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12.誘い
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アイツ、露骨に無視しやがった。
挙げた手が虚しく、それを誤魔化すために頭に手をおいた。
残りの休憩時間をどう過ごそうか考えていたところ、ミフェルが追いかけて来た。
追いかけて来たというより、行く方向が同じなのかもしれん。
ミフェルは俺の前で立ち止ると、露骨に溜息をつく。
「はぁ~、相変わらず、ツレナイです。他の方々は最近の若者はなんて説教しますよ。団長もそうして部下とのコミュニケーションとって下さい」
「はは。お前もジョークなんて言うんだな。……ん?」
「お返しします」
ミフェルは俺の手を握った。手のひらをくるりと上に向け、さっき渡したコインを置く。食事はご馳走になりましたと律儀なお礼つき。
「お? 飲み物飲まなかったのか」
「団長と一緒に飲みたいと思っただけです」
「そうか。それはすまん。申し訳ないついでにこのコインも貰ってくれていいんだぞ。まぁ大した金額じゃないけど」
安月給だからなーっと笑ったが、ミフェルは妙に真剣な顔をしている。
「どうした?」
「……では、仕事終わりに食事でもどうですか? オススメの店があるんです」
「へ?」
へっと声を上げて驚いたが────……、おかしくないことだ。
ミフェルが俺の彼氏なら。
むしろ、とうとう誘いがきたかと喜ぶべきなのか……?
そう考える時点で、面倒くさい気持ちが大きい。
「……あ~……、そのだな、仕事終わりに上司と付き合うのって面倒くさくないか?」
「いいえ、全く」
握られた手がググッと力が強まった。
俺は頑丈なのでそんな風に力を込められても平気だが、ミフェルはどこか焦っているようにも見える。
……恋人なのに俺がこんな態度だからか? 心配している?
「──……分かった。ちゃんと話をきくよ」
彼が焦っているのは、自分のせいだと思い、中庭の外れに連れて行く。そこには二人隠れるほど、大きな木があった。
木陰が丁度涼しくていいななんて笑いかけた。
「誘ったのはこっちだって言うのに、なんか悪いな」
話をしようかと言うと、ミフェルがジッと俺を見つめる。
そういえば、夢の中でセックスしている時、アイツもやたらと俺の様子をジッとみていたな。
どこがいいのか、探られて暴かれて……。
いや、アイツって何。俺の彼氏はミフェルしかいないだろ。
「今度は……」
黙っていたミフェルが、口元を緩ませてボソリと話した。その声が自分の耳に届かなくて、頭を掻く。
「あー、すまん。記憶がないんだ。言いたい事ははっきり言ってくれ」
「記憶なんて戻らなければいいと思っています」
「は?」
訳が分からない。もう一度聞こうと顔を寄せて聞き返した時だ、彼の唇が俺の唇に引っ付いた。
「むっ……お」
ちゅ……。
ちゅって、おいおい……なんてことだキスしてんじゃん。
驚いている間に身体を抱き寄せられる。
強く抱きしめられて、強引に唇を割られて舌が入ってくる。図体のデカい俺をなんなく抱き寄せる力強さ。
確かにこれくらいの力がなくては、俺の相手はつとまらないだろう。
「……お、……い」
だが、こんな場所でキスなんぞする気はなく、ミフェルの身体を押し返そうとした。だが、簡単には離れず、口の中に入った舌が自分の舌に絡みつきキスがもっと深まる。
「っ」
……コイツ、キス上手い。
何をやらせても卒なくこなす男は、キスも平均点上というところか。だからって職場でどうこうする気は到底ないっての……。
今度は肩を掴んで思いっきり、彼の身体をひっぺかした。
若さゆえの暴走か。ため息交じりに注意しようと思っていると、彼の手が俺の尻を掴んだ。
「ひぅんっ!?」
グニグニと尻の膨らみを掴まれて、その刺激にビクンを身体が竦んだ。
「んんんっんはっ!」
自分のぐぐもった声にハッとして、ミフェルから急いで距離を取った。
はぁはぁと睨むと、ミフェルは笑った。
「ふふ、団長感度いいですね」
「お前っ……、職場で何しているんだよ。人の目を気にしろよ」
「職場じゃなければいいんですか」
「は……いや」
いや……。
ミフェルが大股で一歩近づいてきて、耳元で囁いた。
今夜、お宅にお邪魔します。
挙げた手が虚しく、それを誤魔化すために頭に手をおいた。
残りの休憩時間をどう過ごそうか考えていたところ、ミフェルが追いかけて来た。
追いかけて来たというより、行く方向が同じなのかもしれん。
ミフェルは俺の前で立ち止ると、露骨に溜息をつく。
「はぁ~、相変わらず、ツレナイです。他の方々は最近の若者はなんて説教しますよ。団長もそうして部下とのコミュニケーションとって下さい」
「はは。お前もジョークなんて言うんだな。……ん?」
「お返しします」
ミフェルは俺の手を握った。手のひらをくるりと上に向け、さっき渡したコインを置く。食事はご馳走になりましたと律儀なお礼つき。
「お? 飲み物飲まなかったのか」
「団長と一緒に飲みたいと思っただけです」
「そうか。それはすまん。申し訳ないついでにこのコインも貰ってくれていいんだぞ。まぁ大した金額じゃないけど」
安月給だからなーっと笑ったが、ミフェルは妙に真剣な顔をしている。
「どうした?」
「……では、仕事終わりに食事でもどうですか? オススメの店があるんです」
「へ?」
へっと声を上げて驚いたが────……、おかしくないことだ。
ミフェルが俺の彼氏なら。
むしろ、とうとう誘いがきたかと喜ぶべきなのか……?
そう考える時点で、面倒くさい気持ちが大きい。
「……あ~……、そのだな、仕事終わりに上司と付き合うのって面倒くさくないか?」
「いいえ、全く」
握られた手がググッと力が強まった。
俺は頑丈なのでそんな風に力を込められても平気だが、ミフェルはどこか焦っているようにも見える。
……恋人なのに俺がこんな態度だからか? 心配している?
「──……分かった。ちゃんと話をきくよ」
彼が焦っているのは、自分のせいだと思い、中庭の外れに連れて行く。そこには二人隠れるほど、大きな木があった。
木陰が丁度涼しくていいななんて笑いかけた。
「誘ったのはこっちだって言うのに、なんか悪いな」
話をしようかと言うと、ミフェルがジッと俺を見つめる。
そういえば、夢の中でセックスしている時、アイツもやたらと俺の様子をジッとみていたな。
どこがいいのか、探られて暴かれて……。
いや、アイツって何。俺の彼氏はミフェルしかいないだろ。
「今度は……」
黙っていたミフェルが、口元を緩ませてボソリと話した。その声が自分の耳に届かなくて、頭を掻く。
「あー、すまん。記憶がないんだ。言いたい事ははっきり言ってくれ」
「記憶なんて戻らなければいいと思っています」
「は?」
訳が分からない。もう一度聞こうと顔を寄せて聞き返した時だ、彼の唇が俺の唇に引っ付いた。
「むっ……お」
ちゅ……。
ちゅって、おいおい……なんてことだキスしてんじゃん。
驚いている間に身体を抱き寄せられる。
強く抱きしめられて、強引に唇を割られて舌が入ってくる。図体のデカい俺をなんなく抱き寄せる力強さ。
確かにこれくらいの力がなくては、俺の相手はつとまらないだろう。
「……お、……い」
だが、こんな場所でキスなんぞする気はなく、ミフェルの身体を押し返そうとした。だが、簡単には離れず、口の中に入った舌が自分の舌に絡みつきキスがもっと深まる。
「っ」
……コイツ、キス上手い。
何をやらせても卒なくこなす男は、キスも平均点上というところか。だからって職場でどうこうする気は到底ないっての……。
今度は肩を掴んで思いっきり、彼の身体をひっぺかした。
若さゆえの暴走か。ため息交じりに注意しようと思っていると、彼の手が俺の尻を掴んだ。
「ひぅんっ!?」
グニグニと尻の膨らみを掴まれて、その刺激にビクンを身体が竦んだ。
「んんんっんはっ!」
自分のぐぐもった声にハッとして、ミフェルから急いで距離を取った。
はぁはぁと睨むと、ミフェルは笑った。
「ふふ、団長感度いいですね」
「お前っ……、職場で何しているんだよ。人の目を気にしろよ」
「職場じゃなければいいんですか」
「は……いや」
いや……。
ミフェルが大股で一歩近づいてきて、耳元で囁いた。
今夜、お宅にお邪魔します。
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