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23.傷の真実2(過去ラウル視点)

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朝起きて顔に違和感を感じ、鏡を見てみると


「なんだこれは…….!!」


顔の左半分は青紫に変色し、目は充血し、傷口は……大した事は無い…。


しかし仕事を休むわけには行かず、とりあえず王宮へ向かう。

すれ違う人が皆振り返る。


「皇子、おはようございます」

皇子は私の顔を見るや否や、

「はははっ!凄い顔じゃ無いか!ラウル!」

何故か満足そうに笑った。

誰を守ってこうなったと思っているんだ…?


「…私は皇子を守ってこうなったのですが……」


少し苛ついた声で返答する。


「そうだったな!すまない!私を守ったばかりにこのような顔に傷を負って……あぁすまな」


「茶番劇は良いですから何故このような事になっているか、教えて頂けますか?あの時私に渡した薬…解毒剤なんかでは無かったですよねぇ…」

「ははは、何のことかな…」

「おうじぃぃ」


「わ、分かったよ!お前に渡したものはある植物の弱い毒だ。大した毒では無いから安心しろ。解毒剤だってある。すぐに治るさ」


「なぜそんな事をしたのです?イタズラでは許されませんよ!すぐに解毒剤を渡してください」


昔から皇子には悪戯を山程仕掛けられた。

幼い頃は寝ている間に瞼に目を描かれたり、突然曲がり角で驚かされたり…大人が真剣な顔で話しているのに変な顔して笑かしてきたり…。
あ…思い出すとイライラしてきた……



「お前の為さ、ラウル。バラレンド侯爵家について少し調べてみたがあの家は闇が深そうだ。あとジュリーという妹は、あまり聡明では無さそうだな、きっとお前の綺麗な顔が傷付いたらあちらから婚約解消を願い出て来るのでは無いか?」



「そんなに上手くいくでしょうか…。しかし皇子。そこまで私の事を考えてくださっていたのですね…ありがとうございます」


「私も親友のお前には幸せになって欲しいんだ。それに、お前の事を今までちやほやしていた奴等がどう出るかな…?昨日のうちに、護衛騎士のラウルが皇子を守って顔に傷を負ったと噂を流しておいた」


皇子を守ってできた傷…まあ全くの嘘では無い。
傷を酷くしたのは皇子だが…。


「私を守って傷付いたラウルを悪く言う者は、私を愚弄するのと変わらない。貴族達の本性が分かってくる。それで少し調べたい事がある。貴族達は王族の前では良い顔をするから中々本性が分からないからな」


ん?
貴族達の本性を見る為?


「皇子…?私の為と言うよりももしかして最初からそれが目的で……?」


「ち、違うぞラウル、私はお前が幸せに…はは!お前は婚約解消出来るかもしれない、私は貴族達の本性がわかる。一石二鳥で良いじゃ無いか!」


皇子は私と2人きりの時は、昔に戻る。
いつも気を張り詰めている皇子親友が自分の前だけではありのままをさらけ出す。私もそんな皇子を守りたいと思い、自ら護衛騎士に志願した。

きっと皇子は皇子なりに私の望まぬ結婚を避ける為に一役買って出たのだろう。
他にも目的はありそうだが、ここは皇子の考えに乗っておこう。


「分かりましたよ」



そう言って、顔の傷をそのままにしておくと、皇子の言ったようにジュリー様から婚約解消願いが来た。

そして、私が怪我をして私を悪く言う令嬢もいた。
"皇子を守った"という事で恩賞が入ったと思い擦り寄ってくる者もいた。


全ては皇子が言った通りとなったのだった。








ーーーーーーーーーー


「そして今日皇子に、折角明日の建国祭で爵位を受け賜るのだから顔治しておけよ、と解毒剤を貰ったのです。しかし、少し使うか悩みました」


「なぜですか…?」


「フレミアが、傷があっても素敵だと言ってくれたから…」

少し恥ずかしげに目を伏せるラウル様に胸がキュッと締め付けられる。


「はい…ラウル様は素敵です。どんなラウル様も…」


「ありがとう。私自身結構気に入っていたのですが、私を悪く言った者やジュリー様が私の戻った顔を見た時どんな顔をするか見るのも楽しいかなーと思いまして」


まさかのラウル様、楽しんでいる…!


「さぁ、明日は早いのでそろそろ休みましょう」


「はい」


そう言ってラウル様は立ち上がり、扉の前まで足を運ぶ。

と、ふと立ち止まりこちらを振り返る。


「その…明日からは…同じ部屋で眠らせてください」


そう言うと、私の返答を待たずに部屋を出て行ってしまった。


1人部屋に残された私は、ただただ顔を赤らめるのだった。




……明日は建国祭。



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