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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟む涙が引いた後、俺は再度、朝食に舌鼓を打った。
「はぁ、おいしい。朝からお味噌汁を啜れる、この贅沢……」
なんだろう、永遠に啜っていたい。お味噌汁って、癒しだよね。
「ヒト、味噌汁が好きなの?」
「そうみたい。でも、もやしもおいしい。白米もおいしいよ」
「好き嫌いがなくて偉いね」
「本当? もっと褒めて」
最初はまん丸の具無しおにぎりから始まったのに、今ではお味噌汁とか副菜? とかも作れるようになっちゃってさ。
本当に、カワイのレベルアップは留まることを知らな──。
「──えっ、待って? 毎朝カワイ手作りのお味噌汁が飲めているってことは、俺たちって新婚さんってこと?」
[さすが主様ですね。違いますよ]
「上げて落とすのやめて?」
カワイはお味噌汁を啜りながら、目をパチパチさせている。あぁ~っ、可愛いなぁ~っ。実は箸が使えなくてフォークとスプーンでご飯を食べてるところも最高に可愛い。
……よく考えると、これはすごいぞ。ゼロ太郎という指南役が居てもなお、カワイの聖天使っぷりは健在なのだから。
まぁ、そんなことを言えばゼロ太郎になにを言われるか分からないからな。今の感想は、心に秘めておこう。
「それにしても、カワイの料理は本当に絶品だなぁ。いつもありがとう、カワイ」
じんわりと、胸が温かくなる。ふふふっ、そうか。やはりこれが、新婚──。
[──何度も言わせていただきますが、違いますよ]
「──いや一人の世界でくらい浸らせて?」
ゼロ太郎と俺のやり取りに小首を傾げるカワイに居た堪れない気持ちになりつつ、とにもかくにも朝食は終了。今日もお互い、完食だ。
両手を合わせて食後の挨拶をした後、カワイはすぐに立ち上がった。
「それじゃあ、ボクは食器を片付ける。ヒトは、出勤準備を済ませて」
「了解っ」
ふむ。カワイは『お嫁さん』と言うよりは、むしろ『お母さん』なのか? いやでも、俺には既にゼロ太郎という母親が……。
……母親、か。
「ヒト? どうかした?」
「えっ。……あっ、ごめん。ちょっと、ちょっとね……えっと」
しまった、カワイが心配している。俺は慌てて、話題を作った。
「えぇっと……あっ、そうそう。それにしてもカワイ、本当にエプロン似合うよね。癒されるから、ずっと見ていたくなっちゃうなぁ~」
ちょっと、わざとらしかったかな。俺の心配をよそに、カワイはコクリと頷いてくれた。
「ありがとう。ヒトを癒せるなら、本望」
「なんて可愛い子なんだ。残すは入籍並びにエプロン姿の撮影会だけじゃないか?」
[どちらもさせませんよ]
くっ、厳しい。【現実】と書いてルビが【ゼロ太郎】は厳しいぞ。
カワイは食器を洗うために、髪をもう一度ポニーテール結びにする。
「ボクは装いに関心も興味もないけど、でもひとつだけ疑問がある」
「んっ? なになにっ?」
髪を結び終えた後、カワイは両手を下げた。
それから──。
「──なんでボク、ずっと短いズボンなの?」
「──うわぁああッ! 破廉恥は駄目だよッ、カワイィ~ッ!」
ぺろっと、カワイはエプロンを捲った。
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