記憶を失った半年間で俺の身に何が起きた!? ~俺の彼氏は調査団の中にいる!?~

モト

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12.誘い

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 アイツ、露骨に無視しやがった。

 挙げた手が虚しく、それを誤魔化すために頭に手をおいた。
 残りの休憩時間をどう過ごそうか考えていたところ、ミフェルが追いかけて来た。
 追いかけて来たというより、行く方向が同じなのかもしれん。 
 
 ミフェルは俺の前で立ち止ると、露骨に溜息をつく。


「はぁ~、相変わらず、ツレナイです。他の方々は最近の若者はなんて説教しますよ。団長もそうして部下とのコミュニケーションとって下さい」

「はは。お前もジョークなんて言うんだな。……ん?」
「お返しします」

 ミフェルは俺の手を握った。手のひらをくるりと上に向け、さっき渡したコインを置く。食事はご馳走になりましたと律儀なお礼つき。

「お? 飲み物飲まなかったのか」
「団長と一緒に飲みたいと思っただけです」

「そうか。それはすまん。申し訳ないついでにこのコインも貰ってくれていいんだぞ。まぁ大した金額じゃないけど」

 安月給だからなーっと笑ったが、ミフェルは妙に真剣な顔をしている。

「どうした?」
「……では、仕事終わりに食事でもどうですか? オススメの店があるんです」

「へ?」

 へっと声を上げて驚いたが────……、おかしくないことだ。
 ミフェルが俺の彼氏なら。
 むしろ、とうとう誘いがきたかとなのか……?

 そう考える時点で、面倒くさい気持ちが大きい。


「……あ~……、そのだな、仕事終わりに上司と付き合うのって面倒くさくないか?」
「いいえ、全く」

 握られた手がググッと力が強まった。 
 俺は頑丈なのでそんな風に力を込められても平気だが、ミフェルはどこか焦っているようにも見える。

 ……恋人なのに俺がこんな態度だからか? 心配している? 


「──……分かった。ちゃんと話をきくよ」

 彼が焦っているのは、自分のせいだと思い、中庭の外れに連れて行く。そこには二人隠れるほど、大きな木があった。
 木陰が丁度涼しくていいななんて笑いかけた。

「誘ったのはこっちだって言うのに、なんか悪いな」

 話をしようかと言うと、ミフェルがジッと俺を見つめる。
 そういえば、夢の中でセックスしている時、アイツもやたらと俺の様子をジッとみていたな。
 どこがいいのか、探られて暴かれて……。

 いや、アイツって何。俺の彼氏はミフェルしかいないだろ。


「今度は……」

 黙っていたミフェルが、口元を緩ませてボソリと話した。その声が自分の耳に届かなくて、頭を掻く。

「あー、すまん。記憶がないんだ。言いたい事ははっきり言ってくれ」

「記憶なんて戻らなければいいと思っています」

「は?」
 訳が分からない。もう一度聞こうと顔を寄せて聞き返した時だ、彼の唇が俺の唇に引っ付いた。

「むっ……お」

 ちゅ……。

 ちゅって、おいおい……なんてことだキスしてんじゃん。


 驚いている間に身体を抱き寄せられる。
 強く抱きしめられて、強引に唇を割られて舌が入ってくる。図体のデカい俺をなんなく抱き寄せる力強さ。

 確かにこれくらいの力がなくては、俺の相手はつとまらないだろう。

「……お、……い」

 だが、こんな場所でキスなんぞする気はなく、ミフェルの身体を押し返そうとした。だが、簡単には離れず、口の中に入った舌が自分の舌に絡みつきキスがもっと深まる。

「っ」

 ……コイツ、キス上手い。
 何をやらせても卒なくこなす男は、キスも平均点上というところか。だからって職場でどうこうする気は到底ないっての……。

 今度は肩を掴んで思いっきり、彼の身体をひっぺかした。

 若さゆえの暴走か。ため息交じりに注意しようと思っていると、彼の手が俺の尻を掴んだ。

「ひぅんっ!?」

 グニグニと尻の膨らみを掴まれて、その刺激にビクンを身体が竦んだ。

「んんんっんはっ!」

 自分のぐぐもった声にハッとして、ミフェルから急いで距離を取った。
 はぁはぁと睨むと、ミフェルは笑った。

「ふふ、団長感度いいですね」
「お前っ……、職場で何しているんだよ。人の目を気にしろよ」

「職場じゃなければいいんですか」

「は……いや」

 いや……。
 ミフェルが大股で一歩近づいてきて、耳元で囁いた。


 今夜、お宅にお邪魔します。

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