未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
151 / 212
6章【未熟な社畜は悩みました】

13

しおりを挟む



 カワイと似た、銀髪。そして、カワイと同じく宝石みたいに綺麗な瞳。

 しかしカワイとは違い、彼は長髪だ。腰下辺りまで伸ばした髪をゆる~く一本に縛り、それを肩から前に垂らしている。

 そしてカワイと違い、彼の瞳はエメラルドグリーンだ。カワイはサファイアって感じだから、言ってしまえば【宝石】という共通点しかない。

 草原君は、カワイより背が高い。だけどカワイと似て細身だから、どこか華奢と言うか……可憐さ? のようなものがある。一挙一動に品のようなものがあるのだ。

 それにしても、これは悪魔特有の雰囲気なのだろうか。草原君が纏うオーラは、カワイと似てどこか不思議な感じがする。巧く説明できないけど、キャラ属性っぽく言うのなら【不思議ちゃん】って感じだ。

 と、誰に言うでもなく草原君の容姿やら雰囲気やらを脳内でまとめていると……。


[なぜ二人共、お互いのことをベースに他者の説明をするのでしょうか……]


 微かにポンと、ゼロ太郎の声が聞こえた。これはとても珍しい。あのゼロ太郎が、周りに誰かいるのにスマホからぼやいたのだから。それほどまでに、どうしても訴えたい内容には思えなかったというか、そもそもなんのことかもよく分からなかったけど。

 ……おっと。これでは草原君との会話が続かなくなってしまう。今さらながらにそう気付き、俺は即座に当たり障りのない話題を投げる。


「ちなみに、体調はすこぶるいい感じだよ。魔力云々~ってのは、正直俺はイマイチよく分からないんだけどさ」
「そうでございますか。体調がよろしいのなら、それに越したことはございませんよ」


 ふぅ~む。もしも仮に、俺が草原君に名前を付けるとしたら……。おそらく、俺は【キレイ】と付けていただろう。なぜなら、草原君は美人さんだからだ。

 ちなみに、少し余談。彼の名前は、彼が自分で付けたものだ。そして、その名前の由来はと言うと……。


『──人間界に降り立ち、最初に目にしたものでございます』


 ということらしい。なかなかユニークな由来だろう。俺は好きだ、その感性が。
 はてさて、またもや脱線。俺は最初に投げられた言葉に対する返事を伝えることにした。


「えーっとね……実は俺、三月から悪魔の男の子と同棲してるんだよ。それで、その子とゼロ太郎が嬉しいことを言ってくれてさっ」
「なるほど。上機嫌の理由はそこでございましたか」


 納得の後、草原君はほんのりと瞳を細める。

 う~ん? もしかして、悪魔って表情の変化が乏しい種族なのかな? 今思うと、カワイも草原君も基本的に無表情だからなかなか感情が読み取れないや。

 となれば、直球勝負。草原君が瞳を細めた理由が皆目見当もつかないので、直接訊ねる。


「えぇっと、草原君? 俺、なにか変なこと言っちゃったかな?」
「いえ。ただ、感慨深く思ってしまったのでございます」


 どういう意味だろう。……と。おそらく、俺以外の相手なら思っただろう。
 だけど、俺には草原君のその答えだけで理解できた。草原君が瞳を細めて俺を見た、その理由が。

 そう。なにを隠そう、草原君は──。


「──あの時、追着様にあのマンションを勧めたのは間違いではなかったのでございますね、と。少々、誇らしい気持ちになったのでございます」


 俺に、ゼロ太郎がいるマンションを勧めてくれた張本人なのだから。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

それはダメだよ秋斗くん![完]

中頭かなり
BL
年下×年上。表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/116042007様からお借りしました。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...