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しおりを挟む順調に成長していく双子とは正反対に宰相の力は徐々に衰えていった。父も母も宰相が黒だということは分かっているがあえて近くに置いている。もう信用など底辺であるが。
父と母が私の話を信じてくれたことと、やはり宰相の紹介で母の専属医者だったものが捕まったことにより、宰相への絶対的な信頼を崩すことができたのだ。そもそも宰相の計画は父と母に信頼されていることが前提だ。それが少しでも崩れてしまえば計画が頓挫するのは当然のこと。それに未来を知っている私がいる。だから少しずつ宰相の力を削いでいったのだ。それにバスピア侯爵はただ過去の栄光が忘れられないだけの遺物で、策を弄するような頭は持ち合わせていないことは分かっている。だから宰相と念のため第一皇妃の動向を押さえていれば私たちに被害が出ることはなかった。
そう考えると信頼や信用とは絶対的な味方であれば心強いものであるが、そうでなければ時には目を曇らせてしまう恐ろしいものだと思った。
一度目から三度目では父と母に毒を盛り続け衰弱させていたが、四度目の今回は城で使える駒がもういないようで父と母は無事だ。
そしてとうとう後のなくなった宰相は直接皇帝と皇后を狙った。おそらくこの時の宰相は追い込まれ正常な判断ができなくなっていたのだろう。
皇族同士の交流を図るために二月に一度行われる晩餐会の場で事件は起きた。この日はめずらしく第一皇妃が手土産と称し酒を持参したのだ。まぁこの時点ですでに怪しい。しかもその酒をお姉様も私も飲める年齢であるのに父と母だけに出すように指示したのだ。これはどう考えても毒だ。まさかこのような場でことを起こそうとするなど思ってもいなかった。しかし第一皇妃はこの酒が毒入りだと分かっているのだろうかとの疑問は残るもののこの場をどうするべきかと考えていると、父が私に視線を寄越し軽く頷いたのだ。私は父の意図を理解した。父は毒を飲むつもりだ。おそらく母もだろう。そして宰相たちを一気に捕まえるつもりだ。私はチラリとクリスを見る。念のためにとクリスをこの場に連れてきていてよかった。父はクリスがいるからとそんな危険なことをしようとしているのだ。これは無事に終わった後にはお説教が必要だろう。クリスも状況を理解したようで軽く頷いた。あとは時間との勝負だ。
「こちらは大変貴重なお酒なんですのよ。さぁガルトン様、オルレシア様。どうぞお飲みくださいな」
「うむ、ではいただこう」
「ええ、いただくわね」
――ゴクッ
二人は同時にグラスを傾け一口口にした。そして次の瞬間口から血を吐いた。
「げほっ…」
「うっ…」
「…え?」
「クリス!」
――ガシャーン
「解毒!」
父と母の手からグラスが落ちて割れるのとクリスが魔法を発動するのはほぼ同時であった。私は魔法が発動したことを確認し叫んだ。
「衛兵!第一皇妃様を捕らえなさい!」
「「お父様お母様っ!」」
レイとリーナは父と母に駆け寄り、
「キャー!っ……」
何も知らなかったであろうお姉様は悲鳴をあげてそのまま気絶し、
「下剤が入っているだけじゃなかったの…?」
第一皇妃は衛兵に捕らえられながらぶつぶつと何かを呟き、その場で呆然としていたのだった。
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