死に戻った逆行皇女は中継ぎ皇帝を目指します!~四度目の人生、今度こそ生き延びてみせます~

Na20

文字の大きさ
10 / 30

10

しおりを挟む

 ――チュンチュン


 小鳥のさえずりが聞こえる。なんて心地いいんだろう。こんな時はあともう少し寝ていたい…


「……ゼリーヌ様!アンゼリーヌ様!」

「うぅん…あとちょっとだけ…」

「起きてください!今日はアンゼリーヌ様の十歳のお誕生日なんですよ!準備することがたくさんあるんですからね!」

「うーん?十歳…誕生日……っ!…ケイト?」

「はい、ケイトでございますよ」

「…また戻ってこられたのね」


 どうやら無事に十歳の誕生日に戻ってこられたようだ。


「アンゼリーヌ様どうかされましたか?」

「な、何でもないわ。おはよう、ケイト」

「おはようございます、アンゼリーヌ様。十歳のお誕生日おめでとうございます」

「ありがとう」

「今日の生誕パーティーは盛大なものになるでしょうね。ああ、そうでした。アンゼリーヌ様、パーティーの前に国王陛下から大切なお話があるそうです。しっかりと準備いたしましょうね」

「ええ、お願いね」


 そうして準備が終わり、私の姿を見たケイトが感慨深い声で言う。


「本当にアンゼリーヌ様も大きくなりましたね。アンゼリーヌ様の立派なお姿を見ることができてケイトは嬉しゅうございます」


 時には厳しく時には優しく私を見守ってきてくれたケイト。今度は私がケイトを守る番だ。


 (…ケイト、あなたを必ず守るからね)


「さぁ出来ましたよ。それでは皇帝陛下の元に参りましょう」

「ええ、分かったわ」


 そして部屋を出るとやはり扉の前にはクリスが立っていた。


「おはよう、クリス」

「おはようございます、アンゼリーヌ様」


 (よかった、また会えたわ…)


 今回も無事にクリスに会うことができてホッとした。しかし三度目のあの後、クリスがどうなったのかは気になるが知る術はない。


 (本音を言えば前回のことは気になるけど、今は気にしている時間はないわ。私はやれることを全力でやらなければ)


「お誕生日おめでとうございます」

「どうもありがとう。クリスに祝ってもらえてすごく嬉しいわ」

「アンゼリーヌ様…」


 クリスはふいっと顔を横に背けてしまったが照れているのだろう。ほんのりと頬が赤い。


「ふふっ、それじゃあ行きましょう」


 私はクリスとケイトを連れて謁見の間へと向かう。謁見の間の前に着き、扉の前に立つ騎士に声をかけた。


「皇帝陛下に取り次ぎを」

「かしこまりました。…アンゼリーヌ第二皇女様がお見えになりました!」

『通せ』

「はっ!…第二皇女様どうぞお入りください。侍女と従者の方はこちらでお待ちください」

「では行ってくるわ」

「私たちはこちらでお待ちしておりますね」

「待ってます」

「二人ともありがとう」


 このやり取りも四度目なのでもう慣れたものだ。私は謁見の間の扉をくぐり父の待つ玉座へと歩みを進める。玉座には父と母が座っており私を出迎えてくれた。


 (お父様、お母様…)


 前回の姉の話しぶりから想像するに父と母は一度目も二度目も私が死ぬ頃にはすでに姉たちの手に掛かり毒に侵されていたのだろう。それに母に関しては今も何かしらの毒物を摂取させられている可能性がある。


 (母に、それも皇后陛下に毒を盛るなんて許せないわ。今回こそは絶体に阻止しなければ!)


 私は父と母の元気な姿を見て改めて決意を固くした。


「アンゼリーヌよく来たな」

「アンゼリーヌ、十歳の誕生日おめでとう」

「皇帝陛下と皇后陛下にご挨拶申し上げます」

「ははっ、そんなに畏まらなくてよい。ここには私たちしかいないからな」


 この謁見の間にいるのは毎回同じだ。父と母と宰相と私の四人である。私は宰相を盗み見る。人当たりの良さそうな顔をしているが裏の顔は醜悪そのもの。私たちは表の顔にすっかり騙されていたのだ。


 (私はもう騙されないわ。でもそれを宰相に気づかれてはダメ)


 私も表の顔と裏の顔を使い分けなければならない。それくらいできないようでは皇帝の座は手に入らないだろう。


「ありがとうございます」

「本当に立派になったな」

「ええ。アンゼリーヌがもう十歳だなんて時が経つのは早いわね」


 そして今回も他愛のない会話が終わり本題へと話題が移った。


「アンゼリーヌ」

「はいお父様」

「ここからは父としてではなくこの国の皇帝として話をする」

「かしこまりました」


 私は父から四度目の説明を受けた。兄と姉は今回も同じ選択をしたようだ。


「では選択肢を伝える。よく考えて答えを出すように」

「はい」

「一つ目は帝国内の有力貴族との婚姻、二つ目は他国への嫁入り、そして三つ目は私の後を継ぐことだ」


 詳しい説明を聞き私は今までのことを思い出す。
 一度目は他国への嫁入りの道を選び死んだ。
 二度目はカイン・エグラント侯爵子息との婚姻を選び死んだ。
 そして三度目はユリウス・ロイガール公爵子息との婚姻を選び死んだ。

 一つ目と二つ目の道を選んでも十八歳で死んでしまう。私はもう死にたくない。それに十八歳より先の人生を大切な人たちと生きていきたい。だから私は選ぶのだ。


「皇帝陛下」

「決まったか?」

「はい」

「よく考えて決めたのだな?」

「そうです」

「ではアンゼリーヌ。お前はどの道を選ぶのだ?」

「私は……皇帝陛下の後を継ぎます!」


 私の四度目の人生の進む道が決まった瞬間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。

aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……

『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします

卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。 ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。 泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。 「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」 グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。 敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。 二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。 これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。 (ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中) もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

処理中です...