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24.建国祭へ
しおりを挟むいつもより華やかに着飾り、ラウル様の待つロビーへ向かう。
今日のドレスはラウル様の瞳のエメラルドグリーンの色だ。
「フレミア…今日もとても美しいですね。フレミアを皆の前に出したく無い程です」
そう言ってラウル様が微笑む。
(それは…私の台詞ですわ…)
顔の傷が治ったラウル様は誰もが振り返る程の眩しさだ。
会場の御令嬢方やジュリーが今のラウル様の姿を見たらどう思うだろうか。
少し心配になってしまうが、
「さあ、行きましょう」
そう言って差し伸べられた手を取ると、小さな心配は吹き飛んでしまうのだった。
王宮への道中、馬車に揺られ今日の事を考える。
この国では毎年建国祭が行われる。
始めに、一年の報告会
次に、恩賞.爵位授与式
そして夜には他国の来賓も招いて国の生誕を皆で祝うのだ。
きっと報告会の際に結婚の報告をし、晴れて私達は夫婦となる。
通例ならば高位貴族のみ皆に報告をするのだが…。
「フレミア、緊張していますか?」
「はい。久しぶりに家族と会う事も少し緊張します…」
アイロワニー伯爵領へ来てから今まで一度も連絡は来なかった。
「もうフレミアの家族は私です。何があってもこれからは私が守りますから」
「はい…ありがとうございます」
「さぁ、行きましょう」
ラウル様のエスコートで会場へ入ると、会場に感嘆の声があちらこちらで聞こえる。
今、会場中の視線を集めているに違い無い。
「ラ、ラウル様⁉︎お顔の傷は治られたのですかぁ⁉︎私達、とっても心配していたのですわ~」
「本当に…!!」
「あぁ良かったですわね!やっぱりラウル様は素敵ですわね~!」
突然数名の令嬢達が近寄ってきた。
確か、妹と一緒になりラウル様を「醜草騎士」と言っていた令嬢達だ…。
隣に居る私は目に入っていないようだ。
ラウル様は令嬢達に笑顔を向けた…と思ったがその目は笑っていない。
今まで見たことの無いその冷たい瞳にこちらまで背筋が凍るような気がした。
そして返事をする事なく、その場に固まる令嬢達を置き去りにするラウル様。
(いつもお優しいラウル様だけれど、怒らせてはいけない事が分かったわ…)
会場には多くの貴族達が集まり、最後の最後に慌ただしく会場に入ってくる3人が見えた。
「ジュリー早くしなさい!貴女がいつまでもドレスを決めないから…!」
「お母様だって自分でドレスを着ることが出来ないから手伝えって…!」
「…やめてくれ……」
3人とも髪の毛は乱れ、侯爵家とは思えない身なりだ。
自分でドレスを着る…と言うことは、ドレスを着せる使用人すら居なくなってしまったのだろう…。
騒ぎ立てる2人の隣で父はオロオロとしているだけだ。
…ラウル様とは違う意味で皆の視線を集めている。
ジュリーがキョロキョロとしたかと思うと、1人の令息を見つけ駆け寄る。
ジュリーが駆け寄ったのは…あれは……ワルヤーク伯爵家のアボン様……!?
(ジュリー?もしかしてアボン様に…!?あれだけ私がやめておいた方が良いと言ったのに……)
駆け寄ったと思うと、何か言い合いをしているようだ。
「アボン様っ!会いたかったですわ!結婚の日取りはいつに致しましょう?」
「な、何を言っているんだ?君は…」
「ど、どういう事ですの⁉︎」
「君は誰だ⁉︎誰かこの狂った令嬢を連れて行ってくれ!」
「アボン様っ⁉︎わ、私と結婚しようと仰って…」
妹とアボン様が大声で言い合いを始める。
その時。
「静粛にーー!!静粛にーー!!陛下、皇后、殿下のおなーーりーー!!」
そう号令がかかり、華々しく王家の方々が入場される。
いよいよ、建国祭が始まったのだ。
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