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6章【未熟な社畜は悩みました】
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しおりを挟むそんなこんなでカワイと物理的な距離を取る生活を始めて、一週間程が経過した。
この、数日。俺は普段以上に仕事へと没頭し、休日は休日で、いつもの休日出勤よりも長い時間就労していた。
それだけ仕事三昧な日々を過ごしていれば、さすがに同棲中のカワイ以外にだって俺の異常性は伝わってしまうだろう。例えば……。
「あのぉ、センパイ? 最近、なんか多忙を極め過ぎじゃないッスか?」
隣のデスクで働く月君とか、ね。
大量のファイルと資料を持って自分のデスクに戻ってきた俺を見るや否や、月君は『ドン引きッス』と言いたげな顔で俺を見上げながら、そう言ってきた。
とぼけるつもりはないが、そんな感じの響きで「そうかな?」と相槌を打った後、俺は自分のデスクに持っていた物をドサッと置く。
俺が椅子に座るのを目で追った後、月君は相変わらずドン引き顔を継続しながら訊ねた。
「その仕事たち、どこからかき集めてきたんスか?」
「あちこちの課から、かな?」
俺は数日前から、手が空くとすぐに他の職員に声を掛けて『手伝えることはないかな』といった内容の問いを掛けていたのだが……。不思議なことに、最近では俺が声を掛けずとも仕事が集まるようになったのだ。
いやぁ、摩訶不思議。幸か不幸か、最近の俺は仕事をこなせばこなすほど仕事が舞い込むようになったのだ。……一種のホラーとも言えるだろう。
だが、今の俺にとってはありがたい。こうして仕事に没頭していたら、カワイに対しての恋心を少しでも奥へ奥へと隠せるのだから。
「最近のセンパイを見ていると、心配になるんスよ」
「月君……」
しかし、月君は俺の悩みを知らない。心優しい月君から見ると、仕事まみれの俺が心配なのだろう。
「なんでうちの会社って、深刻な人員不足ってわけでもないのに仕事がてんこ盛りなんスかね。心配ッスわ、マジで」
あっ、ちょっと違う。月君が抱く【心配】の方向性が、俺の想定とちょっと違うぞ。……いや、まぁ、うん。それもそれで、正しい心配だけども。
だが、よく考えると確かにそうかもしれない。仕事三昧でサービス残業と休日出勤上等な精神で日々就労しているのでどうとも思わなかったけど、もしかしてこの会社はちょっぴりおかしいのかな?
なんにせよ、今の俺としてはありがたいけど。持ってきたばかりの仕事たちを整頓しながら「どうしてだろうねぇ~」と相槌を打ち、俺はパソコンと向き合った。
すぐさま仕事に戻った俺を、月君はどう思ったのだろう。隣から視線を感じていると再度、月君は口を開いた。
「最近のセンパイって、なんか……アレ、ッスね」
えっ。もしかして、さっきの心配はヤッパリ俺に対してのものだったのかな。それを、照れ隠し的なそういうなにかで誤魔化したの?
どうやら、やはり月君の目には俺が変に見えて──。
「──仕事が恋人、みたいな。ちょっと、だいぶヤバいッス」
「──そういう意味の【変】に見えちゃったかぁ~」
月君って、ちょいちょい俺を【ヤベェ奴認定】しているような……。まぁ、えっと、うん。それもそれで、いいんだけどさ。
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