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婚約破棄。(第三王子)
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それは卒業式で起こった。
卒業生代表であるアルフィノ王太子は演台を前に卒業生達に別れの訓示を述べていた。制服の紺のブレザーが王太子の凛々しさを引き立てていた。
「おれ、ウルビーノ・フォン・ブックスは『偽りの聖女』であるアイシア・フォンノートンとの婚約を破棄する!! 」
学園の卒業式で、まったく関係ない下級生の王子ウルビーノ第三王子が舞台袖から現れ突然婚約破棄を宣言した。
卒業生である王太子のアルフィノとその婚約者であるミスティア公爵令嬢は、その突然の暴挙に舞台の上で呆然とした。
「おれは、お前などと婚姻はしない!! 」
金髪碧眼の兄の王太子を幼くした感じのウルビーノは、舞台したの端の方に立ち尽くす柔らかい茶髪のアイシアを指差した。アイシアの茶色の瞳が見開かれた。
「何を言っているんだ!? ウルビーノ。」
「兄上だって、こいつが嫌で婚約をしなかったんだろ!! 」
「それは違うぞ、ウルビーノ!! 」
王太子のアルフィノが、指を差す腕を叩いて弟を咎める。
「お前は、おれの幼なじみでもあるクララを虐めていたそうだな!! 」
横にいるフワリとした金髪の令嬢の肩を抱き寄せた。その令嬢の緑色の瞳がアイシアを見る。
「そうですわ、アイシア様は『聖女』と言う名を使ってクララ様を虐めていました。」
「私達が証人です。」
二人の令嬢が、舞台の袖から現れ証言をする。
「王太子殿下、虐めをする者は『聖女』として相応しくありません。」
「むろん、ウルビーノ王子殿下の婚約者としても相応しくありません!! 」
王子の二人の側近も話に加わった。
「おれは醜い心のお前を『聖女』とは認めない!! 婚姻などしてたまるか!! 」
「やめろ!! ウルビーノ!! 」
大声で叫ぶ弟を王太子は、叱咤する。
「誤解ですわ、ウルビーノ殿下。アイシアが虐めをするなんて、ありえません。」
白銀の髪を揺らしながらミスティアが義妹を庇う。
「『聖女』が偽りだとノートン公爵家も困るからそう言ってるんだろ!? 」
「いい加減にしないか、ウルビーノ!! 」
ミスティアにまで、指を差して抗議をする弟に王太子は演台を叩いて黙らせる。
卒業生達は、舞台上で繰り広げられる喜劇を呆然と見ていた。
「わ、わたしは、虐められてましたアイシア様に…… ウル様に近すぎると、ちゃんと道理を通せと言われたのです。」
「そうですわ。ウルビーノ殿下に近づくなど、クララ様に言ってましたわ。」
「愛称呼びも、ダメだと言ってましたわ。二人は幼なじみなのに。」
クララの言葉に続くように二人の令嬢も言葉を告げる。
「王太子様も知っているように、ウルビーノ殿下とクララ伯爵令嬢は幼い頃から仲の良い関係なのです。」
「それを引き離そうとするとは、なんて残酷な。『聖女』とは名ばかりの悪女です。」
王子の側近も二人を引き裂くアイシアを悪く言い放つ。
「お前たちは何を言っているんだ? ウルビーノ、父上はお前に好いている者や気にかかる者はいるかと聴いたはずだ。お前は、特に誰もいないと答えた。だから、アイシア殿との婚約を仰せつかったはずだ。忘れたのか? 」
国王は『聖女の警め』を考慮して、婚約者のいない第三王子に話を振った。その時に、好きな者や気になる者がいないかを確認して『聖女』の婚約者に選んでいた。
「あの時は、あの時です。こいつが性悪の悪女だと分かっていたから兄上だって婚約をしなかったんでしょう!! 」
「違いますわ、アイシアはわたくし達の為を思って身を引いてくれたんです。」
義妹を悪く言い放つウルビーノに、ミスティアは真実を有り体に話す。
「うるさい!! こいつはおれとクララを引き離そうとしているんだ!! おれは、こいつと婚約を破棄してクララと新たに婚約をするつもりだ!! 」
クララを肩を抱き、王子は舞台上から響き渡るような大声で叫んだ。
卒業生代表であるアルフィノ王太子は演台を前に卒業生達に別れの訓示を述べていた。制服の紺のブレザーが王太子の凛々しさを引き立てていた。
「おれ、ウルビーノ・フォン・ブックスは『偽りの聖女』であるアイシア・フォンノートンとの婚約を破棄する!! 」
学園の卒業式で、まったく関係ない下級生の王子ウルビーノ第三王子が舞台袖から現れ突然婚約破棄を宣言した。
卒業生である王太子のアルフィノとその婚約者であるミスティア公爵令嬢は、その突然の暴挙に舞台の上で呆然とした。
「おれは、お前などと婚姻はしない!! 」
金髪碧眼の兄の王太子を幼くした感じのウルビーノは、舞台したの端の方に立ち尽くす柔らかい茶髪のアイシアを指差した。アイシアの茶色の瞳が見開かれた。
「何を言っているんだ!? ウルビーノ。」
「兄上だって、こいつが嫌で婚約をしなかったんだろ!! 」
「それは違うぞ、ウルビーノ!! 」
王太子のアルフィノが、指を差す腕を叩いて弟を咎める。
「お前は、おれの幼なじみでもあるクララを虐めていたそうだな!! 」
横にいるフワリとした金髪の令嬢の肩を抱き寄せた。その令嬢の緑色の瞳がアイシアを見る。
「そうですわ、アイシア様は『聖女』と言う名を使ってクララ様を虐めていました。」
「私達が証人です。」
二人の令嬢が、舞台の袖から現れ証言をする。
「王太子殿下、虐めをする者は『聖女』として相応しくありません。」
「むろん、ウルビーノ王子殿下の婚約者としても相応しくありません!! 」
王子の二人の側近も話に加わった。
「おれは醜い心のお前を『聖女』とは認めない!! 婚姻などしてたまるか!! 」
「やめろ!! ウルビーノ!! 」
大声で叫ぶ弟を王太子は、叱咤する。
「誤解ですわ、ウルビーノ殿下。アイシアが虐めをするなんて、ありえません。」
白銀の髪を揺らしながらミスティアが義妹を庇う。
「『聖女』が偽りだとノートン公爵家も困るからそう言ってるんだろ!? 」
「いい加減にしないか、ウルビーノ!! 」
ミスティアにまで、指を差して抗議をする弟に王太子は演台を叩いて黙らせる。
卒業生達は、舞台上で繰り広げられる喜劇を呆然と見ていた。
「わ、わたしは、虐められてましたアイシア様に…… ウル様に近すぎると、ちゃんと道理を通せと言われたのです。」
「そうですわ。ウルビーノ殿下に近づくなど、クララ様に言ってましたわ。」
「愛称呼びも、ダメだと言ってましたわ。二人は幼なじみなのに。」
クララの言葉に続くように二人の令嬢も言葉を告げる。
「王太子様も知っているように、ウルビーノ殿下とクララ伯爵令嬢は幼い頃から仲の良い関係なのです。」
「それを引き離そうとするとは、なんて残酷な。『聖女』とは名ばかりの悪女です。」
王子の側近も二人を引き裂くアイシアを悪く言い放つ。
「お前たちは何を言っているんだ? ウルビーノ、父上はお前に好いている者や気にかかる者はいるかと聴いたはずだ。お前は、特に誰もいないと答えた。だから、アイシア殿との婚約を仰せつかったはずだ。忘れたのか? 」
国王は『聖女の警め』を考慮して、婚約者のいない第三王子に話を振った。その時に、好きな者や気になる者がいないかを確認して『聖女』の婚約者に選んでいた。
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「違いますわ、アイシアはわたくし達の為を思って身を引いてくれたんです。」
義妹を悪く言い放つウルビーノに、ミスティアは真実を有り体に話す。
「うるさい!! こいつはおれとクララを引き離そうとしているんだ!! おれは、こいつと婚約を破棄してクララと新たに婚約をするつもりだ!! 」
クララを肩を抱き、王子は舞台上から響き渡るような大声で叫んだ。
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