上 下
2 / 33
旅人3箇条

幽街画廊

しおりを挟む
 ゴーストツリーの街は、妖精界最大にして唯一の都市と言えよう。
 面積は、約30km2程あるらしい。
 人間的にみてそれが大都市かどうかは知らないが、妖精の身長は人間の1/10程だから体感10倍と考えればそこそこ大きいだろう。
 街の中心には、名前の由来となったゴーストツリーと呼ばれる巨木があり、その高さは妖精の技術では観測出来ない程に高い。
 その木は、名前の通り半透明で殆どの妖精が触れる事さえ出来ない蜃気楼の様な現象であったが、数百年前にゴーストツリーを触れる事が出来る一部の木の妖精達により、表面に実体木材を貼りつけて、中身を開拓して巨大ショッピングモールに仕立てたのだ。
 その時に工事に関わった木の妖精達は、木の組合という組織を結成して、ゴーストツリーの内外で様々な商売を初め、次第にこの地は、都市と呼ばれるまでになった。  
 今では、他所から来た妖精でも木の組合に登録すれば、簡単に店を出す事が出来るのだが、木の妖精であればかなりの高待遇で迎えられるのだ。
 妖精界において、組織自体が異例中の異例だが、仕事という繋がりに徹すれば、心を消費することは無く健康でいられるらしい。
 そして、この物語の舞台であるホテル幽街画廊は、ゴーストツリーを西へ徒歩20分程の所にある。
 18世紀ヨーロッパの木造建築を参考に木の妖精が建てた2階建客室6部屋のボロいホテルで、名前に画廊とあるのは、オーナーのヒュジャックジョンソンが画家である事に関係があるのだろう。

 
 
 
 
 
しおりを挟む

処理中です...