。川名はそれ以上何も言わないが「上半身を起こして身体をよく見せてみろ」と言う意味だとすぐにわかる。彼が何を欲しているのか、彼がどんなことをしたら悦ぶのか。今のようにされる以前からよく知っていた。いや、1人研究していた。
過程を気にしたり、回りくどいことをしたりせずとも、彼が期待している成果、結果だけを差し出すだけで、簡単に出世ができ、懐に入りこめた。
逡巡の後、身体を起こして身体を晒した。膝立ちで律義に頭の後ろで腕まで組みまでして、よく見えるようにした。応接間での「練習」通りにするのが正しいのだろう。
身体を起こして初めて近くに立っているのは竜胆と久瀬だけでないことがわかった。他に5、6人の男達がにやにやとした暗い目つきで霧野を見降ろしているのだった。
苛立ちと同じくらい恐怖が湧きたった。以前であれば無かった恐怖だった。それは、自分が性的に食われる立場であるという恐怖だった。
「なんだ?こんな状況で勃起までさせて、ド変態じゃないか。」
久瀬がせせら笑いながら言った。久瀬の視線の先で、霧野の欲望の塊が怒張し、ひきしまった伸びやかな四肢が時折ビクビクと震えていた。霧野の端正な顔つきは曇り、悔しさに歯を食いしばり目を細めていた。穢された身体も良いが、その表情が何より久瀬を欲情させるのだった。
霧野があり得ない、収まれと思う程妖しい欲情が収まらず、視線が集まるほど耐え切れず、それは反り返って先端を濡らして淫乱を主張した。同時に身体の奥底が疼いてたまらない。
久瀬はジャケットの内ポケットから今朝ここに来る前に閉まっておいた革紐を取り出した。手頃な紐が無いかと家の中を探していたところ、靴箱の奥に息子の革靴の予備の紐がかなり残っていることを発見した。
それを懐に収めている時ちょうど学校に行く支度を終えた息子が玄関にでてきた。彼は特に気にとめた様子もなく「父さんはいいよな、登校時間ってやつが無いんだから……」とあくび混じりに言った。続けて俺もヤクザになろうかななどと言ったら叱るところだが、彼は「じゃ、いってきます」とやる気なさげに言って出ていく。
「今の言い方」
妻の美玖が奥で笑っていた。
「あなたに似てきたね。」
「うるさいな……俺に似られても困るんだよ。」
彼がまだ小学生になるかどうかという頃はもっと子供らしい覇気があり「警察官になりたい」と言って久瀬と美玖とを困らせた。
「何に使うの、それ。」
美玖が悪戯っぽい微笑み方をして尋ねてきた。久瀬が用途を素直に伝えると美玖は表情をそのまま「どっちの方が子どもかわからない。写真撮れたら見せてね。」と言った。瞳が暗く嗜虐に満ちていた。
霧野の目の前で無表情に立っていた久瀬が屈みこんだかと思うと、懐から革ひもを取り出して陰茎の先を貫くピアスに結びつけた。
「こうやって使うためにつけてもらったんだろ。昨日見た時から、ずっとこうしてやりたかった。」
軽く引っ張られるだけで痛みと怪しい感覚に、苦悶の表情と裏腹にか細く鳴く様な声が出ていた。誰かが愉快そうに笑っていた。紐の先を持った久瀬が立ち上がって霧野を暗い目で微笑みながら見降ろしていた。
「気持ちよさそうな声上げて。お前としたことが、恥ずかしくないのか?あ?」
久瀬の声色は霧野を脅しているかのようだったが、どこか愉悦が隠しきれていなかった。次に思い切り紐を引かれると、先端を指ではじかれる感覚の何十倍の感覚が霧野の亀頭を中心に痛みとともに弾けて、抑えようとしても声が止まらない。たまにくる鋭い、貫かれるような刺激に、閉じた瞼の下で目が上ずって喉元から聞いた事のないような浅ましい声が出ていった。
「なんか言ってみろよ。」
久瀬が手を弛めてそう言うと霧野の代わりに川名が答えた。
「まだ勝手に口を開く許可を与えてないんだ。そうだな喘ぐ以外『気持ちいいです』くらいなら素直に言っていいぞ。」
「………。」
複数の視線の中で、霧野は歯を食いしばって痛みと苦悶、信じ難い快楽に震えていた。
「喋らないですねぇ、素直に言ったらやめてやってもいいのに。お前らもやってみろよ、面白いから。」
久瀬から竜胆や別の組員の手に紐が練り渡り、それぞれの組員が思い思いの加減で霧野のペニスの先端をいじめ、罵倒した。それでも萎えるどころかさらに青筋立てて雄々しくいきり立ち、息遣いに熱がこもってくるのが男達の嗜虐心を刺激し、霧野の羞恥心を刺激した。思い通りにならない身体だった。
「へぇ~、いい音出すじゃないか。よく出来た玩具だ、いや楽器かな?どっちでもいい。お前のこれは人に遊ばれるためだけにあるんだからな。それ以外の存在価値はない。」
久瀬は霧野のような者には可愛げのある首輪ではなく、この生殖器から伸びた馬鹿げた紐で引き回した方が余程好みで、彼を辱められると思った。
組長が彼をどこまでどうする気か知らないが、もしペニスを欠損させてしまうとこの遊びは出来なくなる。久瀬は時折川名の表情を伺った。苦痛とも快楽とも区別がつかない霧野の反応をそれなりに楽しんでいるようだった。去勢は究極の遊びだが1回しかできない。だから、まだ遊ぶ価値があると見なされているうちは問題ないだろう。
久瀬は、肩で息をし視線をこちらにあげなくなった霧野から視線を川名の方に戻した。
「はい、じゃあ最後は組長が。外してやってもいいし好きにしてください。」
川名は紐を受け取って引くことはせず、紐を軽く張った状態で先端を首輪のリングにつないだ。勃起したペニスの先端から首輪まで一本の細い橋が架かり、身体の動きに連動してペニスを引くのだった。
「良いものもらってよかったな~。お前は散歩中だと言うのにいつまでも発情してとまらないからな。」
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山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
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