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22.傷の真実1(建国祭前夜)

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「フレミア様、今夜は入念に髪をとかしておきましょうね!明日は待ちに待った建国祭ですもの!」


湯浴み後、リアーナが嬉しそうに私の髪をとく。


「そうね。ラウル様の隣に立っても恥ずかしくないようにしなくっちゃ」


「フレミア様は今のままで充分お綺麗です!ラウル様もそのままのフレミア様を愛していらっしゃいますよ」


「ありがと、リアーナ」


「さぁ、噂をすれば影ですわ。ラウル様がいらっしゃったようですね」


ラウル様は、毎日忙しい中でも2人の時間を作ってくださる。
こうして寝る前に可能な限り、お茶を2人で飲む。
この時間が本当に幸せだ。


リアーナが礼をして下がる。

それと入れ替わりにラウル様が入られた。


「フレミア」


「ラウル様、今日も1日お疲れ様でし…あら…」


私はラウル様の顔を見て驚きを隠す事ができなかった。



なぜなら礼をして顔を上げると、なんとラウル様の顔の傷が綺麗に治っていたからだ。


「ラウル様、お顔…治られたのですか?」

そう言うと、少し恥ずかしそうに前髪を触るラウル様。


「何だか今更恥ずかしいのですが…すみません。フレミアを騙すような事になってしまって…少し聞いて貰えますか?」


「はい、少し待ってくださいね。今お茶を淹れますわ」


お茶を淹れ、ラウル様の前に差し出す。


一口飲み、ふぅっと一息つかれる。



「ありがとうございます。……あれは、ジュリー様と婚約が結ばれた直後の事でした。私はフレミアの事が好きだったのでとても落ち込んでいたのです……」






〈過去のラウル視点〉
~ジュリーとラウルの婚約成立直後







「…何だ、ラウル。何かあったのか?覇気がいつもに比べて無いぞ?」


……皇子に一目でばれた。

勿論、公私混同はしないよう気持ちの切り替えはしていたつもりだったし、他の誰にもそのようには言われなかった。


やはり幼い頃から共に過ごした親友には隠せないようだ。


「私に言えないような事か?」

そう皇子に詰め寄られ、

「実はですね…」

渋々説明せざる負えなかった。
ずっとフレミア様を思っていた事、それなのに妹のジュリー様から婚約依頼が来て、了承せざる負えなかった事。


「はははっ!私はずっとお前が女に興味が無いと心配していたがそうでは無かったようで安心したよ。そして…バラレンド侯爵家か…少し調べてみよう」


「何か気になる事があるのですか?」


「まあ…な。さぁ、明日からは隣国へ視察だ!お前もしっかり身体を休めておけよ」


「…かしこまりました」


明日から治安の悪い地方を抜けて隣国へ向かわなければならない。
いらぬ事を考えている場合ではない。


そう思い、気を引き締め直したのだった。









が…






「第一皇子ぃぃ!!しねえぇ!!」


隣国からの帰りの道中、何者かが護衛の包囲網を突破して皇子めがけて突撃してきたのだった。


皇子も中々の手練で、これくらいなら返り討ちに合わせるくらいだが、この時は剣も抜かずに私の方をチラリと見やった。


それに応えるように私は皇子の前に立ち刺客を難なく斬り伏せた。


しかし、護衛の包囲網を掻い潜ってきただけあって凄い執念だった。


隠し持っていた小刀を振りかざし斬りつけられ、すんでのところで避けたものの、左目の横をかすってしまった。



「ご苦労、ラウル」

「いえ、皇子がご無事で何よりです」


傷口がピリピリとする。

(これは…毒か。念の為解毒しておくかな…)


そう思い、解毒剤を取り出そうとすると皇子に小瓶を投げ渡される。



「毒は侮れない。しっかり傷口に塗り込んでおけ」


「はっ!ありがとうございます」



皇子直々に渡されたのだ。
感謝してその場ですぐに瓶を開け、1滴残らず傷口にしっかりと塗り込んでおいた。










そして、次の日。



私の顔は凄い事になっていたのだった。









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