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本編・取り違えと運命の人
060 本当の私を誰も知らない ①
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その日の夜遅くに、リカルドは帰ってきた。
「おかえりー」
「ただいま。ありがとう、待っててくれたんだ」
「もっと遅くなるかと思ってたけど」
「うん。ほんとは午前様になると思ってたんだ、俺も」
「私も今日午後から外出してたし、とりあえず待ちがてら家事片づけて、眠気に耐えられなくなったら寝ようかな、くらいに思ってたから、会えてよかったわ」
「うん。明日の朝にでも訊ねようと思ってたんだけど、今日お会いした、カールした薄茶の髪のおしゃれな女性、彼氏いる?」
「カールした薄茶の髪……ああ、ビアンカ? ううん、今、ちょうどいないよ。モテるからすぐ彼氏できると思うけど」
「紹介してくれる?」
リカルドが言うには。今日は一つ年下の先輩マッテオさん(リカルドが中途入社だから、そういう妙なことになっている)の恋愛相談で飲み明かす予定だったらしい。
「なんか、妙になつかれちゃってて。最初は先輩だから敬語で接してたんだけど、俺が年上だからって拒否してきて。ごくたまに飲みに行くのはほぼヤツ。で、プライベート相談が本日ついに恋愛に至った感じ」
「あんな美形でも恋愛に悩んだりするんだ」
「うん。それも、どうしたら振られないか、みたいなヤツ」
「え! 意外! 器用に何股もかけて扱いが面倒とか、モテまくるのに相手を愛せないとか、そういう方面かと」
「ないない。そんな複雑なこと。俺が言うのもなんだけど、マッテオ、結構本気でなんにも考えてないんだ」
「なんかすごく哲学的なこと考えてそうに見えたのに。ミステリアスなイメージっていうか」
「それが、全然裏がない、小学生みたいなヤツなんだ」
曰く「なんだか、スマートな扱いを異様に求められるし、クールなキャラだと思われがちなんですけど、気の利いたことできないし、直球で愛情表現したら的外れって言われるし、希望通りにしたら重いって振られるんです」。
「いいヤツなんだけど、いかんせん中身が小学生だから。誕生日プレゼントに駄菓子詰め合わせとか贈ったりするし」
「うわあ。宝の持ち腐れっていうか、残念なイケメン」
「したいこととか言ってあげれば、その通りしてくれるんだけどねえ。でも、察してほしいんでしょ? 女の人は」
「そうじゃないタイプももちろんいるけど」
「そこが難儀なところで、ヤツの好きなタイプが、わかりやすく女子力高い可愛いおねえさんなんだ」
「ああー」
なるほど。それは振られるわ。
「おかえりー」
「ただいま。ありがとう、待っててくれたんだ」
「もっと遅くなるかと思ってたけど」
「うん。ほんとは午前様になると思ってたんだ、俺も」
「私も今日午後から外出してたし、とりあえず待ちがてら家事片づけて、眠気に耐えられなくなったら寝ようかな、くらいに思ってたから、会えてよかったわ」
「うん。明日の朝にでも訊ねようと思ってたんだけど、今日お会いした、カールした薄茶の髪のおしゃれな女性、彼氏いる?」
「カールした薄茶の髪……ああ、ビアンカ? ううん、今、ちょうどいないよ。モテるからすぐ彼氏できると思うけど」
「紹介してくれる?」
リカルドが言うには。今日は一つ年下の先輩マッテオさん(リカルドが中途入社だから、そういう妙なことになっている)の恋愛相談で飲み明かす予定だったらしい。
「なんか、妙になつかれちゃってて。最初は先輩だから敬語で接してたんだけど、俺が年上だからって拒否してきて。ごくたまに飲みに行くのはほぼヤツ。で、プライベート相談が本日ついに恋愛に至った感じ」
「あんな美形でも恋愛に悩んだりするんだ」
「うん。それも、どうしたら振られないか、みたいなヤツ」
「え! 意外! 器用に何股もかけて扱いが面倒とか、モテまくるのに相手を愛せないとか、そういう方面かと」
「ないない。そんな複雑なこと。俺が言うのもなんだけど、マッテオ、結構本気でなんにも考えてないんだ」
「なんかすごく哲学的なこと考えてそうに見えたのに。ミステリアスなイメージっていうか」
「それが、全然裏がない、小学生みたいなヤツなんだ」
曰く「なんだか、スマートな扱いを異様に求められるし、クールなキャラだと思われがちなんですけど、気の利いたことできないし、直球で愛情表現したら的外れって言われるし、希望通りにしたら重いって振られるんです」。
「いいヤツなんだけど、いかんせん中身が小学生だから。誕生日プレゼントに駄菓子詰め合わせとか贈ったりするし」
「うわあ。宝の持ち腐れっていうか、残念なイケメン」
「したいこととか言ってあげれば、その通りしてくれるんだけどねえ。でも、察してほしいんでしょ? 女の人は」
「そうじゃないタイプももちろんいるけど」
「そこが難儀なところで、ヤツの好きなタイプが、わかりやすく女子力高い可愛いおねえさんなんだ」
「ああー」
なるほど。それは振られるわ。
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