未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
164 / 212
6章【未熟な社畜は悩みました】

26

しおりを挟む



 カワイと物理的に距離を取ってはいるものの、だからと言って露骨且つ全面的に避けているわけではない。

 会話は今まで通り交わすし、初めと変わらない好意的な態度だって向けている。スキンシップ以外は、今まで通りの俺たちだ。……それは、今日も変わらない。


「ただいまぁ~っ」


 残業をぶちかました俺は、今日の帰宅も少々遅め。玄関扉を開き、靴を脱いだ。
 だが、変わらないはずの日常だというのに、違和感がある。


「……カワイ? お~い、カワイ~?」


 いつもならすぐに出迎えをしてくれるカワイが、姿を現さないのだ。そう気付くと同時に、俺は……。


「……えっ。カワイっ?」


 血の気が引いていくような、恐ろしい気持ちを抱いてしまった。

 まさか、まさか、と。俺は最悪の想定ばかりを頭の中で描き、思わずその場で立ち尽くしてしまいそうになる。

 俺がカワイと距離を取ったばかりに、まさかカワイは──。


[──カワイ君でしたら、寝室で寝ていますよ]
「──早く言ってよもうっ!」


 俺は『ガンッ!』と音が鳴るほど素早く、その場に膝をついた。

 なっ、なんだっ。てっきり、出て行ってしまったのかとばかり……。俺は何度も深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。

 それにしても、珍しい。カワイがこんな時間に寝ているなんて、初めてだ。俺は驚きつつも、ゆっくりと寝室へ向かう。

 念のために言っておくが、違うぞ。これはカワイの寝顔を盗み見することが目的なのではなく、普段から部屋着を寝室に片付けているからであって、断じて違うのだ。

 誰に対する弁明か定かではない中、それでも俺はこの弁明を体現する。下心が一切無いと証明するために、俺は寝室へ入ってからベッドに目を向けず、まるで避けるかのように背を向けた。

 ……が、ここでひとつの問題が発生。


「んッ? あれっ、ゼロ太郎? 俺の部屋着が一着もないんだけど?」
[ベッドの上をご覧ください]
「え? ベッドの上?」


 なんでベッドの上? もしかして、部屋が乾燥していたから湿気を作るために洗濯したとか? いやでも、それにしたってどうしてベッドの上に?

 早く、真実を確かめよう。俺は申し訳ない気持ちを抱きつつ、そろりとベッドへ目を向けた。

 そこで、俺が目にした光景は……。


「ん、ぅ……」


 カワイがいる。当然、眠りながら。
 ベッドの上で、カワイは瞳を閉じて……。俺はそこで、衝撃的な事実を発見した。


「こっ、これは……ッ!」


 ──カワイが【俺の部屋着をこんもりと抱き抱えながら】眠っているだとッ!

 ズギャーンッ! 大いなる衝撃だ。その場でよろめいてしまうほど、強烈な光景じゃないか。カワイの寝顔が可愛すぎるというのは当然ながら、それ以上に俺は戸惑ってしまう。なぜなら、なぜなら……!

 ──俺の部屋着を抱いて眠っているなんて、いっそ『暴力的だ』と言っても過言ではない可愛さじゃないか! 抱き締めたくなってしまうッ、強く強くッ!

 俺は己に襲い掛かる強烈で猛烈な煩悩を必死に抑え込むように、その場で蹲る。それと同時に、俺はすぐにハッと気付いた。『この空間に長居してはいけない』と。

 このままでは、折角カワイの安全を保障するためにスキンシップを堪えてきた意味がなくなる。俺はカワイから抜き取れそうな部屋着をササッと手にし、急いで寝室から立ち去った。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

それはダメだよ秋斗くん![完]

中頭かなり
BL
年下×年上。表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/116042007様からお借りしました。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...