魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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オリギナ魔法学校

第二十三話 初の授業 シャッカVS……

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 俺の前に生徒が二十一人並んでいる。
 内訳は教師陣の十人、近衛師団の十人だ。おまけにクラウディアまでが呼ばれている。
 教師としてはシュンカが立っている。その横で俺はシュンカの補佐だ。
 
「では長距離ゲートについての実践を行います。カテイナ君」
「いいぞ。
 ん~、じゃあ魔界首都でもいいか」

 俺の一言でどよめく生徒たち。それぞれが顔を見合わせて言葉少なに魔界首都について話し合っている。

「まず、テレヴィで向こうの位置を探る。上すぎてもいけないし下すぎて地面に潜っても仕方ないしな。……こんな感じだ」

 感嘆の声が上がる。俺が魔力で映した映像には魔界首都がうかんでいる。ドラゴンが飛び交い、堕天使が映る。
 
「遠い所はいきなりゲートを開けるなよ。俺も一回、海底にゲートをあけて大変だった」
「……あの、その前にテレヴィをどうやるんですか?」
「あ~、これか。テレヴィはなゲートの変形だ。こうするんだ」

 俺がゆっくり魔力を変化させてシュンカにもわかるように実演する。シュンカはすげぇ。見ている目の前で真似をしている。それも両手で試行回数を二倍に増やしている。

「大体わかりました」
「おまえも大概の化け物だな」

 シュンカはにっこり笑っているが、教師達も近衛師団も舌を巻いている。クラウディアに至っては目を点にしている。

「まあ、テレヴィも魔力総量が足りなきゃあんまり遠くは見れないがな。
 それはそうと、ゲート魔法だったな。適当にシャッカでも呼ぶか」
「げっ!? カテイナちゃんそれはやめて!!!」

 クラウディアの叫びを無視して俺は空を飛ぶ赤い竜を見つける。その竜の進行方向にゲートを一気に開く。
 オリギナ帝国の上空にきらめくゲートの出口を作る。
 すさまじい速度で赤い竜が飛び出してきた。
 直後に大音量で声が聞こえる。

「カテイナ!!! 貴様だな!!! どこにいる!!!」

 俺は真上にシューティングスターを打ち上げる。
 それを感知した竜が風をまとって魔法学校の校庭に着陸する。

「やあ、シャッカ」
「カテイナ!!! 貴様!!! 今すぐ戻せ!!! 叩き潰すぞ!!!」
「まあ、待てよ。少しこの連中に魔界首都へのゲートを教えてやっているんだ」

 シャッカの頭に青筋がたまる。ほとんどブチギレ状態だ。
 その目が動いてクラウディアをとらえた。

「おい! そこの女!! 貴様!!! カテイナの目付けのくせに!!! この馬鹿を止めなかったのか!!!」

 クラウディアが蒼白な顔でシャッカの咆哮を受けている。

「な、なんで私が……」
「シヲウルが言っていたぞ!!! 魔王城の女はカテイナの世話焼きのためにそろえたってな!!!」
「そ、それはフランシスカ――」
「うるせぇえ!!! 世話もできねぇ馬鹿女ならつぶすぞ!!! いいから俺を戻せ!!!」

 俺は腕組みをしたまま、シャッカの言い分を聞いていた。しかし、何だろうなこの言いっぷり。シャッカは何を焦っているんだろう?

「シャッカ、いいじゃないか。たまには暇をつぶすのも」
「馬鹿かカテイナ!!! 今、お前のクソババアがっ……」

 背筋がぞくりと凍る。シャッカも先ほどの勢いがなくなった。そよぐはずのない風がそよいでいる。俺の後ろからだ。

「全く首都防衛の任務を放り出したと思えば……ふっ~、シャッカ、私も年を取って耳が遠くなったらしい。もう一度さっきなんて言ったか教えてくれ」

 ごくりとシャッカののどが鳴る。それが聞こえるほどにこの場が無音になった。鳥の鳴き声ひとつ、虫の音すら聞こえない。
 シャッカの目が揺れる。それもかつてないほど挙動不審に揺れている。

「くそばばあ」

 この場にいるはずのない大魔王シヲウルはかつてないほど笑顔でたっている。歯を見せている。そして、目だけがブチギレしている。

「もう一度聞かせてくれ、誰のことかな?」

 一つ一つの短い質問、静かに確実に怒りのボルテージがたまっているのがわかる。俺でもわかる。
 シャッカが覚悟を決めたように吠えた。

「お、お前のことだ!!」
「よくも吠えたな!!!!!」
 
 瞬く間の攻防だった。シャッカが上から大口開いてシヲウルに襲いかかり。その勢いを倍加するかの如く超重力魔法をシャッカにかけて、自分自身の全身強化の上にシャッカの顎を打ち抜いた。
 今、巨大なドラゴンが昏倒したまま泡を吹いて地面に伸びている。
 時間に直してコンマ一秒を切っている。
 ついでと言わんばかりに縦一文字に足を振り上げてからドラゴンの頭に振り落とす。
 地震が起きたかと思うほどの衝撃、割れた地面が屹立する。これは魔法じゃない。単純な力だ。
 あっけにとられた近衛師団も俺も巻き込まれた。
 何とか必死に割れた地面から頭を出す。

「カテイナ、この馬鹿を魔界首都に送れ」
「ひゅっ、わかりましゅた」

 大人しくシャッカの下にゲートを開いて魔界首都に戻す。一応ドラゴンだ。これでも死んではいないだろう。
 送り終わって母を見る。俺はなんて馬鹿なことをしてしまったのだろうか? 視線が冷たい。こ、怖い。

「カテイナ、ケツを出せ。私が優しく言っているうちにな」
「あ、あにゅぉ」
「ふ、っ~、はー、死にたいか?」

 わずか一言の言い訳すらできない。ズボンを降ろして尻を向ける。
 死ぬかと思った。音だけならさっきの地面割以上の音が鳴ったのだ。あの音が耳に直撃したら鼓膜が破れただろう。しかも二回もだ。左から右に抜けて右から左に各一発。俺は前のめりに倒れて意識がなくなった。
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