【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

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本編・取り違えと運命の人

096 リカルド日記(抜粋) ④

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○月×日

あれからいくつの資格をとったかな。途中から数えるのがめんどくさくなってしまって、見ればわかるように履歴書に記録するだけになってしまった。俺自身にとって大切なのは、技術を身につけて現場で役立てることだけだから、それでいい。みなさんからは「ほんとにリカルドは資格マニアだな」なんて笑われるけど。


○月×日

毎日充実していると思う。資格の勉強は毎日の習慣に組み込んでしまったから、もう負担ではなくなっている。たまに同僚や後輩と飲みに行ったり、昔からの友達と遊んだりバカ騒ぎしたりもする。

父ちゃんは俺の歳の頃にはもう結婚していて、俺も生まれていたから、きっと全然余裕がなかっただろう。負担をかけてしまっていたんだろうと申し訳なく思うこともあるけど、父ちゃんの口癖を思い出す。

「俺は母ちゃんとリカルドがいるからがんばれるんだ」
無口な父ちゃんの言うことだから、本心だったんだと思う。
毎日充実しているけど、ふっとさびしくなる瞬間は、そんな時に訪れる。


○月×日

待ち望んでいた神託の相手がついに決まったと知らされた。俺が彼女の家に行く方だったので、魔法球を受け取る。俺の相手、ジュリエッタって名前なんだ。
生まれた時から住んでいる町を離れることになるから、さびしくはあるけど、それなりに金も貯めたし、資格もぶら下げるくらいあるから、先の不安はない。

絶対に挨拶しなければならないと、知らせを受け取ったその足で走る。アポイントとってないから失礼かなと思ったけど、笑顔で迎えてくださった。

「リカルド! すっかり立派になったね」
「先生もお元気そうでなによりです!」
年始の挨拶状を送るくらいしかしてなくて、お会いするのは久しぶりだったから、話が弾む。俺が学校を卒業する頃、先生は少し遅い結婚をしたのだけども、どういういきさつだったのかがずっと気になっていたからツッこんでみたり。そしらぬ顔ではぐらかされたけど。去年待望のお子さんが生まれて、可愛くて仕方ないそうだ。よかったなあ。

「しかしリカルドがこの町を離れるのはさびしくなるね」
「今度は、俺の相手と一緒に来ますから」
「また会えるのを楽しみにしているよ」
「先生」
「なんだい?」
「進学こそしなかったけど、先生が勉強の仕方を教えてくださったから、資格いっぱい取れたんです。俺の人生を変えてくれて本当に感謝してます。先生は俺のもう一人の父です」

いつも冷静な先生が、顔をくしゃくしゃにして嗚咽する姿なんて、きっともう見ることはないと思う。先生は、歳を取るとどうも涙腺が弱くなっていけないなとおっしゃっていたけれど。
絶対にまた元気で会うことを重ねて約束して、笑顔で別れた。


○月×日

今日、ようやく俺の相手に会える。ジュリエッタ、どんな子かな。優しい子だといいな。俺より四つ年下だけど、楽しくやれるかな。趣味とか好みが俺と似てても似てなくても、お互い大切に思いあえるといいな。父ちゃんと母ちゃんみたいに。父ちゃんと母ちゃん、正直全然共通点なかったけど、とってもなかよしだったから。明らかに神託がなかったら結婚してない二人。

考えても仕方ない。あとは運を天に任せて、進むだけだ。
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