死に戻った逆行皇女は中継ぎ皇帝を目指します!~四度目の人生、今度こそ生き延びてみせます~

Na20

文字の大きさ
上 下
28 / 30

28

しおりを挟む

 それからすぐに第一皇妃が宰相の名前を口に出したので騎士団に捕縛命令を出した。父と母は無事解毒に成功したが絶対安静で休んでいる。お姉様も気絶したまま、双子はまだ幼いので私が指揮を執っている。ちなみに兄は十八歳になると同時に婚約者である侯爵令嬢と結婚し、さっさと臣籍に下っていったためすでにもう皇族の籍からは抜けている。だから動けるのは私しかいないのだ。

 そして捕らえられた宰相はすでに正気ではなかった。


「あっはははは!皇帝と皇后は死んだっ!これで私の血を引く子が皇帝にっ、この国の頂点に立つのだっ!あとは息子とマリアンヌ皇女との間に子が生まれればっ!あぁそうだった!まだ邪魔な皇子と皇女がいたな!あいつらにも毒を…!な、なにをするっ!うー!うー!」

「申し訳ございません」

「いえ構わないわ」


 宰相に猿ぐつわをして静かにさせた。騎士団長は申し訳なさそうに謝ってきたが正気ではない者が相手なのだ。仕方がない。


「とりあえず落ち着くまでは取り調べは難しいでしょうから、騎士団はロイガール公爵邸とバスピア侯爵家を捜索して。それとロイガール公爵子息とバスピア侯爵も見つけ次第捕縛しなさい」

「はっ!」

「あとマリアンヌお姉様の部屋には誰も通さないように騎士たちに通達して」

「かしこまりました」


 そこからはあっという間だった。
 すぐにロイガール公爵子息とバスピア侯爵は捕まった。どうやら皇帝と皇后に毒を盛った事件は宰相の独断だったようで、なぜ自分達まで捕まるのかと騒いでいた。だが今回のことだけではなく宰相の計画に荷担していたことは明らかで、そこを突けばボロボロと知っていることを話し始めた。おそらく素直にしゃべれば罪が軽くなると思ったのだろう。そんなはずないがあえてそのことには触れず取り調べを行っていった。

 第一皇妃の取り調べでは、


「私はあの酒に毒が入っているなんて知らなかったのよ!宰相からは下剤が入っているだけとしか聞いてないもの!最近ちょっとイライラしてたから面白いものが見れると思っただけなの!だから私も宰相に騙された一人なのよ!分かったなら早くここから出してっ!」


 知らなかったとしてもさすがに皇帝と皇后に毒を盛った張本人であるため貴族牢ではなく地下牢に収容されている。おそらく二度とここから出られることはないだろう。
 それと娘であるマリアンヌお姉様も皇帝の後継の座を剥奪された。さらに今回のことは知らなかったにせよ宰相の計画自体は知っていたのに止めもせず、国の危機を招いたとして皇族の籍から抜かれ規律の厳しい修道院へと送られた。修道院があるのは痩せた土地で、そこでは毎年亡くなる人が後を断たないとか。
 バスピア侯爵家は取り潰しとなり、バスピア侯爵自身は毒杯を賜った。
 お兄様も取り調べに応じたがすでに臣籍降下して皇族の籍を抜けていること、宰相の計画に荷担していなかったことが証明され罰されることはなかった。お兄様は賢い人だったから幼い頃から宰相たちとの関わりを断ち、さっさと皇室から出ていったのだと私は思った。

 そして元宰相であるロイガール公爵と公爵子息は反逆の罪で公開処刑される予定だ。敵国と密かに通じ、さらには皇帝と皇后を殺そうとしたのだ。最終的にはお姉様と公爵子息の子を皇帝にして実権は公爵が握るつもりだったようだ。実際には未遂であるがそのような企てをした時点で大罪だ。それもこの国の中心にいた宰相ともなればさらに罪は重い。ロイガール公爵家もバスピア侯爵家と同じく取り潰され、公爵家の血を引く者は幼いこどもを除き全員が毒杯を賜ったのであった。


 その後無事に回復した父と母と話し合い、私の十八歳の誕生日に合わせて父は退位し私が新たに即位することが決まった。
 レイとリーナはまだ七歳。どちらが皇帝になるにしても成人を迎える十八歳まではまだ十年以上ある。二人が無事に十八歳を迎えるまでこの国を今よりも平和で豊かな国にしていくのが私の中継ぎの皇帝としての務めだ。
 ただ即位後最初の大きな仕事は公開処刑という重いものになるだろう。だけどこの仕事を全うした時、私のやり直しの人生は終わりを迎える。その後は私もまだ知らない世界が待っているのだ。




 アンゼリーヌが皇帝の座に即位してからわずか三日後、城の前にある広場で大罪人の公開処刑が行われた。


「――これより刑を執行する!…執行せよ!」


 皇帝の声に合わせ刃が罪人の首に落ちた。



 ――ウワァァァァ!


「…これで終わったわ」


 皇帝の呟きは国民から上がる歓声に掻き消され、誰の耳にも届くことはなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。

Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。 彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。 どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...