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第六章 ありのままに生きる (龍之介side)
52.彼の失望
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射精が終わると、怜一郎さんは強烈すぎた快感と羞恥のあまりぐったりと脱力した。
僕はゆっくりと彼をベッドへ寝かせてやった。
エリカさんと菜々美さんは、彼のナカからずるりと引き抜いた怒張したままの僕の肉棒を見ていた。
「ふーん、外人の血が入っているとやっぱり大きいのね」
エリカさんはあまり興味なさそうに呟き、菜々美さんは目元を覆った指の間からこっそりと僕のイチモツを観察していた。
同性愛者である彼女たちはただ単にデカい男根を興味本位で見ているだけのようだが、僕は気恥ずかしくてとりあえず下着だけを穿いて徐々に萎えつつあるそこを隠した。
「じゃあ、これを」
オナホから採精器の部分をカポッと外してエリカさんに手渡した。
「はい、確かに」
受け取ると二人は部屋から出て行った。
「素敵な夜を」
と言って彼女たちを見送ると、すぐに僕はベッドへ戻って怜一郎さんの隣へ体を滑り込ませた。
寝てしまったかな、と思ったのに彼は目を開けて僕を見ていた。
「また俺を辱めて……今日のはお前の企てか? それともエリカか?」
彼は恥ずかしそうに頬を赤らめて僕に聞いた。
「エリカさんの提案です」
僕は正直に答えた。
「まったく、あいつは……」
はあ、と大きなため息をついた。
あれだけのことをされたのだから、てっきりまた怒ってしばらく避けられてしまうかと思ったのに、彼は案外冷静だった。
菜々美さんとの間に子供が必要なのは彼が誰よりわかっているのだろう。
しかしこうやって偽りの結婚や出産をしなければ、自分らしく生きることを許されない怜一郎さんの人生って一体何なのだろうと、僕は心の中で彼に同情した。
怜一郎さんもそんな自分の境遇を悲しんでいるようだった。
天井を見ながら彼は僕にこう言った。
「なあ、もしもの話だ。……もしもだが、俺が宝条ホールディングスもこの家も捨てて、一緒にどこか遠くへ逃げてしまおうと言ったら、……龍之介はついてきてくれるか?」
怜一郎さんがそんなことを言うなんて……。
背筋をゾクッとさせながら僕は、
「もちろんです……」
と答えた。それは僕の本心だった。
僕は布団の中で彼の体をきつく抱きしめた。
彼は安堵のため息をついて、
「冗談だ、忘れてくれ」
と笑った。
宝条ホールディングスの跡取りというものを取ったら、俺にはもう何も残らなくなってしまう。そんなこと怖くてできない。怜一郎さんはきっとそう思っているのだろう、とこのとき僕は思った。
けれど、そんなことないです、とかありのままのあなた自身が僕は好きだ、とか言ったところで安っぽい励ましに聞こえてしまいそうで、ただ僕は黙って彼の体を抱きしめていた。
***
怜一郎さんのお父さんがそろそろCEOを辞任しようと思っていると言い出したのは、怜一郎さんが菜々美さんと入籍した二ヶ月後のことだった。
「怜一郎もようやく身を固めたことだし、安心して宝条ホールディングスを任せられる」
義父さんは自分のような年寄りはもう隠居生活をする方がいいだろうと僕ら身内に話した。
生まれたときから宝条ホールディングスの次期CEOとして育てられてきた怜一郎さんは無事に新CEOに就任できることをとても喜ぶだろうと僕は思っていたのに、彼は案外冷静で淡々としていた。
僕としては怜一郎さんをこれまで以上に会社でも家でも誰よりもそばで支えようと覚悟を決めていたのだが、次のCEOになると内々で決定してからというもの、彼は浮かない顔をしていることが以前よりずっと増えたように感じた。
大企業のCEOという重い役割を負担に思っているのだろうか?
まさか。何でもそつなくこなす器用な怜一郎さんが……?
不思議に思っていたある日、会社の本社ビルの中で怜一郎さんが一人で人気のいない書類庫へ入って行くのを見かけた。
僕はこっそりとドアの隙間から書類庫の中を覗いた。
部屋の奥にある本棚の前まで歩いていき、彼はその本棚を横から手で押した。
すると小さな部屋への入口が開いた。本棚は隠し扉だったのだ。
彼はその小部屋の中で何やら資料のようなものを見ていた。
そのとき、彼のポケットに入っていたスマホが鳴って、怜一郎さんは電話に応答しながら小部屋を出て本棚を元に位置に戻し、足早に書類庫を出て行った。
彼は扉にカギをかけて行ったが、資料庫のカギなら僕も持っていた。
カギを開け、僕はさっき怜一郎さんがいた場所まで進んだ。
一見、ただの本棚にしか見えないが、それは横から押すと簡単に動いてさっきの小部屋が現れた。
机の上にはさっき彼が見ていた資料がそのまま残されていた。
それは手書きで管理するタイプの金銭出納帳の束だった。日付はそんなに古いものではない。
「帳簿……?」
社内の書類のほとんどがデジタル化されているというのに、こんな隠し部屋で紙の帳簿で管理しているものがあるなんて……嫌な予感しかしない。僕はドキドキしながら、その帳簿を手に取って開いた。
そこには宝条ホールディングスがある政治家へ送金を行った記録が示されていた。
パラパラとページをめくっただけで1億円以上の金銭を贈っていたことがわかった。
「こ、これって……!?」
政治家への贈賄の証拠じゃないか! 宝条ホールディングスは何かしらの便宜を図ってもらう代わりに政治家へ多額の金を渡してきたというのか。企業から政治家個人への寄付は犯罪だ。まさか宝条ホールディングスがこんな悪事に手を染めているなんて……。
ここのところ怜一郎さんが悩んでいるような様子だった理由を僕はこのとき初めて知った。
『なあ、もしもの話だ。……もしもだが、俺が宝条ホールディングスもこの家も捨てて、一緒にどこか遠くへ逃げてしまおうと言ったら、……龍之介はついてきてくれるか?』
彼が以前呟いた言葉を思い出した。
まじめな怜一郎さんは宝条ホールディングスの裏の顔を知り、失望しているんだ。
僕はゆっくりと彼をベッドへ寝かせてやった。
エリカさんと菜々美さんは、彼のナカからずるりと引き抜いた怒張したままの僕の肉棒を見ていた。
「ふーん、外人の血が入っているとやっぱり大きいのね」
エリカさんはあまり興味なさそうに呟き、菜々美さんは目元を覆った指の間からこっそりと僕のイチモツを観察していた。
同性愛者である彼女たちはただ単にデカい男根を興味本位で見ているだけのようだが、僕は気恥ずかしくてとりあえず下着だけを穿いて徐々に萎えつつあるそこを隠した。
「じゃあ、これを」
オナホから採精器の部分をカポッと外してエリカさんに手渡した。
「はい、確かに」
受け取ると二人は部屋から出て行った。
「素敵な夜を」
と言って彼女たちを見送ると、すぐに僕はベッドへ戻って怜一郎さんの隣へ体を滑り込ませた。
寝てしまったかな、と思ったのに彼は目を開けて僕を見ていた。
「また俺を辱めて……今日のはお前の企てか? それともエリカか?」
彼は恥ずかしそうに頬を赤らめて僕に聞いた。
「エリカさんの提案です」
僕は正直に答えた。
「まったく、あいつは……」
はあ、と大きなため息をついた。
あれだけのことをされたのだから、てっきりまた怒ってしばらく避けられてしまうかと思ったのに、彼は案外冷静だった。
菜々美さんとの間に子供が必要なのは彼が誰よりわかっているのだろう。
しかしこうやって偽りの結婚や出産をしなければ、自分らしく生きることを許されない怜一郎さんの人生って一体何なのだろうと、僕は心の中で彼に同情した。
怜一郎さんもそんな自分の境遇を悲しんでいるようだった。
天井を見ながら彼は僕にこう言った。
「なあ、もしもの話だ。……もしもだが、俺が宝条ホールディングスもこの家も捨てて、一緒にどこか遠くへ逃げてしまおうと言ったら、……龍之介はついてきてくれるか?」
怜一郎さんがそんなことを言うなんて……。
背筋をゾクッとさせながら僕は、
「もちろんです……」
と答えた。それは僕の本心だった。
僕は布団の中で彼の体をきつく抱きしめた。
彼は安堵のため息をついて、
「冗談だ、忘れてくれ」
と笑った。
宝条ホールディングスの跡取りというものを取ったら、俺にはもう何も残らなくなってしまう。そんなこと怖くてできない。怜一郎さんはきっとそう思っているのだろう、とこのとき僕は思った。
けれど、そんなことないです、とかありのままのあなた自身が僕は好きだ、とか言ったところで安っぽい励ましに聞こえてしまいそうで、ただ僕は黙って彼の体を抱きしめていた。
***
怜一郎さんのお父さんがそろそろCEOを辞任しようと思っていると言い出したのは、怜一郎さんが菜々美さんと入籍した二ヶ月後のことだった。
「怜一郎もようやく身を固めたことだし、安心して宝条ホールディングスを任せられる」
義父さんは自分のような年寄りはもう隠居生活をする方がいいだろうと僕ら身内に話した。
生まれたときから宝条ホールディングスの次期CEOとして育てられてきた怜一郎さんは無事に新CEOに就任できることをとても喜ぶだろうと僕は思っていたのに、彼は案外冷静で淡々としていた。
僕としては怜一郎さんをこれまで以上に会社でも家でも誰よりもそばで支えようと覚悟を決めていたのだが、次のCEOになると内々で決定してからというもの、彼は浮かない顔をしていることが以前よりずっと増えたように感じた。
大企業のCEOという重い役割を負担に思っているのだろうか?
まさか。何でもそつなくこなす器用な怜一郎さんが……?
不思議に思っていたある日、会社の本社ビルの中で怜一郎さんが一人で人気のいない書類庫へ入って行くのを見かけた。
僕はこっそりとドアの隙間から書類庫の中を覗いた。
部屋の奥にある本棚の前まで歩いていき、彼はその本棚を横から手で押した。
すると小さな部屋への入口が開いた。本棚は隠し扉だったのだ。
彼はその小部屋の中で何やら資料のようなものを見ていた。
そのとき、彼のポケットに入っていたスマホが鳴って、怜一郎さんは電話に応答しながら小部屋を出て本棚を元に位置に戻し、足早に書類庫を出て行った。
彼は扉にカギをかけて行ったが、資料庫のカギなら僕も持っていた。
カギを開け、僕はさっき怜一郎さんがいた場所まで進んだ。
一見、ただの本棚にしか見えないが、それは横から押すと簡単に動いてさっきの小部屋が現れた。
机の上にはさっき彼が見ていた資料がそのまま残されていた。
それは手書きで管理するタイプの金銭出納帳の束だった。日付はそんなに古いものではない。
「帳簿……?」
社内の書類のほとんどがデジタル化されているというのに、こんな隠し部屋で紙の帳簿で管理しているものがあるなんて……嫌な予感しかしない。僕はドキドキしながら、その帳簿を手に取って開いた。
そこには宝条ホールディングスがある政治家へ送金を行った記録が示されていた。
パラパラとページをめくっただけで1億円以上の金銭を贈っていたことがわかった。
「こ、これって……!?」
政治家への贈賄の証拠じゃないか! 宝条ホールディングスは何かしらの便宜を図ってもらう代わりに政治家へ多額の金を渡してきたというのか。企業から政治家個人への寄付は犯罪だ。まさか宝条ホールディングスがこんな悪事に手を染めているなんて……。
ここのところ怜一郎さんが悩んでいるような様子だった理由を僕はこのとき初めて知った。
『なあ、もしもの話だ。……もしもだが、俺が宝条ホールディングスもこの家も捨てて、一緒にどこか遠くへ逃げてしまおうと言ったら、……龍之介はついてきてくれるか?』
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まじめな怜一郎さんは宝条ホールディングスの裏の顔を知り、失望しているんだ。
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