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友達とカフェで
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今日はくすまも友達兼腐男子友達の冬夜とカフェで会うという約束をしてるんだ。
楽しみすぎて眠れないなんてことはなかったけども、前日から服を決めてお金もきちんと確認して準備万端な状態で寝た。
基本面倒くさがりで前日に準備なんてしないオレが、だ。
我ながら本当に楽しみなんだなぁとちょっと呆れたくらい。
いやでも、カフェなんて家族としか行ったことなくて友達とは初めてだから。
控えめに言ってもとてもわくわくしているのだ。
服もオレの考え得る中で一番お洒落なものを選んだつもり。
オレのセンスが世間一般から外れていないことを祈るしかないのだけど。
服は上ボリューム下細身のYラインのスタイルを選んだ。
これは殆どのオレのコーデでいえるけど。
黒メインで袖に青色の入ったラウンドネックのTシャツに、脚にぴったりとするジーンズ。
その上には薄手の白のカーディガンをだぼっと羽織る。
髪も普段以上に気をつけてセットする。
セットが終わったら、お月様の模様が美しいネックレスとトライアングルが二個連なったイヤリングをつけてコーデの完成。
これが自分の中の精一杯のお洒落。
(…………オシャレ、だよね?大丈夫だよね?変じゃないよね?)
姿見の前で最終確認をしていると、選んでいる間は自信があったのに途端にその気持ちが萎んでいく。
ちかに判定を貰いたいけどこれから友達とカフェに行くと知られるのはなんだか恥ずかしい。
ちかはオレにロクに友達がいなかったと知っている。
だから初めて友達とカフェだなんて何と言われるのか。
慈愛の表情でも揶揄いの表情でも普通の笑顔でも、とにかく反応されること自体が恥ずかしいのだ。
でも服選びに失敗していたらと思うとそんな恥ずかしさを捨てるべきなのだろう。
(よし!)
ふすんと気合いを込め直して部屋を出ようとしたところで止まる。
ちかがオレをじっとりと見ている。
(え、いつからですか!?声かけてよ!!どこから見てた。気合い入れてるのは見られてた!?)
脳内が大混乱していて自分でも治めなきゃとはなるが、それで治るんだったらこんなに大混乱はしないだろう。
ようするに、自分ではどうにもできない。
オレは少しだけ扉を開けてこちらを見ていたのに気づかれた途端に堂々としているちかに向き合う。
「ちか、いつから見てた?」
「髪セットするところから」
結構見られてた。
恥ずかしすぎて顔を手で覆う。
「声かけてよ!」
「かけてよかったの?」
「う…………ん、……よかった?」
よくなかったかもしれない。
どのタイミングも最悪だと思える自信がある。
「どこか行くの?」
「あ、う、うん。本屋に……」
恥ずかしくて言えないけど、嘘を吐いたら吐いで罪悪感が湧いてちかと目を合わせられない。
「そうなんだ。前掘り出し物少なかったって言ってたもんね」
「そ、そう!だからリベンジ」
早くこの場を立ち去りたくて話をすぐに切り上げて、行ってきますと言って家を飛び出す。
(絶対不自然だった……!)
悶々としながらカフェへと向かって行ったけど、途中からはカフェが楽しみすぎて忘れ去った。
「おまたせ」
「ん、ああ」
既に冬夜はカフェに入っていて、ブラックのコーヒーを飲んでいた。
そしてオレはこの人までブラックを飲めるのかと衝撃を受ける。
オレの家族はみんなブラックが飲めるのだ。
ママ達はカフェオレも飲むし、そっちの方が好きそうだけど、それでもブラックも飲もうとしたら飲める。
オレはそうではなくて、飲もうと思って試しても苦すぎて飲めない。
ちかは好んでブラックを飲んでさえいるのに。
ちかの兄のような存在として沽券に関わるような感じがしてこっちは必死なのに、家族からは飲めなくてもいいだろうと諭すように言われるのだ。
「冬夜はブラック飲めるんだね」
「ああ。真央は飲めないのか?」
「…………」
黙って頷く。
オレが余程渋い顔をしていたのか冬夜に笑われる。
「ふはっ、別に変じゃあないだろ」
「え、そう?オレ以外の家族は全員飲めるんだよ」
「へぇ、僕のところと逆。僕以外誰も飲めなくて飲むたびに不思議な生物を眺めるような目をされる」
それは飲むたびに不便だと相槌を打つ。
「あ、注文がさ、レシートのQRコードかららしいよ」
「は、はいてくだね」
非接触のためなのか。
だとしてもなんとハイテクな。
(めちゃくちゃイマドキって感じがする)
初めての行為に戸惑いもあるが、それを上回る興奮がオレの胸を占める。
カメラで読み取ったQRコードからのリンクを開き、メニューをタップする。
「……なんか見づらいね」
「それね、僕も思った」
タブレットのような大画面ならよかったのだろう。
しかし今手に持っているのはスマホの小画面。
文字がとても小さくていちいち目を凝らす羽目になる。
(つ、疲れる。美味しそうだけど。ちゃんと読んで頼むけど!)
目頭をぐりぐりと揉んで、メニューに向き合う。
「ねえねえ。普通のメニュー表も置いてはあるんだよ」
「それ先に言ってほしかったかな」
(冬夜は独特なテンポ感だなあ)
マイペースだと思いながらメニュー表を渡してもらう。
渡してもらったメニュー表は文字が大きくて快適だった。
「うん、こっちの方がいい」
「うん、当たり前だと思う」
オレは迷った末ロコモコを頼んだ。
食後のデザートの選択の仕方で少し戸惑ったのは仕方ない。
食後のデザートの欄がランチメニューの後、下の方にあったのだ。
デザートはいちごジャムのパンケーキにした。
「炭酸は嫌い?」
「いや、むしろ味は好き。でもオレお腹が弱くてさ」
飲み物はカルピスに。
炭酸の方が好きだけどオレはお腹が弱くて、炭酸をペットボトル一杯分でも飲もうものならすぐに痛くなる。
最近は改善されてきた気がするけど、それでも微炭酸でないと壊さないという確証はない。
さらに冬なんて、寒い学校ではカイロを貼っていないと痛くて地獄だ。
こんな話を冬夜にした。
「大変だなぁ」
「うん、めっちゃ大変!ふつーに腹痛はキツい。慣れないし」
「慣れないものなの?」
「知らん!オレが痛みに弱い方だからかもしれないし、よくわからないんだよ」
不機嫌そうな雰囲気が通常なのに、顔を顰めてさらに不機嫌な雰囲気が漂う冬夜。
(それでも顔で帳消しになってるんだもんなぁ。イケメンはイケメンってだけでなんかカッコよく見える)
「ホントに大変じゃん」
「うん。給食って牛乳出るじゃん?それもさぁ、中二くらいから飲んでお腹壊す回数が増えて」
「なんでだろ?」
「オレ自身よくわかってない。今もお腹壊すわ、アレ。旅行先でソフトクリーム食べようって思ってもスーパーとかで買うやつよりも牛乳が濃いのか二口目でお腹がギュルギュル言い始めるし」
冬夜が急に真面目な顔になった。
「真央、それは人生損してる」
すんと真顔で言われる。
「うん、損してるよね」
オレもつられてすんと真顔で言う。
お互い真顔でなんだか笑えてきて、無言でお腹を抑えて笑い合う。
他のお客さんの迷惑になるかなって。
でも後でよくよく考えてみると、お互い無言で腹抱えて笑い合うって異常な光景だなって客観的に思った。
「…………で、なんで人生損得の話になったんだっけ?」
「…………なんでだっけ」
今度は二人で唸りだすが答えは一向に出てこない。
「まあいいか」
「え、冬夜が言い出したのに」
オレの抗議は華麗に無視された。
「これ、できたからあげる」
「おおおお!!ありがとう!」
外見が購入時そのままだったストラップがお洒落したストラップとなって帰ってきた。
(初めて会った時から会ってなかった相手に会えるかと聞かれて期待しないわけないよね!ああぁぁ!!オレのストラップ!!実物触ってる!!)
「ちょーいいっ!!本当にありがとう!!」
オレは満面の笑みだ。
それ以外に浮かんでこない。
いや、にやけた表情は混ざってるのだろうが。
「うん」
冬夜も笑顔を返してくれた。
そこでオレの中の時が一瞬止まる。
「笑顔」
「ん?笑顔が何?」
「いや、初めて見せてもらえたなぁって」
「そう?」
冬夜の表情がデフォルメへと戻るが、オレの網膜からは冬夜の笑顔が消えない。
「うん。なんか仲良くなれたみたいで嬉しい」
うへへとオレはさらに笑う。
冬夜は普通に喋りはするけど、表情は全然変わらないから他の人より余計に嬉しい。
「素敵な笑顔ありがと」
「………………ん」
表情はもう変わらないが耳が微かに赤い。
(照れてるね。なんかぐっとくる)
「ふふ、今日はラッキーな日かも」
「それはないと思うよ」
「あ、ツッコミはしっかり入れるんだ」
くすまもや、今日はBLの話もしっかりしてとても楽しかった。
楽しみすぎて眠れないなんてことはなかったけども、前日から服を決めてお金もきちんと確認して準備万端な状態で寝た。
基本面倒くさがりで前日に準備なんてしないオレが、だ。
我ながら本当に楽しみなんだなぁとちょっと呆れたくらい。
いやでも、カフェなんて家族としか行ったことなくて友達とは初めてだから。
控えめに言ってもとてもわくわくしているのだ。
服もオレの考え得る中で一番お洒落なものを選んだつもり。
オレのセンスが世間一般から外れていないことを祈るしかないのだけど。
服は上ボリューム下細身のYラインのスタイルを選んだ。
これは殆どのオレのコーデでいえるけど。
黒メインで袖に青色の入ったラウンドネックのTシャツに、脚にぴったりとするジーンズ。
その上には薄手の白のカーディガンをだぼっと羽織る。
髪も普段以上に気をつけてセットする。
セットが終わったら、お月様の模様が美しいネックレスとトライアングルが二個連なったイヤリングをつけてコーデの完成。
これが自分の中の精一杯のお洒落。
(…………オシャレ、だよね?大丈夫だよね?変じゃないよね?)
姿見の前で最終確認をしていると、選んでいる間は自信があったのに途端にその気持ちが萎んでいく。
ちかに判定を貰いたいけどこれから友達とカフェに行くと知られるのはなんだか恥ずかしい。
ちかはオレにロクに友達がいなかったと知っている。
だから初めて友達とカフェだなんて何と言われるのか。
慈愛の表情でも揶揄いの表情でも普通の笑顔でも、とにかく反応されること自体が恥ずかしいのだ。
でも服選びに失敗していたらと思うとそんな恥ずかしさを捨てるべきなのだろう。
(よし!)
ふすんと気合いを込め直して部屋を出ようとしたところで止まる。
ちかがオレをじっとりと見ている。
(え、いつからですか!?声かけてよ!!どこから見てた。気合い入れてるのは見られてた!?)
脳内が大混乱していて自分でも治めなきゃとはなるが、それで治るんだったらこんなに大混乱はしないだろう。
ようするに、自分ではどうにもできない。
オレは少しだけ扉を開けてこちらを見ていたのに気づかれた途端に堂々としているちかに向き合う。
「ちか、いつから見てた?」
「髪セットするところから」
結構見られてた。
恥ずかしすぎて顔を手で覆う。
「声かけてよ!」
「かけてよかったの?」
「う…………ん、……よかった?」
よくなかったかもしれない。
どのタイミングも最悪だと思える自信がある。
「どこか行くの?」
「あ、う、うん。本屋に……」
恥ずかしくて言えないけど、嘘を吐いたら吐いで罪悪感が湧いてちかと目を合わせられない。
「そうなんだ。前掘り出し物少なかったって言ってたもんね」
「そ、そう!だからリベンジ」
早くこの場を立ち去りたくて話をすぐに切り上げて、行ってきますと言って家を飛び出す。
(絶対不自然だった……!)
悶々としながらカフェへと向かって行ったけど、途中からはカフェが楽しみすぎて忘れ去った。
「おまたせ」
「ん、ああ」
既に冬夜はカフェに入っていて、ブラックのコーヒーを飲んでいた。
そしてオレはこの人までブラックを飲めるのかと衝撃を受ける。
オレの家族はみんなブラックが飲めるのだ。
ママ達はカフェオレも飲むし、そっちの方が好きそうだけど、それでもブラックも飲もうとしたら飲める。
オレはそうではなくて、飲もうと思って試しても苦すぎて飲めない。
ちかは好んでブラックを飲んでさえいるのに。
ちかの兄のような存在として沽券に関わるような感じがしてこっちは必死なのに、家族からは飲めなくてもいいだろうと諭すように言われるのだ。
「冬夜はブラック飲めるんだね」
「ああ。真央は飲めないのか?」
「…………」
黙って頷く。
オレが余程渋い顔をしていたのか冬夜に笑われる。
「ふはっ、別に変じゃあないだろ」
「え、そう?オレ以外の家族は全員飲めるんだよ」
「へぇ、僕のところと逆。僕以外誰も飲めなくて飲むたびに不思議な生物を眺めるような目をされる」
それは飲むたびに不便だと相槌を打つ。
「あ、注文がさ、レシートのQRコードかららしいよ」
「は、はいてくだね」
非接触のためなのか。
だとしてもなんとハイテクな。
(めちゃくちゃイマドキって感じがする)
初めての行為に戸惑いもあるが、それを上回る興奮がオレの胸を占める。
カメラで読み取ったQRコードからのリンクを開き、メニューをタップする。
「……なんか見づらいね」
「それね、僕も思った」
タブレットのような大画面ならよかったのだろう。
しかし今手に持っているのはスマホの小画面。
文字がとても小さくていちいち目を凝らす羽目になる。
(つ、疲れる。美味しそうだけど。ちゃんと読んで頼むけど!)
目頭をぐりぐりと揉んで、メニューに向き合う。
「ねえねえ。普通のメニュー表も置いてはあるんだよ」
「それ先に言ってほしかったかな」
(冬夜は独特なテンポ感だなあ)
マイペースだと思いながらメニュー表を渡してもらう。
渡してもらったメニュー表は文字が大きくて快適だった。
「うん、こっちの方がいい」
「うん、当たり前だと思う」
オレは迷った末ロコモコを頼んだ。
食後のデザートの選択の仕方で少し戸惑ったのは仕方ない。
食後のデザートの欄がランチメニューの後、下の方にあったのだ。
デザートはいちごジャムのパンケーキにした。
「炭酸は嫌い?」
「いや、むしろ味は好き。でもオレお腹が弱くてさ」
飲み物はカルピスに。
炭酸の方が好きだけどオレはお腹が弱くて、炭酸をペットボトル一杯分でも飲もうものならすぐに痛くなる。
最近は改善されてきた気がするけど、それでも微炭酸でないと壊さないという確証はない。
さらに冬なんて、寒い学校ではカイロを貼っていないと痛くて地獄だ。
こんな話を冬夜にした。
「大変だなぁ」
「うん、めっちゃ大変!ふつーに腹痛はキツい。慣れないし」
「慣れないものなの?」
「知らん!オレが痛みに弱い方だからかもしれないし、よくわからないんだよ」
不機嫌そうな雰囲気が通常なのに、顔を顰めてさらに不機嫌な雰囲気が漂う冬夜。
(それでも顔で帳消しになってるんだもんなぁ。イケメンはイケメンってだけでなんかカッコよく見える)
「ホントに大変じゃん」
「うん。給食って牛乳出るじゃん?それもさぁ、中二くらいから飲んでお腹壊す回数が増えて」
「なんでだろ?」
「オレ自身よくわかってない。今もお腹壊すわ、アレ。旅行先でソフトクリーム食べようって思ってもスーパーとかで買うやつよりも牛乳が濃いのか二口目でお腹がギュルギュル言い始めるし」
冬夜が急に真面目な顔になった。
「真央、それは人生損してる」
すんと真顔で言われる。
「うん、損してるよね」
オレもつられてすんと真顔で言う。
お互い真顔でなんだか笑えてきて、無言でお腹を抑えて笑い合う。
他のお客さんの迷惑になるかなって。
でも後でよくよく考えてみると、お互い無言で腹抱えて笑い合うって異常な光景だなって客観的に思った。
「…………で、なんで人生損得の話になったんだっけ?」
「…………なんでだっけ」
今度は二人で唸りだすが答えは一向に出てこない。
「まあいいか」
「え、冬夜が言い出したのに」
オレの抗議は華麗に無視された。
「これ、できたからあげる」
「おおおお!!ありがとう!」
外見が購入時そのままだったストラップがお洒落したストラップとなって帰ってきた。
(初めて会った時から会ってなかった相手に会えるかと聞かれて期待しないわけないよね!ああぁぁ!!オレのストラップ!!実物触ってる!!)
「ちょーいいっ!!本当にありがとう!!」
オレは満面の笑みだ。
それ以外に浮かんでこない。
いや、にやけた表情は混ざってるのだろうが。
「うん」
冬夜も笑顔を返してくれた。
そこでオレの中の時が一瞬止まる。
「笑顔」
「ん?笑顔が何?」
「いや、初めて見せてもらえたなぁって」
「そう?」
冬夜の表情がデフォルメへと戻るが、オレの網膜からは冬夜の笑顔が消えない。
「うん。なんか仲良くなれたみたいで嬉しい」
うへへとオレはさらに笑う。
冬夜は普通に喋りはするけど、表情は全然変わらないから他の人より余計に嬉しい。
「素敵な笑顔ありがと」
「………………ん」
表情はもう変わらないが耳が微かに赤い。
(照れてるね。なんかぐっとくる)
「ふふ、今日はラッキーな日かも」
「それはないと思うよ」
「あ、ツッコミはしっかり入れるんだ」
くすまもや、今日はBLの話もしっかりしてとても楽しかった。
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