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既婚女性と独身男性との恋
セフレ4
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気がつくと私の目から涙が溢れていた。
「ごめんね……」
バックからハンカチを取り出し、涙を拭いた。真司君は何も言わず、ただじっと私を見つめている。
トイレから戻ってきた他のお客様が、私が泣いていたのに気づいてチラチラと横目で見ながらテーブルに戻る。
「これじゃなんか、真司君が私を泣かせてるみたいになっちゃうね。ごめんね」
残りのビールを一気に飲み干し、彼を真っ直ぐに見つめ直すと、とても優しい目で私を見ている。
「ちょっと、恥ずかしいからそんなに見ないでよ……」
私はハンカチで顔を隠しながら笑ってみせた。
「道代さん……さっき言ってくれたんで、勇気出して言いますね。僕が今、好きな人は道代さんです」
ハッキリ聞こえていた。
聞こえていたが、私の思考がフリーズした。そして、酔いが一気に引いていくのが分かった。
「ま、また……何言ってるのよ。おばさんを揶揄うのはやめて」
「揶揄うなんて。本当です。僕、ずっと道代さんのことが好きでした」
またハッキリ聞こえてしまった。
顔を隠していたハンカチをそっと下ろし、真司君の顔を見る。そこにはさっきとは違い、一人の男性としての真司君がそこにいて、私を見つめていた。
「ありがとう……」
言葉はそれしか浮かばなかった。
でも、心から嬉しかった。例えそれがお世辞や嘘であっても。
「言っておきますけど、お世辞とか嘘じゃないですからね。親友には道代さんのこと、相談したこともあります」
そう言って彼はスマホを開いて私に差し出した。そこには(ゆーた)と言う相手との2ヶ月前のLINEトークが表示されていた。
ーー会社に好きな人がいる
ーー結婚されていて、歳も離れてる
ーーでも、その人に会えると嬉しい
ーーやっぱダメだ。好きだわ俺。
真司君にスマホを返し、ゆっくり顔を上げて彼の目を見ると、今度は違う涙が溢れてきました。
「道代さんにちゃんと言えて良かったです。今日はありがとうございました」
一瞬時計に目をやり、お手洗いにと席を立つ彼。私はただ茫然とそこに座り、さっきの彼の言葉、LINEトークの文字を思い出していた。
「今日は大丈夫って言ってましたけど、もう21時半なんで、そろそろ出ましょうか」
彼に促され、立ち上がり店を出る。お会計を済ませてくれていてお金を出そうとした私の手を制止する彼の手が触れた。
どちらもその手から離そうとはしなかった。そして私が彼を見上げた瞬間、二人は唇を重ねていた。
(続)
「ごめんね……」
バックからハンカチを取り出し、涙を拭いた。真司君は何も言わず、ただじっと私を見つめている。
トイレから戻ってきた他のお客様が、私が泣いていたのに気づいてチラチラと横目で見ながらテーブルに戻る。
「これじゃなんか、真司君が私を泣かせてるみたいになっちゃうね。ごめんね」
残りのビールを一気に飲み干し、彼を真っ直ぐに見つめ直すと、とても優しい目で私を見ている。
「ちょっと、恥ずかしいからそんなに見ないでよ……」
私はハンカチで顔を隠しながら笑ってみせた。
「道代さん……さっき言ってくれたんで、勇気出して言いますね。僕が今、好きな人は道代さんです」
ハッキリ聞こえていた。
聞こえていたが、私の思考がフリーズした。そして、酔いが一気に引いていくのが分かった。
「ま、また……何言ってるのよ。おばさんを揶揄うのはやめて」
「揶揄うなんて。本当です。僕、ずっと道代さんのことが好きでした」
またハッキリ聞こえてしまった。
顔を隠していたハンカチをそっと下ろし、真司君の顔を見る。そこにはさっきとは違い、一人の男性としての真司君がそこにいて、私を見つめていた。
「ありがとう……」
言葉はそれしか浮かばなかった。
でも、心から嬉しかった。例えそれがお世辞や嘘であっても。
「言っておきますけど、お世辞とか嘘じゃないですからね。親友には道代さんのこと、相談したこともあります」
そう言って彼はスマホを開いて私に差し出した。そこには(ゆーた)と言う相手との2ヶ月前のLINEトークが表示されていた。
ーー会社に好きな人がいる
ーー結婚されていて、歳も離れてる
ーーでも、その人に会えると嬉しい
ーーやっぱダメだ。好きだわ俺。
真司君にスマホを返し、ゆっくり顔を上げて彼の目を見ると、今度は違う涙が溢れてきました。
「道代さんにちゃんと言えて良かったです。今日はありがとうございました」
一瞬時計に目をやり、お手洗いにと席を立つ彼。私はただ茫然とそこに座り、さっきの彼の言葉、LINEトークの文字を思い出していた。
「今日は大丈夫って言ってましたけど、もう21時半なんで、そろそろ出ましょうか」
彼に促され、立ち上がり店を出る。お会計を済ませてくれていてお金を出そうとした私の手を制止する彼の手が触れた。
どちらもその手から離そうとはしなかった。そして私が彼を見上げた瞬間、二人は唇を重ねていた。
(続)
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