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9.出逢い1(ラウル視点)
しおりを挟む私はアイロワニー伯爵家の次男、ラウル。
6歳から騎士団養成所で訓練を始め、12歳で騎士団へ正式に入り、実力を買われ18歳には護衛騎士団へ入団した。
今の第一皇子とは歳が同じで、昔からよく手合わせをした気の知れた仲だ。
伯爵家は兄上が継ぐし、護衛騎士とはいつ命を失うか分からない危険と隣り合わせの役目の為、所帯は持たないつもりでいた。
正直に言うと、私の顔だけを見て近づいて来る女性が苦手であったのも1つの理由だ。
皇子はそんな私の事を、
「お前が歩けば男女問わず振り返る程なのに…もったいないな」
などと笑っていたが、あまり興味は無かった。
ある日仕事で、バラレンド侯爵領へお忍びで行く事があった。
我が伯爵家の領地の隣だが、騎士団へ入団していた私はあまり行く機会は無く17歳で久しぶりにゆっくりと視察した。
私が幼い頃は、何というか侯爵領というのにも関わらず寂れた印象があったが、今では街に活気があり、染物に力を入れ始めたようで経済的にもかなり潤っているようだった。
(確か、この間優秀な前侯爵夫人が亡くなったと聞いたが…)
そう疑問に思い、街にいた者に声を掛ける。
「侯爵領は中々活気がありますね。この染物も素晴らしいですね。昔からでしたか?」
そう言うと、職人が手を止め嬉しそうに話してくれた。
「いやぁ、違うのですよ!前侯爵夫人が領地でよく採れるこの植物の染め物を特産物にすれば良いと言って始めたのですが、すぐ夫人が亡くなってしまって…この先どうなるか心配していたのですが、まだ幼いフレミア様がその意志を受け継いでくださってね!」
(ほう…バラレンド侯爵令嬢は確かまだ12.13くらいだったのでは…)
「去年寒波が来て植物が枯れてしまった時も大きな補助金を出してくれましてね!また立て直して今ではこれだけ特産物として確立した物となりましたよ!いやぁ、よく民の話に耳を傾けてくださって、視察にもよく来てくださる素晴らしい方だ。なぁ、みんな!」
そう男が作業している者達に問いかけると一斉に皆が、
「あぁ!本当に!」
「いやぁ、今では経済が潤って街に活気が溢れているね!」
「移住してくる民も増えたんだ!」
などとその令嬢を褒め称えた。
まだ幼い少女がこれだけ民の気持ちを捉え、街を栄えさせているなんて…
それからというもの、私はまだ見ぬフレミア様の事が気になって仕方が無くなってしまった。
そしてフレミア様が16歳になり、社交界デビューの日。
私は最低限しか社交界には顔を出さなかったのだが(どうも近付いてくる令嬢達が苦手で…)この日は嬉々としながらパーティーへ参加した。
(フレミア様はどこだろう…)
そう思っていると私の隣にいた父に1人の令嬢が近づき、
「アイロワニー伯爵、フレミア・バラレンドでございます」
と挨拶をした。
(これが…!フレミア様…!)
初めて見るフレミア様は、思っていたよりもずっと美しく、華奢だった。
その後も、話しかけてくる多くの令嬢達を失礼のない程度に適当にあしらいフレミア様を目で追う。
(しかし…あの両親は今日デビューの娘を放って何をしているのだろうか…)
バラレンド侯爵夫妻はフレミア様を紹介して回る事なく、フレミア様を1人にさせていた。
しかし、フレミア様は慣れない社交場でも1人で堂々と振る舞い、色々な方に挨拶していく。
その姿を見て、さらに心奪われるのだった。
しかし、フレミア様ばかりを見ていた私は気づく事ができなかった。
ずっと私の事を見ていた視線に……。
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