親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第1章「親友に彼氏ができた」

期待外れの電話。

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「あ、公ちゃん!…もしかして、寝てた?」
「ガッツリ寝てた。何の用だよ、」

公ちゃんはあたしの声に不機嫌そうにそう言うと、電話の向こうであくびをする。
そんな公ちゃんにあたしは顔がニヤけながらも、言った。

「あのね、公ちゃんに大事な話があって…」
「話?」
「うん。実はあたしね…東北に引っ越すんだ」
「は…」

あたしが悪戯心でそう言うと、その時何故か公ちゃんの声が聞こえなくなった。

「?…ちょっと、公ちゃん?」
「…」
「公ちゃんってば、」

…あれ、もしかして、信じちゃった?
あまりにもシーンと静まり返るから、あたしは黙ったままの公ちゃんに言った。

「…嘘だよ!」
「……はぁ!?」
「東北に引っ越すなんて嘘!ね、ビックリした?ビックリした??」

あたしが笑ってそう言うと、公ちゃんがため息交じりに言う。

「おまっ…あのなぁ、嘘でもそんなと言うなよ、」
「だって、最近公ちゃん冷たいんだもん!ねぇーえー、ビックリした?」

あたしは公ちゃんにそう聞くと、尚も電話越しに気持ち悪いくらいにニヤける。
やばい…今、独りで良かった。
そう思っていたら、公ちゃんが言った。

「ビックリするに決まってんだろ。東北とか、遠すぎ」
「じゃあ、焦った?」
「焦ってねぇよ、ばーか」
「もー、素直じゃないー!」

あたしはそう言うと、そんな公ちゃんに対してケタケタ笑う。
本当、この時間が物凄く幸せ。
でも…

「…引っ越すのは、ほんとだよ」

笑いが落ち着いてきた頃、あたしは声を少し小さくして公ちゃんにそう言った。
あたしがそう言うと、公ちゃんは…

「マジで?何処に、」

そう問いかけてくる。
その問いかけに、あたしは今度は正直に言う。

「…水野くんの家」
「!…は?」
「実はね、さっき…」

あたしはそう言うと、さっきお父さんから言われたことを全て公ちゃんに話した。
そして全て話し終えると、公ちゃんが落ち着いた口調で言う。

「…そっか、そりゃ大変だな」
「ちょっと、それだけ?他に何か言うことないの?」
「だってお前…俺が何か言ったところでどうにかなるわけじゃないだろ」
「…そりゃあ…そうだけど…」

…でも、もっと何か言ってほしかったな。
『じゃあ俺んとこ来いよ』とか、『俺んとこ来いよ』とか、『俺んとこ来いよ』とか…!

「もういい!公ちゃんに言ったあたしが間違いだった!」
「は!?おいっ…」
「サヨーナラ!」
「ちょっ、待っ…」

はい、電話終了。
…公ちゃんのあほ。
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