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本編・取り違えと運命の人

003 運命の人 ③

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「お待たせしました」

 夕飯を持っていくと、リカルドさんから拍手とともに感嘆の声が上がる。

「う、わーーー! 豪華ーーー!! すっごくおいしそう!!!」

 前もって準備してたから、そこそこ豪華ではあるけど、そう言われるとやっぱり嬉しい。
 好き嫌いがわからなかったから、とりあえずいろいろ作っておいたのだ。
 ローストビーフ、鯖のパイ包み、鶏のフライ、ベーコンと春野菜のパスタ、パエリア、ジャガイモのクリームスープ、サラダ、デザートに焼きプリン。これだけあれば、多少好き嫌いがあっても、とりあえず飢えはしのげるはずだ。
 ごくりと唾を飲んで、リカルドさんが言う。

「た、食べてい?」
「どうぞ」
「今日の糧を感謝します! アーメン! いただきます!!」

 食前の祈り、短っ! 怒濤のイキオイでひとしきりガツガツ口にするリカルドさんを思わず見つめる。

「…………おいしい……! なにこれなにこれ、全部おいしい!! 全部すごくおいしい!! うわー、幸せー!!!!!!!」
「よ、よかったです」
「こんなに用意するの、大変だったでしょう? ほんとありがとう!」

 リカルドさんはにこにこしながら、とてもおいしそうに食べ続ける。
 私はそんなにしゃべる人間じゃないから、リカルドさんのテンションの高さに少しびっくりする。びっくりはするけれど、自分が作った料理をこんなに喜んでもらえて、褒められて、手間を慮ってもらえて、感謝されて、本気でおいしそうに食べてもらえると、やっぱり、嬉しい。すごく。

「……あ、ジュリエッタ、笑った……!」

 満面の笑みでリカルドさんが言う。

「その、嬉しいから……です」
「俺も! こんなおいしい料理を、ジュリエッタと一緒に食べられて!」

 なんだか、つられて笑ってしまう。

 この人、いい人だ。正直、いわゆるハンサムって顔じゃない。でも、最初からずっとあたたかい笑顔でとても親しみやすいし、一緒にいるとなんだか楽しい気持ちになる。
 なに話したらいいかわかんない、なんて杞憂で、あっという間に夕飯がすんだ。
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