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6章【未熟な社畜は悩みました】
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しおりを挟むカワイと似た、銀髪。そして、カワイと同じく宝石みたいに綺麗な瞳。
しかしカワイとは違い、彼は長髪だ。腰下辺りまで伸ばした髪をゆる~く一本に縛り、それを肩から前に垂らしている。
そしてカワイと違い、彼の瞳はエメラルドグリーンだ。カワイはサファイアって感じだから、言ってしまえば【宝石】という共通点しかない。
草原君は、カワイより背が高い。だけどカワイと似て細身だから、どこか華奢と言うか……可憐さ? のようなものがある。一挙一動に品のようなものがあるのだ。
それにしても、これは悪魔特有の雰囲気なのだろうか。草原君が纏うオーラは、カワイと似てどこか不思議な感じがする。巧く説明できないけど、キャラ属性っぽく言うのなら【不思議ちゃん】って感じだ。
と、誰に言うでもなく草原君の容姿やら雰囲気やらを脳内でまとめていると……。
[なぜ二人共、お互いのことをベースに他者の説明をするのでしょうか……]
微かにポンと、ゼロ太郎の声が聞こえた。これはとても珍しい。あのゼロ太郎が、周りに誰かいるのにスマホからぼやいたのだから。それほどまでに、どうしても訴えたい内容には思えなかったというか、そもそもなんのことかもよく分からなかったけど。
……おっと。これでは草原君との会話が続かなくなってしまう。今さらながらにそう気付き、俺は即座に当たり障りのない話題を投げる。
「ちなみに、体調はすこぶるいい感じだよ。魔力云々~ってのは、正直俺はイマイチよく分からないんだけどさ」
「そうでございますか。体調がよろしいのなら、それに越したことはございませんよ」
ふぅ~む。もしも仮に、俺が草原君に名前を付けるとしたら……。おそらく、俺は【キレイ】と付けていただろう。なぜなら、草原君は美人さんだからだ。
ちなみに、少し余談。彼の名前は、彼が自分で付けたものだ。そして、その名前の由来はと言うと……。
『──人間界に降り立ち、最初に目にしたものでございます』
ということらしい。なかなかユニークな由来だろう。俺は好きだ、その感性が。
はてさて、またもや脱線。俺は最初に投げられた言葉に対する返事を伝えることにした。
「えーっとね……実は俺、三月から悪魔の男の子と同棲してるんだよ。それで、その子とゼロ太郎が嬉しいことを言ってくれてさっ」
「なるほど。上機嫌の理由はそこでございましたか」
納得の後、草原君はほんのりと瞳を細める。
う~ん? もしかして、悪魔って表情の変化が乏しい種族なのかな? 今思うと、カワイも草原君も基本的に無表情だからなかなか感情が読み取れないや。
となれば、直球勝負。草原君が瞳を細めた理由が皆目見当もつかないので、直接訊ねる。
「えぇっと、草原君? 俺、なにか変なこと言っちゃったかな?」
「いえ。ただ、感慨深く思ってしまったのでございます」
どういう意味だろう。……と。おそらく、俺以外の相手なら思っただろう。
だけど、俺には草原君のその答えだけで理解できた。草原君が瞳を細めて俺を見た、その理由が。
そう。なにを隠そう、草原君は──。
「──あの時、追着様にあのマンションを勧めたのは間違いではなかったのでございますね、と。少々、誇らしい気持ちになったのでございます」
俺に、ゼロ太郎がいるマンションを勧めてくれた張本人なのだから。
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