未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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8.5章【未熟な悪魔と甘い時間です(カワイ視点)】

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 翌日は、ヒトの休日。だからヒトは、しっかりバッチリ爆睡中。

 いつもと同じ時間に起きたボクは、ゼロタローと一緒に冷蔵庫の中を見て、ある重大なことに気付いた。


「材料、余っちゃったね」
[そうですね]


 チーズケーキ生活、突然の終止符。だけどホントに突然だったから、明日も続くと思って買っておいた材料たち。

 冷蔵庫の中でチョコンと鎮座するそれらを見て、ボクたちは一旦、冷蔵庫の扉を閉めた。


「どうしよう。なにか別の料理に使おうかな」
[そうしましょう。残っている材料と本日のスーパーでの特売品を合わせて、今晩の料理に適したレシピを検索しますね]

「でもボク、今日もケーキ食べたい。昨日が最後だって思ってなかったから、まだケーキとお別れできてない」
[作りましょうか、おいしいケーキ]


 えっ、いいのかな。でもゼロタロー、ダメなときはちゃんと『ダメ』って言ってくれるし……。……いい、みたい。

 だけど、今日でちゃんと最後にしなくちゃ。次に作るのは、またいつか。ボクはすっかり慣れてきたチーズケーキ作りをゼロタローに教わりながら、テキパキと作業を始める。

 そして迎えた、ヒトの起床時間。つまり、お昼過ぎ。


「──材料が余っちゃったから作ったけど、これでホントに最後。ウーロン茶とバナナのチーズケーキだよ」
「──混ぜたのっ?」


 寝癖ピョンピョンなヒトが、大きな反応を返した。


「でも、気になる組み合わせだね! それに、おいしそうな匂い!」
「一緒に、ウーロン茶のミルクティーも飲んでほしい」
「おぉ~っ、おっしゃれ~っ!」


 いっぱい眠った休みのヒトは、いつもより寝起きが元気。少し変わったデザインの寝間着に身を包んだまま、ヒトはイスに座ってくれた。


「あのね、ヒト。ケーキ、毎日作っちゃってホントにごめんね。ヒトの健康、全然気遣えてなかった」
「いやいや! 俺だって毎日嬉しく食べてたんだから、そんなにかしこまらないで!」

「でもボク、配慮が足りなかった。ヒトが喜んでくれて、嬉しくて、張り切っちゃった」
「カワイ……」


 フォークを渡してから、ボクはヒトを見る。ヒトもボクを見ていてくれたから、すぐにボクたちは目が合った。

 だからボクは、思わず目を逸らして……。


「──あと、ボクは甘い物が好き。だから『毎日甘い物が食べられる』って下心もあったり、なかったり……」
「──そんなちゃっかりさんなところも好きだよ」


 ヒトに、懺悔した。ポソポソッて、小さな声で。

 ……ちなみに、その後。チーズケーキを食べながら、ボクはピコンと閃いていた。


「ケーキはケーキでも、野菜を入れたらセーフ? 例えば……ニンジンのケーキ、とか」
「なるほど、キャロットケーキかぁ~。うぅ~ん……」


 ヒトはケーキを食べながら、腕を組む。そして、小首を傾げながら答えてくれた。


「──セウトかな」
[──どっちなのですか]


 どうにか、健康的に甘い物を食べる方法は無いのかなって。ボクは真剣に、そんなことを考えてしまった。

 ……反省は、モチロンしてる。してるけど、甘い物に罪は無いから。人間界はおいしいものが沢山だから、仕方がないよね。チーズケーキの出来に満足しながら、ボクは心の中でウンウンと自分を肯定した。




8.5章【未熟な悪魔と甘い時間です】 了




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