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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟む捲られたエプロンを下げさせつつ、俺はカッと上を睨みつける。
「ちょっとゼロ太郎! カワイになんてこと教えてるのさ!」
[冤罪です。通報しますよ]
「それこそ冤罪じゃないかな!」
駄目だ、勝てない。話題を変えるという意味も込めて、俺はカワイの疑問に答えることとした。
「えっと、なんだっけ。ズボンの長さ、だっけ? もしかしてカワイ、ズボンが短くて寒い?」
エプロンから覗く膝小僧に癒されつつ、俺は今まで失念していたことを訊ねる。
対するカワイの返事は、サッパリしていた。
「ううん、寒くない。悪魔は脆弱な人間と違って、この程度の温度じゃ体調は左右されない。真冬に裸でも平気だよ」
「そっかそっか。だけど、服は着てね。俺、どうにかなっちゃうから」
「よく分からないけど、ヒトがそう言うなら」
頷くカワイを見つめつつ、俺はカワイの手をギュッと握る。
「でも、ごめんね。今まで、暑さとか寒さについて考えてあげられなくて」
「ヒト……」
んー、っと? ちょっぴり、カワイの頬が赤くなったような気がするぞ。なぜだろう?
カワイは顔をうっすらと赤らめつつ、尻尾をブンブンと左右に振りながら、首もフルフルと左右に振った。
「い、いいの。大丈夫。ちょっと、気になっただけだから」
「本当に? 遠慮とかしてない?」
「してない、大丈夫。ホントだよ」
キュッと俺の手を握り返して、カワイは赤い顔を上げて俺を見つめてくれる。その顔は、嘘を吐いているようではなさそうだ。
だけど、念のため確認しないとな。俺はカワイをジッと見つめ返しながら、訊ねる。
「短パン、嫌い? 短いズボン、嫌になっちゃった?」
「そっ、そんなことない。嫌いじゃないよ、いいの。ヒトが喜んでくれるなら、服はなんでも嬉しい」
「良かった。ありがとう、カワイ」
「……っ」
あれっ? カワイの頭から湯気が出てきたぞっ? なっ、なぜっ?
……なんて、俺たちが各々別の意味で慌てている中、ただ一人。
[……]
ゼロ太郎だけは、回想していたらしい。
遡ること、数週間前。忘れもしない、悲劇を回避したあの日のこと。
『お願いぃ~っ! デザインも素材もゼロ太郎のセンスに任せるけど、カワイの脚だけは隠さないでぇえ~っ!』
『ニーソックスとかハイソックスとかはいいけど、ズボンはっ、ズボンでカワイの脚を隠されたら俺死んじゃうぅ~っ!』
俺が情けなくゼロ太郎に縋りつき、カワイの生足魅惑な魔ーメイドを死守した日のやり取りだ。
ゼロ太郎は小さな声で、俺たちに聞こえないようにぼやく。
[──カワイ君が常時短パンの理由は『主様がヘンタイなだけです』と、伝えるべきか否か……]
悩むこと、数秒。ゼロ太郎は後者を選択してくれたらしい。
言うまでもなく、当然ながら……。
「ヒト、あの、手。まだ、ギュッてしててもいい?」
「うんっ、勿論っ。いっそのこと、このままずっとず~っと、俺と手を繋いでいよっか?」
「うん、繋いでいたい。ヒトの手、温かくてほっこりする」
「カワイのちょっぴり冷えた手も可愛くて癒しだよ~」
お互いの手を褒め合っていた俺たちは、ゼロ太郎の思考に全く気付いていないのであった。
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