22 / 45
オリギナ魔法学校
第二十二話 就職
しおりを挟む
「クラウディア、オン・スコアの部屋はわかるか?」
「……男子寮だと思うけど? 会うの?」
「いいや、見るだけだ」
クラウディアに男子寮の大体の場所を聞く。昼間使った情報を探る魔法“テレヴィ”でオン・スコアの部屋を探す。男子寮の外側から映像を観察して大体の位置を想定して部屋の中を映し出す。
案外部屋の中はきれいだ。ごみの類は無い……だが装飾品が過剰だ。金ぴかの像とかギラギラのシャンデリアがある。
「うわっ、なんて言うか……趣味が悪い」
「なんかカラーリングが気持ち悪い、てか、部屋が広いぞ。どうなってるんだ?」
「一応、外国の王族だから特別待遇なんでしょ」
他の部屋……クラウディアの部屋と比較して十倍以上ある。ワンフロアをそのまま貸し切りにしたような状態だ。
テレヴィで映る範囲を変える。ようやく部屋の中に人間を見つけた。
……もういいか。映像を閉じる。
「うへぇ。カテイナちゃんそういうの映さないでくれる?」
「おれに言うな。まさかあいつが下着でごろ寝してるとか思わないだろ?」
「プライベートに踏み込んだのが悪かったか……、カテイナちゃんこれ無し。この魔法は使用禁止ね」
「おれも激しく同意する。それにしてもなんだあいつ。小太りじゃ済まんぞ」
「前に見た時よりも横に大きくなってる」
オン・スコアの顔と居場所は覚えた。これ以上ちょっかい出す気なら、直接脅しに行く。これだけを決めた。
「そういえば明日はどうするの?」
「あ~、考えてなかった。どうしようか……はっきり言って授業は難しい。というかわからない。お前に教えてもらうのが一番いいんだがな。もっといろいろ別のことを身につけてからにしたい」
クラウディアがほっとした顔で「じゃあ帰るんだね?」と聞いてくる。
不本意だが仕方ない。このまま授業を受けてもついていけない。明日はもっと別のことをしよう。
「明日の朝に帰る。このままじゃ仕方ない」
「えっ、帰ってしまうのですか?」
唐突な声に二人して飛び上がる。
シュンカがいつの間にか後ろに立っていた。
「……いつから見ていた?」
「変な魔力を感知してからです。お二人がのぞきをしていた時からですよ。それにしても明日帰ってしまうのですか? 体験入学なら期間を一週間でも伸ばしますが?」
「この学校には興味があるんだが……無理だ。授業が理解できない。もう少しクラウディアにくっついて勉強してからにする」
クラウディアが目をそらして舌打ちしている。
シュンカは残念そうだ。
「私としては、もっと魔界の……いえ、貴方の魔法を見たかったのですが……“テレヴィ”も我々の技術にはないことですし……う~ん」
「お前な、自分で入学させなかったくせに俺には居て欲しいのか」
「ええ、これだけ魔法技術を見せられるとね。十年を待っていられない……何かいい手はないかしら」
「あきらめろ。俺と同じようにな。俺はクラウディアを先生にしてもっと勉強する」
クラウディアが辟易と言った顔をする。それをジロリに睨んで態度を正させる。
「先生……先生ね。私が教えましょうか?」
「断る。俺はクラウディアがいい。お前は技量が高すぎる。クラウディアぐらいなら何をやっているかがわかるけど、お前のはさっぱりだ。何をしているのか、何をされたのかすらわからない」
「私は大したことはしていないと思いますが?」
「おれに無自覚に技量を見せつけるのはやめろ。クラウディアに追いついたらお前に教えてもらうさ」
シュンカがクラウディアを恨めしそうに見ている。クラウディアはそれにショックを受けている。失礼な奴らだ。
「私だってカテイナ君に魔法を教わりたいのに……! そうだ! カテイナ君、講師になりませんか!?」
「講師? 先生ってことか? 断る。俺は教えるより教わりたい。俺は早く技術を身につけたいんだ」
「まぁまぁ、話は最後まで聞いてください。カテイナ君を特別臨時講師補佐見習いという適当な役職を作ってこの学校で雇います」
「今、思いっきり適当って言ったよな?」
「役職名はどうでもいいんですよ。この学校の職員の資格はただ一つ、魔法の技量のみです。年齢ではありません」
ほほう、実力主義って言うのは好きだな。俺の強さが十二分に反映されるからだ。つまり、俺は生徒ではなく教師としてこの学校に入り込む。しかしな、教師か……俺にはクラウディアに教えられるものは無い。
魔法の技量に俺の出番はない。こいつらの言っている魔法の技量は俺にはない。
「残念だが俺の技量はクラウディアにも届かないぞ」
「ですが、魔力総量は人間のはるか上です。だから講師補佐なんですよ。私の講師の補佐をやってもらいます。今までできなかった巨大魔力が必要な実験を手伝っていただきます」
「え~っ? 絶対に嫌だぞ?」
「そういわずに、私の講師補佐となればある程度自由が利きます。例えば好きな授業だけを参加するなんてこともね」
「ほほう、全部受けなくてもいいのか……、なら俺は午後の授業だけ出るぞ。クラウディアを利用して魔法体系だけ勉強させてもらう。あと部活もな。旨いものを食い漁るぞ」
「構いません。午前だけ私の実験に付き合っていただければね」
ニヤリと笑って腕を組む。考えているふりをする。この提案を蹴るわけではない。だがもう少し溜めても文句は出ないだろう。
俺は大仰にしてなるべく尊大に「その提案に乗ってやろう」と宣言した。
「……男子寮だと思うけど? 会うの?」
「いいや、見るだけだ」
クラウディアに男子寮の大体の場所を聞く。昼間使った情報を探る魔法“テレヴィ”でオン・スコアの部屋を探す。男子寮の外側から映像を観察して大体の位置を想定して部屋の中を映し出す。
案外部屋の中はきれいだ。ごみの類は無い……だが装飾品が過剰だ。金ぴかの像とかギラギラのシャンデリアがある。
「うわっ、なんて言うか……趣味が悪い」
「なんかカラーリングが気持ち悪い、てか、部屋が広いぞ。どうなってるんだ?」
「一応、外国の王族だから特別待遇なんでしょ」
他の部屋……クラウディアの部屋と比較して十倍以上ある。ワンフロアをそのまま貸し切りにしたような状態だ。
テレヴィで映る範囲を変える。ようやく部屋の中に人間を見つけた。
……もういいか。映像を閉じる。
「うへぇ。カテイナちゃんそういうの映さないでくれる?」
「おれに言うな。まさかあいつが下着でごろ寝してるとか思わないだろ?」
「プライベートに踏み込んだのが悪かったか……、カテイナちゃんこれ無し。この魔法は使用禁止ね」
「おれも激しく同意する。それにしてもなんだあいつ。小太りじゃ済まんぞ」
「前に見た時よりも横に大きくなってる」
オン・スコアの顔と居場所は覚えた。これ以上ちょっかい出す気なら、直接脅しに行く。これだけを決めた。
「そういえば明日はどうするの?」
「あ~、考えてなかった。どうしようか……はっきり言って授業は難しい。というかわからない。お前に教えてもらうのが一番いいんだがな。もっといろいろ別のことを身につけてからにしたい」
クラウディアがほっとした顔で「じゃあ帰るんだね?」と聞いてくる。
不本意だが仕方ない。このまま授業を受けてもついていけない。明日はもっと別のことをしよう。
「明日の朝に帰る。このままじゃ仕方ない」
「えっ、帰ってしまうのですか?」
唐突な声に二人して飛び上がる。
シュンカがいつの間にか後ろに立っていた。
「……いつから見ていた?」
「変な魔力を感知してからです。お二人がのぞきをしていた時からですよ。それにしても明日帰ってしまうのですか? 体験入学なら期間を一週間でも伸ばしますが?」
「この学校には興味があるんだが……無理だ。授業が理解できない。もう少しクラウディアにくっついて勉強してからにする」
クラウディアが目をそらして舌打ちしている。
シュンカは残念そうだ。
「私としては、もっと魔界の……いえ、貴方の魔法を見たかったのですが……“テレヴィ”も我々の技術にはないことですし……う~ん」
「お前な、自分で入学させなかったくせに俺には居て欲しいのか」
「ええ、これだけ魔法技術を見せられるとね。十年を待っていられない……何かいい手はないかしら」
「あきらめろ。俺と同じようにな。俺はクラウディアを先生にしてもっと勉強する」
クラウディアが辟易と言った顔をする。それをジロリに睨んで態度を正させる。
「先生……先生ね。私が教えましょうか?」
「断る。俺はクラウディアがいい。お前は技量が高すぎる。クラウディアぐらいなら何をやっているかがわかるけど、お前のはさっぱりだ。何をしているのか、何をされたのかすらわからない」
「私は大したことはしていないと思いますが?」
「おれに無自覚に技量を見せつけるのはやめろ。クラウディアに追いついたらお前に教えてもらうさ」
シュンカがクラウディアを恨めしそうに見ている。クラウディアはそれにショックを受けている。失礼な奴らだ。
「私だってカテイナ君に魔法を教わりたいのに……! そうだ! カテイナ君、講師になりませんか!?」
「講師? 先生ってことか? 断る。俺は教えるより教わりたい。俺は早く技術を身につけたいんだ」
「まぁまぁ、話は最後まで聞いてください。カテイナ君を特別臨時講師補佐見習いという適当な役職を作ってこの学校で雇います」
「今、思いっきり適当って言ったよな?」
「役職名はどうでもいいんですよ。この学校の職員の資格はただ一つ、魔法の技量のみです。年齢ではありません」
ほほう、実力主義って言うのは好きだな。俺の強さが十二分に反映されるからだ。つまり、俺は生徒ではなく教師としてこの学校に入り込む。しかしな、教師か……俺にはクラウディアに教えられるものは無い。
魔法の技量に俺の出番はない。こいつらの言っている魔法の技量は俺にはない。
「残念だが俺の技量はクラウディアにも届かないぞ」
「ですが、魔力総量は人間のはるか上です。だから講師補佐なんですよ。私の講師の補佐をやってもらいます。今までできなかった巨大魔力が必要な実験を手伝っていただきます」
「え~っ? 絶対に嫌だぞ?」
「そういわずに、私の講師補佐となればある程度自由が利きます。例えば好きな授業だけを参加するなんてこともね」
「ほほう、全部受けなくてもいいのか……、なら俺は午後の授業だけ出るぞ。クラウディアを利用して魔法体系だけ勉強させてもらう。あと部活もな。旨いものを食い漁るぞ」
「構いません。午前だけ私の実験に付き合っていただければね」
ニヤリと笑って腕を組む。考えているふりをする。この提案を蹴るわけではない。だがもう少し溜めても文句は出ないだろう。
俺は大仰にしてなるべく尊大に「その提案に乗ってやろう」と宣言した。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死にかけたら謎のステータスが見える様になった件。
メカ
ファンタジー
大学二回生の青年「掛井 嗣仁」は、ある日事故に合う。
凡そ1か月後、目を覚ました彼の眼には「謎の数字」が見えていた。
そして「ソレ」が次第に、彼の生活を崩壊させていく・・・。
元の生活に戻る為、何も分からないまま歩み続けるしかなかった・・・。
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる