【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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第二章

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「...ですが...その...他の方は、あまりピンと来なくて、選べないのです」

 フリッツ様は、婚約者の悪口を言っている間は生き生きと喋っていたのに、他の令嬢の話をするときは生気を失っているようだった。

「婚約者の方はピンと来たのですか?」

「いえ、そういう訳ではないのですが...それが、最近、自分がおかしいのです。彼女に会えない日は、なんだか息苦しくて、溜息ばっかりついてしまうし、大声で喋る女性の声を聞くと、彼女じゃないかと思ったり、金髪の女性を見ると、一瞬だけ皆、彼女に見えたり...貴女の顔を見ても、彼女とダブって見えてしまって、今、何しているんだろう? とか、なんで私に会いに来ないんだろう? とか、そんな事ばかり考えてしまうんです。

頭では、婚約破棄するのが1番良いと分かっているんです。貧乏な平民の好きでもない女を、どうして婚約者のままにしておくのか...自分でも不思議でならないのです」

「え? ...それ、本気で言ってます?」

「相談に来ているのに、嘘などついてどうするのです?」

 マルクスは心の中で叫んだ。

 こんな鈍感な人が世の中にいるのか!?

「どうしてだか私が答えても良いでしょうか?」

「そのために来ているのですが?」

「では...申し上げますが...」

「早く言って下さい」

「愛していますね」

 時計の秒針が5回進む音を聞く。

「今、なんと?」

「ですから、フリッツ様は婚約者様のことを愛していますね」

「は?」

「ですから...」

「ど、どうして、そういう結論になるんだ!?」

 真っ赤になって慌てるフリッツ様を見て、マルクスは確信した。

 この人、初恋だ!!!

「今、フリッツ様が真っ赤になっていらっしゃるのが証拠です。間違いなく、恋に落ちていますね!」

「そ、そんなはずはありません! あんな下品な女! 私が好きなはずありません!」

「でしたら、婚約破棄が出来るはずです」

「そ、それは...」

「考えてみて下さい。その婚者様がいない生活を。もう、二度と会えないとしたら、どう、思いますか?」

 真っ赤だったはずのフリッツの顔は、真っ青になった。

「それが、答えだと思いますよ?」

「そ、そうか...よく、分かった」


 フリードリヒは、支払いを済ませ、店を出ると外で待機させていた馬車へと乗り込んだ。

『自分が愛していたら、愛ほど確かなものはないのよ?』

 エミリアの声が聞こえるような気がした。

 店の人に言われても、自分の気持ちは、まだ、よく分からなかった。ただ...

 エミリーに会いたい。

 そう、思った。
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