33 / 201
本編・取り違えと運命の人
032 夏の嵐 ①
しおりを挟む
「ええと」
夕飯を食べ終えた後、少し言いづらそうに、リカルドが切り出してきた。
「なあに?」
「その、ジュリエッタのご家族って、どこにいるの?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「うん。全く言わないから、訊ねられたくないのかな、と思って、今まで聞けなかった」
それは気をつかわせてしまって申し訳なかったな。
「そういう訳じゃないんだけど……。家族構成は父母兄私の四人で、私が十二の時、父の浮気に母がキレて離婚したの。追い出された父は婦人服のデザイナーで北の町にいるわ。母と四つ年上の兄は南の町で洋品店営んでる。兄のデザインを母が仕立ててて、結構繁盛してると思う。二人とも仕事中毒だし、堅苦しいこと嫌いだから、結婚はハガキで知らせただけ。お祝いとかする家じゃないし」
「そ、そうなんだ……」
死に別れたとはいえ、なかよし家族で育ったリカルドは、なんだか微妙な表情をしている。いや、私の家も別に仲が悪い訳ではないんだけど。
「両親が離婚する時、私はどっちについていくか迷ったんだけど、あまりにも家事能力のない母と兄を見捨てられなくて、母の方に残ったの」
「家事能力のない……お母さん?」
「うん。母は経営と仕立ては抜群なんだけど、家事いっさいだめなの。父は小器用だから料理担当してた。両親を見て、ああ、お金稼ぐのと家事と両方できないとだめだなと学習したので、小さい頃から割と現実的だったと思う」
「ふ、ふうん……」
リカルド、ものすごく気まずそう。
「母からある程度仕立ての方法を教えてもらっていたし、三人でお店を続けてもよかったんだろうけど、このままじゃ一生家にいることになりかねないし、自分の人生は自分で決めなきゃと危機感を覚えたから、十五の時にこの町の服飾学校に行くことにしたの」
「そ、そう……」
リカルド、めちゃくちゃ困惑してる。引いてるというよりは、地雷踏んだって感じに。
「両親の離婚原因は父の浮気だし、兄やその友達はチャラいし、出入りの業者さんにもゲスい人は結構いて、男性への不信感が少しあったんだけど、温かい家庭を築きたい気持ちもずっとあって。男性とどう接していいかよくわからないから、神託に申し込んだの」
もうなにを言っていいのかわからなそうなリカルドの目を見て続ける。
「この選択、正しかったと思うわ」
「ジュリエッタ……」
夕飯を食べ終えた後、少し言いづらそうに、リカルドが切り出してきた。
「なあに?」
「その、ジュリエッタのご家族って、どこにいるの?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「うん。全く言わないから、訊ねられたくないのかな、と思って、今まで聞けなかった」
それは気をつかわせてしまって申し訳なかったな。
「そういう訳じゃないんだけど……。家族構成は父母兄私の四人で、私が十二の時、父の浮気に母がキレて離婚したの。追い出された父は婦人服のデザイナーで北の町にいるわ。母と四つ年上の兄は南の町で洋品店営んでる。兄のデザインを母が仕立ててて、結構繁盛してると思う。二人とも仕事中毒だし、堅苦しいこと嫌いだから、結婚はハガキで知らせただけ。お祝いとかする家じゃないし」
「そ、そうなんだ……」
死に別れたとはいえ、なかよし家族で育ったリカルドは、なんだか微妙な表情をしている。いや、私の家も別に仲が悪い訳ではないんだけど。
「両親が離婚する時、私はどっちについていくか迷ったんだけど、あまりにも家事能力のない母と兄を見捨てられなくて、母の方に残ったの」
「家事能力のない……お母さん?」
「うん。母は経営と仕立ては抜群なんだけど、家事いっさいだめなの。父は小器用だから料理担当してた。両親を見て、ああ、お金稼ぐのと家事と両方できないとだめだなと学習したので、小さい頃から割と現実的だったと思う」
「ふ、ふうん……」
リカルド、ものすごく気まずそう。
「母からある程度仕立ての方法を教えてもらっていたし、三人でお店を続けてもよかったんだろうけど、このままじゃ一生家にいることになりかねないし、自分の人生は自分で決めなきゃと危機感を覚えたから、十五の時にこの町の服飾学校に行くことにしたの」
「そ、そう……」
リカルド、めちゃくちゃ困惑してる。引いてるというよりは、地雷踏んだって感じに。
「両親の離婚原因は父の浮気だし、兄やその友達はチャラいし、出入りの業者さんにもゲスい人は結構いて、男性への不信感が少しあったんだけど、温かい家庭を築きたい気持ちもずっとあって。男性とどう接していいかよくわからないから、神託に申し込んだの」
もうなにを言っていいのかわからなそうなリカルドの目を見て続ける。
「この選択、正しかったと思うわ」
「ジュリエッタ……」
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる