親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

文字の大きさ
上 下
8 / 42
第1章「親友に彼氏ができた」

期待外れの電話。

しおりを挟む
「あ、公ちゃん!…もしかして、寝てた?」
「ガッツリ寝てた。何の用だよ、」

公ちゃんはあたしの声に不機嫌そうにそう言うと、電話の向こうであくびをする。
そんな公ちゃんにあたしは顔がニヤけながらも、言った。

「あのね、公ちゃんに大事な話があって…」
「話?」
「うん。実はあたしね…東北に引っ越すんだ」
「は…」

あたしが悪戯心でそう言うと、その時何故か公ちゃんの声が聞こえなくなった。

「?…ちょっと、公ちゃん?」
「…」
「公ちゃんってば、」

…あれ、もしかして、信じちゃった?
あまりにもシーンと静まり返るから、あたしは黙ったままの公ちゃんに言った。

「…嘘だよ!」
「……はぁ!?」
「東北に引っ越すなんて嘘!ね、ビックリした?ビックリした??」

あたしが笑ってそう言うと、公ちゃんがため息交じりに言う。

「おまっ…あのなぁ、嘘でもそんなと言うなよ、」
「だって、最近公ちゃん冷たいんだもん!ねぇーえー、ビックリした?」

あたしは公ちゃんにそう聞くと、尚も電話越しに気持ち悪いくらいにニヤける。
やばい…今、独りで良かった。
そう思っていたら、公ちゃんが言った。

「ビックリするに決まってんだろ。東北とか、遠すぎ」
「じゃあ、焦った?」
「焦ってねぇよ、ばーか」
「もー、素直じゃないー!」

あたしはそう言うと、そんな公ちゃんに対してケタケタ笑う。
本当、この時間が物凄く幸せ。
でも…

「…引っ越すのは、ほんとだよ」

笑いが落ち着いてきた頃、あたしは声を少し小さくして公ちゃんにそう言った。
あたしがそう言うと、公ちゃんは…

「マジで?何処に、」

そう問いかけてくる。
その問いかけに、あたしは今度は正直に言う。

「…水野くんの家」
「!…は?」
「実はね、さっき…」

あたしはそう言うと、さっきお父さんから言われたことを全て公ちゃんに話した。
そして全て話し終えると、公ちゃんが落ち着いた口調で言う。

「…そっか、そりゃ大変だな」
「ちょっと、それだけ?他に何か言うことないの?」
「だってお前…俺が何か言ったところでどうにかなるわけじゃないだろ」
「…そりゃあ…そうだけど…」

…でも、もっと何か言ってほしかったな。
『じゃあ俺んとこ来いよ』とか、『俺んとこ来いよ』とか、『俺んとこ来いよ』とか…!

「もういい!公ちゃんに言ったあたしが間違いだった!」
「は!?おいっ…」
「サヨーナラ!」
「ちょっ、待っ…」

はい、電話終了。
…公ちゃんのあほ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

その指

紫月音湖(旧HN/月音)
恋愛
人を愛した少年の話。 ※1ページで終わる物語です※

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

Untangl~秘密の場所で逢いましょう~

猫田けだま
恋愛
17歳の夏の終わり。 家庭に居場所がなく、クラスでも浮いていた美緒と透吾は、偶然に使われていない弓道場を〝避難場所〟として共有することになる。 かたくなだった互いの心は、肩を寄せ合うことで少しずつやわらかに形を変えていくが……。 高校生編と社会人編の2部作です。 画像は、にじジャーニーさんで作成しています。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

不倫するクズ夫の末路 ~日本で許されるあらゆる手段を用いて後悔させる。全力で謝ってくるがもう遅い~

ネコ
恋愛
結婚してもうじき10年というある日、夫に不倫が発覚した。 夫は不倫をあっさり認め、「裁判でも何でも好きにしろよ」と開き直る。 どうやらこの男、分かっていないようだ。 お金を払ったら許されるという浅はかな誤解。 それを正し、後悔させ、絶望させて、破滅させる必要がある。 私は法律・不動産・経営・その他、あらゆる知識を総動員して、夫を破滅に追い込む。 夫が徐々にやつれ、痩せ細り、医者から健康状態を心配されようと関係ない。 これは、一切の慈悲なく延々と夫をぶっ潰しにかかる女の物語。 最初は調子に乗って反撃を試みる夫も、最後には抵抗を諦める。 それでも私は攻撃の手を緩めず、周囲がドン引きしようと関係ない。 現代日本で不倫がどれほどの行為なのか、その身をもって思い知れ!

救助隊との色恋はご自由に。

すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。 ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。 助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・ 香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」 ほたる(消防関係の人だ・・・!) 『消防署員』には苦い思い出がある。 できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。 しまいには・・・ 「ほたるから手を引け・・!」 「あきらめない!」 「俺とヨリを戻してくれ・・!」 「・・・・好きだ。」 「俺のものになれよ。」 みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。 『俺がいるから大丈夫』 そう言ってくれるのは誰? 私はもう・・・重荷になりたくない・・・! ※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。 すずなり。

初恋の呪縛

泉南佳那
恋愛
久保朱利(くぼ あかり)27歳 アパレルメーカーのプランナー × 都築 匡(つづき きょう)27歳 デザイナー ふたりは同じ専門学校の出身。 現在も同じアパレルメーカーで働いている。 朱利と都築は男女を超えた親友同士。 回りだけでなく、本人たちもそう思っていた。 いや、思いこもうとしていた。 互いに本心を隠して。

処理中です...