親友の彼氏と、一つ屋根の下。

みららぐ

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第1章「親友に彼氏ができた」

一緒に断ってよ。

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******

翌朝。
あたしは夕べあれから、なんとか水野くんと一緒に住まない方法を独り考えていた。
だって歩美との友情を壊したくないし、それに何より校内で変な噂が立つと困る。
そして良い方法を思いついて教室に到着すると、あたしはそのまま水野くんの教室に向かった。

…水野くん、いるかな?
そう思って教室を覗くと…

「!」

…居た。
一番隅の窓際の席で、独り本を読んでいる水野くんの姿が…。
…話しかけづらっ!
その姿を見ると話しかけたくなくなったけど、でもこれは大事なことだから仕方ない。
あたしは独り深呼吸をすると、入り口で水野くんを呼んだ。

「水野くん!」

そしてそう呼ぶと、あたしの声に気が付いた水野くんが、ふと顔を上げてあたしを見る。
一瞬、目をぱちくりさせていたけれど、水野くんはため息交じりに「…何」と言って本に視線を戻した。

「話があるの。ちょっと来て、」
「…今本読んでるから」
「そんなの後ででもいいでしょ!」
「!」

あたしはそう言うと教室に足を踏み入れ、半ば強引に水野くんを廊下に連れ出した。
そのまま走ってきて、人気のない場所に来ると歩く足を少しずつ止めていく。
ちょっとしか走っていないのに、運動不足のせいか息切れをしていると、後ろで水野くんが呟くように言った。

「…手」
「?」

…て?

「手、離して」
「!!…あ、ご、ごめんっ」
「…」

水野くんのその言葉に、あたしは握っていた手を慌てて離す。
すると水野くんは、ここまで持ってきたらしい本を再び開いた。
…っていうか、何でわざわざ本まで持ってくんの。
あたしはそう思いながらも、水野くんに言う。

「…あ、あのさ、」
「…」
「あ、あたしが、その…水野くんの家で一緒に住むことになったのって、もちろん知ってる…よね?」

そう聞くと、水野くんは本に視線を遣ったまま「うん」とだけ返事をする。

「でもそれ、ちゃんと断ろうよ。水野くんのお父さんとかにも言っ…」
「何で?」
「え、」

あたしが途切れ途切れにそう言っていると、ふいにその話を水野くんが遮ってそう聞いてきた。
その問いかけにあたしがちょっとびっくりして水野くんを見ると、水野くんはいつのまにかあたしの方を向いていて、もう一度問いかける。

「何で断るの?」

まさかそんなふうに聞かれるとは思ってもみなかったあたしは、少し戸惑いながらも言った。

「や、だ、だってほら、あたしと水野くんって、今までほとんど話したことなかったし…。
っていうか、初めて喋ったのって昨日じゃん。それに、水野くんだって嫌でしょ?同級生と暮らすの」
「…別に」
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