未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
150 / 212
6章【未熟な社畜は悩みました】

12

しおりを挟む



 気付けば【駄々こね】から目的がすり替わっている気もするが、俺は伝えずにいられなかった。


「もっとさ、こうさ? 希望って言うか明るめって言うか……とにかく! 誰も不幸にならない方向の提案をしてよ!」

「分かった、考える」
[尽力いたします]


 俺も俺でどうかと思うけど、二人も二人でメチャメチャ真剣に取り組んでくれるのなんなの? こんなどうしようもないオーダーに対して、優しすぎてつらい。二人共、大好きだ。

 俺の希望を聴いた後、二人は再度、数秒の思考。ポク、ポク、ポク。チーン、だ。
 と言うわけで、テイクツー。


「仕事から帰ってきたヒトを、ボクがギュ~ッてするのと」
[主様の好物のレシピを私が検索し、それをカワイ君に作っていただくのと]

「[──好きな方をどうぞ]」
「──両方でお願いしますッ!」


 やる気を出す方向で進めたかぁ~っ! 有能な悪魔と人工知能めっ! 大好きだ~っ!

 すっかりやる気に満ち溢れた俺は、玄関へと向かう。靴を履き、そこから一度振り返って、俺は二人に向かって敬礼をした。

 カワイが俺に敬礼を返し、ゼロ太郎は敬礼しているように見える顔文字をポコンと宙に表示。俺たち三人はまさに、息ピッタリだった。

 さて、二人にあんなに素敵なことを言われたんだ。今日の俺はいつもと違い、自らの意思で玄関扉を開いた。


 * * *


 上機嫌で出勤し、仕事を開始して数時間。気付けば、昼休憩の時間になっていた。

 就業時間中のみ眼鏡をかけている俺は、休憩時間と言うことで眼鏡を外す。そのまま体を伸ばし、脱力をする。

 毎度のことだが、こう見えて俺は職場に情けない心は持ち込まない。いくら『仕事に行きたくない!』と毎朝駄々をこねているとしても、出勤してしまえば切り替えをする。

 以上の点から、今日も俺は仕事に熱中。昼休憩を知らせる時計の電子音が鳴るまで昼になったと気付かないほど、デスクワークに集中していたようだ。

 ……それにしても、今日は月君がお休みだからなんとなく物足りない。いつも隣で切磋琢磨し合っている相手が不在というのは、なんだか寂しさを感じてしまう。

 でも、今日は帰ったらカワイとゼロ太郎が俺にご褒美をくれるからな。思わず、俺はニマニマと口角を上げてしまう。

 なんてことを考えつつ、意味もなく隣のデスクに目を向けていると……。


「──上機嫌そうでございますね」


 背後から、俺宛てと思われる声が聞こえた。
 この声は……。すぐに俺は、声が聞こえた方向を振り返った。

 そこに立っているのは、整った顔立ちの青年だ。そしてその青年は、俺と同じようにスーツを着ている。つまり、同業者。

 しかも……。


「おはようございます、追着様。必要な魔力はきちんと補充できてございましょうか」


 社内で唯一、社長と人事担当者以外で俺が【悪魔と人間の混血】だと知っている相手。
 そして、月君の同期でもある男の子。


「あぁ、草原君。お疲れ様っ」


 小声で送られた挨拶に、俺は笑顔と普段の声量を返す。

 そう。彼こそが、この会社で働く【悪魔の青年】──三日月草原君だ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...