【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

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本編・取り違えと運命の人

002 運命の人 ②

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「あ、神託の相手って証拠の魔法球!」

 そう言って、リカルドさんは誇らしげに私に魔法球を差し出してきたので、とまどいつつも受け取る。魔法球なんて初めて見るなあ。思わずしげしげと眺めてしまう。私のてのひらでも収まるサイズのそれは、夜空のような深い藍色で、なんだか吸い込まれそう。
 私の周囲に魔力持ちの人はいないし、お針子って職業上でも魔法のお世話になることはない。だから普段は魔法なんてほとんど意識しないけど、こういう魔力の込められたものを見ると、人知を超えたものってやっぱりあるんだな、と感じる。
 魔法球に文字が表示されていることに気づいた。私の名前、生年月日、数値と方角の文字が順繰りに浮かびあがってくる。字が小さいからちょっと見にくいな。

「私の名前と生年月日と……この最後のは、なんですか?」
「うん。俺の現在地から君のいるところまでの距離とどの方向に進めばいいかの位置情報なんだって。基本はこの三つが出てきて、あとは訊ねると表示してくれる感じらしい」
「らしい?」
「んー、俺、せっかくだからジュリエッタに直接訊ねたくて、使わなかった」
「え? なんでですか? せっかくわかるのに……」
「ジュリエッタはこれ持ってないでしょ? 俺だけズルするみたいな感じで気が進まなかったし、前もって知ってしまったら会話の楽しさが半減しちゃうし」
「そういうもの、ですか?」

 私なんか口下手だから、便利そうだなー、と思うけど。

「そういうもの! 俺、ジュリエッタと直接話すの、すごく楽しみだった!」

 そう言って、リカルドさんはまた、にこにこ笑った。

 私は、その楽しみにされていた会話が、かなり下手です。

「えーっと……」

 期待に応えるべく、とりあえず口を開いた瞬間、リカルドさんの腹の虫が盛大に鳴った。

「ご、ごめん、お昼食べてなくて、お腹すいた……」

 途端に、電池切れた、みたいに、しゅんとなっちゃうリカルドさん。

「こちらこそ、気がつかなくて、ごめんなさい! どうぞ!」

 なんだかんだ、玄関先で立ち話になってた。長旅してきた人に申し訳ない。急いで室内に招き入れる。

「すぐお夕飯にしますけど、とりあえず、お茶どうぞ」
「ありがとうー。生き返るー」

 テンション高くて気づかなかったけど、リカルドさん、結構疲れていた様子。

「ごめんなさい。長旅してきたのに……」
「ジュリエッタ、優しい!」

 そんなに目をキラキラさせる要素が、あっただろうか。

「お昼食べてないのは、自分が悪いんだ。俺、うっかりものだから、列車間違えちゃって。魔法球結構便利で、位置情報のとこにどの列車に乗れとかも出るから安心しきってたんだけど、たぶん見間違えちゃったんだ。あわてて正しいのに乗り換えたんだけど、その前までにも人とぶつかったり、荷物ぶちまけたり、結構時間ロスしちゃったから、食べてる時間がもったいなくって」
「そんな、もっと遅くなったって、ちっともかまわなかったのに」
「んー。俺が、少しでも早く、君に会いたかったの!」

 ど、どこまでも直球。こんな風に言われたことなんかもちろんないし、私自身もこんなにはっきり気持ちを表現することはないので、なんだか慣れない。

「あ、ジュリエッタ、照れてる! 可愛いなあ!」

 にこにこ言われて、自分が赤くなっていることに気づく。

「ゆ! 夕飯の仕度、しますから!」
「楽しみに待ってるー!」

 ちょ、調子狂う!
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