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11.彼氏ですか? 違いますか?

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 職場復帰して10日経つ。

 未だ、彼氏が名乗り出てこない。
 そのことに不満はあっても不思議ではなかった。職場恋愛でしかも男同士。オープンに出来ずに当然だ。


 だが、そっちは都合の良い時に会うくらいでいいのかもしれないが、熟れた俺の身体はソロ活では到底満足できない。

 待っていても来ないと分かった俺は彼氏調査に本腰をあげた。

 彼氏捜索隊だ……なんて心の中で言ってめげそうになるが、改めて名簿帳を見返す。


 まず、新入団員は、経理や事務所、別部署も入れると全員で12名だ。そのうち女性5名。

 7名の男共は名簿帳を確認の上、話しかけた。

 5名は同じ部署。他部署には2人。
 他部署の2人は、一人は既婚、もう一人は肌が白っぽくフヨフヨした体型から違うとする。

 同じ部署の5名も少ない人数なのであっさりと対象は絞れた。
 トムは違う。カイザもあの身体付きではチンコはデカくないだろう。
 残る二人だが、トイレで爽やかに流し見してチェック済だ。両方違った。
 スンとなる前に素早く対応した。この件に関してはトム先生には感謝している。






「団長からご飯誘って頂けるなんて、本当に光栄です」

 先程、報告に来たミフェルを捕まえて昼食を誘ったのだ。
 飯を誘うと言っても、職場の食堂。
 近くに旨い飯屋なんてものはなく、誘うにしてもここしかない。

 いつもの場所で、A、B、Cのセットのメニューしかないが、ミフェルは誘いに喜んで応じてくれた。
 彼は、いつも誰かに誘われて昼食を摂っているイメージだ。例えば、彼の後ろに座る奴ら。
 チラチラと羨ましそうに俺を睨んでいる。

「先約いたんじゃないのか? 誘って悪かったな」

「いえ、約束はしていません。それより団長こそ、いつもお一人か、たまに副団長といるかのどちらかなのに、俺がご一緒してよろしいのでしょうか?」


 ミフェルの言う通り、俺は割とプライベートは一人でいたいタイプだ。
 大勢が嫌いなのではなく、息抜きには一人になりたい。副団長は打ち合わせが長引いて一緒にいるというだけ。

「まぁ、たまには部下との親交を深めようかと思ってな」


 本当の理由は、ミフェルが俺の彼氏だと疑っているからだけど。

 デカチンを見せて触らせ、さらに俺のチンコを触っていいかと尋ねる一連の行動。
 そして体躯がよく運動神経も良。ガタイの良いオッサンを相手出来るだけの持久力もあるとみた。


 ミフェルの他にも彼氏っぽい人はいるかもしれないと調査を進めたが、結局いなかった。
 条件だけみればミフェルで確定だが、何かもう少し決め手が欲しい。


 ────この半年間、お前は俺の部屋に何度か泊ったことはあるか?

 聞くのは、それだけでいい。
 上司の家で寝泊まりする部下なんて滅多にいないだろう。仮になんらかの状況で泊っていてもはずだ。


「それで、俺に用ってなんですか?」
「……」

 うーん。

 それがだ、たったそれだけのことが、何故か言い出しにくい。


 本当にミフェルが彼氏だったらどうしようと悩むのだ。
 欲求不満を解消させるために、でかチンを俺に突っ込んで気持ちよくしてくれよ……それをミフェルに言うのか。想像が苦しい。

 ただ、酷い内容の誘い文句を除いても、どうも乗り気にならない。言わなくちゃ欲求不満のままだというのに。

「……食べている内に忘れてしまった。思い出したら言うわ!」


 結局意気地がない。言えない。
 だが、誰にでも優しいミフェルは、そんな俺にも優しかった。

「そうですか。用件がなくともダリア団長からの誘いなら、いつでも嬉しいです」

「はは……、それはどうも。なんか照れるな」

 甘い雰囲気にモゾモゾと身体が痒くなる。
 
 こんな見目がよく、さらに伯爵家の次男ときた。何でも器用にこなして、えばったりもしない。誰からも好かれる理由がよく分かる。
 こういう奴は、死ぬまでずっと無難に暮らせるのだろうなと思う。


「……食事一緒に出来てよかったよ」

「え? もう? 食後に飲み物でも」


 ミフェルの横にチャリンと昼食と飲み物分のコインを置いて、手をヒラヒラ横に振って、その場を離れた。






 食堂から中庭に出て、大股で歩いていると、一話の鳥がピピピ……と空を飛んだ。
青空に羽ばたく鳥が向かったのを視線で追うと、二階窓際に座っているカイザの肩に止まった。

 野生の鳥が……。
 その光景を見た時、前にもこういうことがあったと思い出す。
 怪我をしたモンスターを保護して、俺にも誰にも心を許さず警戒して、食事を食べようとしなかった。
 だけど、カイザが食べ物を手渡したら、素直に食べ始めた。

「『モンスターとのハーフだから、好かれるのか?』」

 この半年間の記憶だ。
 彼氏のこと以外で、はじめて少し思い出せた。

 あの時、俺はカイザのことを羨ましく思ったっけ。それがきっかけでカイザに興味を持ったんだ。

 二階窓際にいるカイザが肩に止まった鳥を撫でた。
 その視線は柔らかい。 
 見たことがない顔……?

 鳥が飛び立つと、彼の視線がゆっくり下を向いた。中庭にいた俺の存在に気が付いたようた。
 ぼんやり見ていたことが恥ずかしくて手を挙げると、カイザの表情が固くなり、さっと室内に入ってしまった。

「────……お、おい」

 手を挙げた俺が淋しいじゃん。
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