聖女無双。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
4 / 11

聖女無双(ぱーとつう)

しおりを挟む
「ウルビーノ様!! 」
ウルビーノに指差されたアイシアが、ここに来て初めて声をあげた。

王太子は近くのミスティアを庇うように弟から離れる。

「ウルビーノ様。」
「なっ!? 」

ガッシ!!
指差していた腕をアイシアに掴まれる。
舞台下にいたはずのアイシアが目の前に現れていた。
彼女は肉体強化魔法を使って、一気に王子に詰め寄った。

腕を引くと王子は幼なじみの令嬢から引き離された。


「時と場所を考えろや!! ぼけ!! 」
「ごふっ!! 」

ゴッ!!
王子の腹に左手でフックを決める。体が浮き上がった処に、王子を掴んていた手を離し拳を握って、

「男気の見せ方が、間違っとるんや!! 」

ドゴッ!!
ウルビーノの左頬に『聖女の鉄槌』が炸裂した。
既に血反吐を吐いていた王子の口から、白い物が飛び散る。

ぎゅるるる!!
浮いていた体は見事に回転し飛ばされる。

ガッ!!
吹き飛んで、体を舞台の床に打つ。

ガッ!!
吹き飛んで、舞台の床に体を打つ。

ガッ、ガガガガガガッ!! 
舞台の上を体を回転させながら、打ち付け吹き飛ぶ。

ぼふん!! ぼと!!
広い舞台の端から端まで吹き飛んで、カーテンに包まて止まって落ちた。

静寂。

「きゃあああああ!! ウル!! 」
クララが悲鳴をあげた。

「「ウルビーノ様!! 」」
王子の側近が慌てて駆け寄る。
アイシアの横を通り過ぎようとした時、

「おのれら、令嬢ひとりを囲んでなにさらしとんじゃ!! 」
「いゃあああ!! プラス様!! 」
一人目の側近に『聖女の一撃』蹴りが与えられる。

「側近なら身体貼って諫めんかい!! 」
「いゃあああ!! マイナー様!! 」
回転しながらもう一人の側近にも『聖女の一撃』回し蹴りを食らわせた。

二人は見事に舞台の上をピンポン玉のように飛び跳ね、カーテンに包み込まれ落ちた。

悲鳴を上げる令嬢達にアイシアは振り向いた。見た目弱々しいアイシアの顔の目が座っている。

「ひぃ!! 」
「こ、来ないで!! 」
舞台の奥に、令嬢二人より後ろに隠れるように立つクララにアイシアはゆっくりと近づいていく。

「なに一緒に悪巧みをやっている!! 」
「モリー!! 」

パン!!
左にいる令嬢の頬を叩いた。

「友達なら止めんかい!! 」
「ロッテ!! 」

パン!!
右にいる令嬢の頬を払った。

クララに近づくにあたって、通りすがりに容赦して硬直して動けない令嬢二人に『聖女の嘆き』の平手打ちを頬にあてる。

軽い令嬢達は左右に面白いように飛んで行った。

ぱふんとカーテンにぶちあたり、すとんと落ちる。

「われ、あたしが虐めをしたって言ううかい? 」
舞台の最奥までクララを追い詰め、両手で壁ドンをする。

「あたしは聖女だよ、そんな非道なことする訳ないだろ。」
見た目ひ弱な令嬢のアイシアが、此処まで反論するとはクララは思ってもいなかった。

ウルビーノと別れさせたい、その為にちょっと悪者になって貰おうと思っただけだった。

ちょっと責めたらおどおどと謝ってきて、ウルビーノと婚約を解消できて終わりだと思っていた。

「われ、人様に冤罪をかける事がどういうことか分かっとんかい!? 」
「え、冤罪だなんて、わたしは…… 」
クララは目を逸した、まさか此処まで大事になるとは思わなかった。

「冤罪をかけられたものがどうなるか、分かっとんかい!? 」
「わ、わたしは…… 虐められたの!! 」
今更嘘だとは言えずにクララは、叫んだ。

「まだ言っとんかい、目ぇ覚ましや!! 」
『聖女の警め』頭突きが、クララに下る。

その衝撃にクララは鼻血を吹き出し、気を失った。

次の瞬間、覚醒する。

「ごめんなさい!! わたしは嘘をついていました!! ウル様とアイシア様を別れさせたくて!! 」
クララは鼻水を垂らしながら懺悔する。

「すみません!! 友達だからと力になりたかったの、でも止めるできでしたわ!! 」
飛ばされた令嬢が謝りを入れる。

「許してください、冤罪をかけました!! 」
令嬢が頭を舞台に擦りつけた。


「なんてことだ、彼女達の言葉を鵜呑みにして調べませんでした!! 」
一人の側近が、自らの失態を告白する。

「一人の令嬢をみんなで囲うなんて、側近としても男としても最低でした!! 」
一人の側近が自らの行いを顧みる。

「悪いのは俺だ!! 婚約をした後にクララへの気持ちが分かったのに、アイシア君を悪者にして婚約を解消しようとしたんだ!! 」
ウルビーノ王子は床に両手をついた。
 
「君は道理を通せと言ってくれていたのに。こんなに大袈裟にして、悪かった!! 」
ウルビーノ王子は真実を話した。

「「「ごめんなさい!! 」」」
「「「許してください!! 」」」
三人三様、同じように土下座をしてアイシアに謝罪をした。

彼らに怪我はない、アイシアが瞬時に回復魔法で治したからだ。


「アイシア…… 」
心配そうに義妹に声をかけるミスティア、その声にアイシアは振り向いた。

「お義姉さま……… 」
そして、アイシアはぎこちないカーテシーを舞台の客席? に向ける。

「卒業生の皆様。私事で、お騷がわせいたしました。皆様の未来のために祈らせてもらいます。」
アイシアは目を閉じ、祈りを捧げた。

きらきらと、卒業生達の頭上から優しい『聖女の慈愛』が降り注ぐ。

タイミングよく、舞台のカーテンがバサリと降りた。まるでひと芝居が終わったように。

「「「「うおおおーーーー!! 」」」」
卒業生は立ち上がり、拍手喝采を贈った。

「アンコール!! 」

「アンコール!! 」

「アンコール!! 」

アンコールが会場内に響き渡った。



舞台裏では。

「アイシア、言葉遣いとカーテシーの再教育をしましょうね。」
「いゃ~ぁん、流石お義姉さま。」
ミスティアによるアイシアの礼儀作法の再教育が決まった。





【ぱーとつう、完】



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

黒の聖女、白の聖女に復讐したい

夜桜
恋愛
婚約破棄だ。 その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。 黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。 だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。 だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。 ※イラストは登場人物の『アインス』です

もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。 親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。 辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。 ——————————— 本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。 更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。 誤字・脱字をコメントで教えてくださると、幸いです。 読みにくい箇所は、何話の修正か記載を同時にお願い致しますm(_ _)m  …(2025/03/15)… ※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討しています。 ※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。 ※40話にて、近況報告あり。 ※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。

【完結】何やってるんですか!って婚約者と過ごしているだけですが。どなたですか?

BBやっこ
恋愛
学園生活において勉学は大事だ。ここは女神を奉る神学校であるからして、風紀が乱れる事は厳しい。 しかし、貴族の学園での過ごし方とは。婚約相手を探し、親交を深める時期でもある。 私は婚約者とは1学年上であり、学科も異なる。会える時間が限定されているのは寂しが。 その分甘えると思えば、それも学園生活の醍醐味。 そう、女神様を敬っているけど、信仰を深めるために学園で過ごしているわけではないのよ? そこに聖女科の女子学生が。知らない子、よね?

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...