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第二章
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その晩、エミリアも王家のメンバーと夕食を共にした。
淑女のように澄ましているエミリアを見て、フリードリヒはモヤモヤした。
結局、エミリーに会っても何だか息が苦しいような感じがする。やはり、愛なんて、訳の分からない感情なんかではないようだ。今度、医者に相談しよう。
「貴婦人としての勉強は進んでるのか?」
ヴィルヘルムの問いにエミリアが答える。
「えぇ、皆様、本当に良くして下さって、とても細やかに、念入りに、長い時間をお付き合い下さって、それはもう、丁寧に丁寧に教えて下さいますわ」
「エミリア様...嫌がらせを受けていませんか?」
クリスチナの問いに王太子妃が答える。
「とんでもありませんわ。ワタクシの侍女達がイジメられているのです」
「どういう事だ?」
ヴィルヘルムの問いにエミリアが答える。
「イジメではありません。侍女の皆様が、わたくしのことを心配するあまり、余計な事ばかりを仰るから、わたくしは皆様が余計な仕事をしなくていいように、ご助言申し上げただけですの。中身の伴わない言葉は美しくないと」
「あぁ、それで今日、侍女達が泣いていたんだな? 新聞に書くのだけはやめて欲しいとか言ってたが...なんて言ったんだ?」
「御令嬢方がわたくしにして下さったご助言は大変、心に響いたので、新聞に記事を掲載したいと申し上げたのです」
エミリアは嫌がらせをする侍女達に、事を公にして断罪すると脅したのである。
「流石、エミリア様でございます」
クリスチナ様は感動している様だ。
今日のエミリーは私とはあまり喋らない。その癖、兄上とは喋っている。一人前の貴婦人気取りで、鼻に付く。
そんな風にフリードリヒが思っていると、女王から話題を振られる。
「ところで、フリードリヒ、正式なプロポーズをエミリアにしていないみたいだが、本当に結婚する意思はあるのか?」
フリードリヒは固まった。
しかし、直ぐに仮面のような笑顔を作った。
「考えておりますので、今しばらくお待ちください」
フリードリヒの言葉に、エミリアの顔が苦笑いに変わる。
その顔を見たら、フリードリヒの胸にギシッと音が鳴るような鈍い痛みが走った。
「今日は体調が優れないので失礼致します」
フリードリヒは、その場から逃げ出した。
「エミリア、本当にフリードリヒと結婚していいのか?」
「いいに決まってるじゃない! だって、フリッツはイケメンで、お金持ちで、権力があるのよ? 殴らないし、怒鳴らないし、女を風俗に売ろうとしないし、ギャンブルもしない。お義母さんになる王太子妃様も、旦那に似た長男ばかり可愛いがるんじゃなくて、次男やお嫁さんも大事にしてるし、私のことも少しは可愛がってくれると思うの。公妃になれば、平民の癖にって言われなくなるのよ? 幸せな未来しか見えないわ!」
「エミリア...」
王太子妃は涙ぐんだ。
「言葉遣いが乱れておりますよ! 明日から、また頑張ってもらいますからね!」
「はぁ~い」
食事が終わり、エミリアは自室に戻った。そして、結っていた髪を解いてバルコニーに出る。
「やっぱり無理かなぁ~? 肝心のフリッツがあんな感じじゃね! でも、ここまでして貰えただけでもラッキーだったわ」
クリスチナ様を見ていると思い知る。本物のお姫様との違いを。生まれながらにして高貴で、両親や色んな人から愛されて育った汚れのないお姫様。
ひらりと蝶がバルコニーの手すりにとまる。
「アンタも不平等な世の中だと思わない? 私だって頑張って生きてるのにさ! 愛されたいだなんて、贅沢なこと言ってるんじゃないのよ? 誰からも馬鹿にされず、イジメられないで穏やかに暮らしたいだけ。貧しさから解放されたいだけ。私が欲しいのは、たったそれだけよ...」
蝶は羽ばたき、エミリアの周りを一周して夜の闇に消えていった。
淑女のように澄ましているエミリアを見て、フリードリヒはモヤモヤした。
結局、エミリーに会っても何だか息が苦しいような感じがする。やはり、愛なんて、訳の分からない感情なんかではないようだ。今度、医者に相談しよう。
「貴婦人としての勉強は進んでるのか?」
ヴィルヘルムの問いにエミリアが答える。
「えぇ、皆様、本当に良くして下さって、とても細やかに、念入りに、長い時間をお付き合い下さって、それはもう、丁寧に丁寧に教えて下さいますわ」
「エミリア様...嫌がらせを受けていませんか?」
クリスチナの問いに王太子妃が答える。
「とんでもありませんわ。ワタクシの侍女達がイジメられているのです」
「どういう事だ?」
ヴィルヘルムの問いにエミリアが答える。
「イジメではありません。侍女の皆様が、わたくしのことを心配するあまり、余計な事ばかりを仰るから、わたくしは皆様が余計な仕事をしなくていいように、ご助言申し上げただけですの。中身の伴わない言葉は美しくないと」
「あぁ、それで今日、侍女達が泣いていたんだな? 新聞に書くのだけはやめて欲しいとか言ってたが...なんて言ったんだ?」
「御令嬢方がわたくしにして下さったご助言は大変、心に響いたので、新聞に記事を掲載したいと申し上げたのです」
エミリアは嫌がらせをする侍女達に、事を公にして断罪すると脅したのである。
「流石、エミリア様でございます」
クリスチナ様は感動している様だ。
今日のエミリーは私とはあまり喋らない。その癖、兄上とは喋っている。一人前の貴婦人気取りで、鼻に付く。
そんな風にフリードリヒが思っていると、女王から話題を振られる。
「ところで、フリードリヒ、正式なプロポーズをエミリアにしていないみたいだが、本当に結婚する意思はあるのか?」
フリードリヒは固まった。
しかし、直ぐに仮面のような笑顔を作った。
「考えておりますので、今しばらくお待ちください」
フリードリヒの言葉に、エミリアの顔が苦笑いに変わる。
その顔を見たら、フリードリヒの胸にギシッと音が鳴るような鈍い痛みが走った。
「今日は体調が優れないので失礼致します」
フリードリヒは、その場から逃げ出した。
「エミリア、本当にフリードリヒと結婚していいのか?」
「いいに決まってるじゃない! だって、フリッツはイケメンで、お金持ちで、権力があるのよ? 殴らないし、怒鳴らないし、女を風俗に売ろうとしないし、ギャンブルもしない。お義母さんになる王太子妃様も、旦那に似た長男ばかり可愛いがるんじゃなくて、次男やお嫁さんも大事にしてるし、私のことも少しは可愛がってくれると思うの。公妃になれば、平民の癖にって言われなくなるのよ? 幸せな未来しか見えないわ!」
「エミリア...」
王太子妃は涙ぐんだ。
「言葉遣いが乱れておりますよ! 明日から、また頑張ってもらいますからね!」
「はぁ~い」
食事が終わり、エミリアは自室に戻った。そして、結っていた髪を解いてバルコニーに出る。
「やっぱり無理かなぁ~? 肝心のフリッツがあんな感じじゃね! でも、ここまでして貰えただけでもラッキーだったわ」
クリスチナ様を見ていると思い知る。本物のお姫様との違いを。生まれながらにして高貴で、両親や色んな人から愛されて育った汚れのないお姫様。
ひらりと蝶がバルコニーの手すりにとまる。
「アンタも不平等な世の中だと思わない? 私だって頑張って生きてるのにさ! 愛されたいだなんて、贅沢なこと言ってるんじゃないのよ? 誰からも馬鹿にされず、イジメられないで穏やかに暮らしたいだけ。貧しさから解放されたいだけ。私が欲しいのは、たったそれだけよ...」
蝶は羽ばたき、エミリアの周りを一周して夜の闇に消えていった。
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