【完結】離婚されたけど、新しい旦那さま方に捕まりました~巨人族の夫たちに溺愛されてます

浅葱

文字の大きさ
7 / 136

6.巨人族の夫の一人が迎えにきた

しおりを挟む
 巨人族の家へ僕が嫁ぐことについて、兄は最後まで難色を示したが僕の気持ちは変わらなかった。
 不思議なことに、隣家からの情報は全く僕の耳には届かなかった。どうやら離婚したのは外聞が悪いという理由で、別の領地へ移動したらしい。きっとそちらでならば乳母も雇いやすいのだろう。
 トラッシュと、赤子のことを思い出すだけで涙が浮かぶ。僕は情緒不安定になっているみたいだった。
 赤子の為を思えば残った方がよかったかもしれない。でも初乳以外は誰があげてもいいはずだし、トラッシュとアローが愛し合う姿なんて見たくなかった。
 アローは僕を何度も好きだと言っていたけどそんなことは信じられない。もし乳母として隣家に残ったりしたら、あんなのは嘘に決まっているじゃないかと嘲笑われて、地獄に突き落とされたに違いなかった。
 だから僕は約束通り赤子を置いてきた。とてもひどい親だと思う。

「なのに、なんで今でも好きなんだろう……」

 部屋に戻って、僕は泣いた。
 隣国である巨人族の貴族の元へ嫁いで、呆れられてしまった方がいい。きっと彼らは人族の小ささがいいのだろう。小さい人族を嬲って遊びたいのかもしれない。
 それならそれでいい。そんな相手であれば、僕も気にしないで死ぬことができるから。
 そう思ったのだけど、隣国から迎えに来てくれた未来の夫だというリン家の長男は僕の目の前でかがみ、うやうやしく僕の手を取った。
 その動きはとても洗練されていたし、彼はとてもかっこよくて僕は内心呆気に取られた。
 美しい黒髪は元々は長いのだろうか。結って頭の上で布の中にしまっているようである。目も黒く、見つめられるとまるで吸い込まれてしまいそうだ。

「初めまして、巨人族、林家が長男の林偉明リンウェイミンと申します。失礼ですが、リューイ様でいらっしゃいますか?」

 水晶で僕の姿は確認しているだろうが、こんなに小さいとは思っていなかったのだろう。
 僕は苦笑した。

「はい、僕がリューイです」

 彼はとても嬉しそうに笑んだ。

「失礼ですが、成人していらっしゃいますよね?」
「もう29歳ですよ?」
「これはなんというご無礼を」

 僕は平凡顔な上に童顔だから、彼からしたら子どもみたいに見えたのかもしれなかった。

「こんなにかわいいだなんて……今宵は一晩こちらに泊めていただきますが、明日には私共の国へ移動します。よろしいですか?」
「……はい」

 前半の言葉は小さい声だったけど、しっかり僕の耳に届いてしまった。頬が熱くなる。こんな平凡顔な僕がかわいく見えるなんて、夫となる人は目が悪いのかもしれないなんて思った。
 今夜は別々の部屋に寝ることになったが、明日はこれを着てほしいと衣裳も持ち込まれた。
 巨人族の結婚もお互いの合意があればいいというものらしく、婚姻契約の書類も持ってきてもらったのでそれを確認して僕は彼らと結婚することになった。

「兄弟ですので、顔つきなどはみな似ていると思います。好みも一緒なので、弟たちもリューイ様に会えばとても喜ぶでしょう」
「そ、そうだったらいいのですが……」

 思っていたのと違ったら気の毒だしと思ってしまう。

「あ、あと……様は付けないでください。その……僕が偉明様方の、妻になるわけですし……」

 自分で妻と言って照れた。本当にこんな素敵な方の妻になるだなんて、実感がわかない。
 偉明と並んだら、本当に大人と子どものようだった。偉明の腰より少し高い位置にかろうじて僕の頭のてっぺんが届くという身長差である。しかも衣裳は僕たちが着ているものとは全然違い、布が多そうなものだった。綺麗な刺繍を施されたその豪奢な衣裳を着た姿は圧巻であった。
 それと同じような衣装を僕も着ることになるらしい。
 偉明はやはり髪が長いみたいだ。基本的には切らず、その髪は頭の上の方でまとめて布に包むのが習わしらしい。
 僕の髪は肩にもつかない程度だけど、結婚したら伸ばしてほしいと言われた。それぐらいはかまわなかった。

「明日からは自分の足で歩かないようにしてください。私共の国では、妻は夫に抱かれて移動するものですから」
「そ、そうなのですか……わかりました」

 抱き上げられて移動するなんて、そんなことを前夫であるトラッシュにはされたことがなかったから戸惑う。(アローには抱き上げられたりしたが、それはカウントしたくなかった)

「抱き上げてもよろしいですか?」
「は、はい……」

 立ったまま膝裏を掬い上げられて、丁寧に抱き上げられた。視界がいきなり高くなってびっくりする。それと同時に、偉明の顔も近くなって頬が熱くなった。
 本当に、素敵な顔をしているのだ。黒髪黒目で、逞しくて端正で……トラッシュとは全く違ったタイプの美形である。
 僕はこんなに気が多かっただろうかと、情けなくなった。

「リューイ」

 至近距離で名を呼ばれて、胸が疼いた。

「よかった」
「?」

 ほっとしたように言われて、なんのことだろうと思う。

「リューイにこの顔を気に入ってもらえてよかったです」
「え……あ……」

 確かに偉明の顔はかっこよくてとても素敵だ。でも見惚れていたなんて知られるのは恥ずかしかった。

「お互いのことを知らないのですから、まずは顔からでもいいではありませんか。リューイが嫁いできてから、私たちのことを知ってくれればいいのです。お嫌ですか?」
「い、いいえ、いいえ……」
「リューイは真面目な方のようだ。……早く貴方を連れ帰りたい……」

 そう、少し上擦った声で言われて背筋がぞくぞくした。声までいいなんて、反則だと思う。
 できるだけ早くトラッシュのことは忘れたい。
 偉明には悪いと思ったけど、早く連れて帰ってほしいと切実に思った。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...