お礼に半分食べてあげる

羽衣野 由布

文字の大きさ
5 / 22

5話

しおりを挟む
 最初の一口目をゆずり合う押し問答の末、二人はせーのでそれを口に入れた。

 「ん~~~っ!んまっ!やっぱこのパフェおいし~!どう?倉井くん、初めてのお味は?」
 「うん。…おいしい」

 控えめながらもほころぶ顔に、陽乃の顔も思わず緩む。

 …ふふ。良かったぁ。

 「あ、ねぇねぇ!こっちのいちごソースがかかってるとこもおいしいよ!食べて食べて!」
 「あ、う、うん」
 「どうどう?」
 「…本当だ。おいしい」
 「でしょ~?」

 向かい合う二人につつかれ、フルーツパフェはだんだん小さくなっていった。

 至福とばかりに食べ進めていると、ふいに倉井が話を切り出してきた。

 「あ、あの…さ……」
 「ん?」
 「そういえば…なんだけど……」
 「うん、何?」
 「さ、斉川さんって…その……あ、明石あかし君と、別れたって……本当?」
 「え?」
 「あっ、や、えっと、あのっ……誰かが話してるの…たまたま聞いて…」

 …あ、なんだ。そのことか。

 「うん、そうだよ~。隼人はやととは別れた」

 陽乃はなんとも明るいトーンで答えた。

 「!……そ、そうなんだ…」
 「だって、なんか言ってることがおかしくてさぁー」
 「おかしい…?」
 「うん。なんかね?『俺は束縛とかしないから』って言ってたくせに、私が男友達と面白い話してただけで『そんなことできる神経が信じらんない』とかって怒るんだよ?意味不明じゃない?」

 今思い出しても、さっぱり分からない。
 なぜ話をしてただけで怒られなければいけないのだろうか。

 「え?…あー………そう…だね…」
 「だから、そんな人と一緒にいるのムリってなって別れちゃった」
 「…そ…そっか」
 「うん」

 倉井がなにやら思案顔であったが、終わったことより目の前のパフェに夢中の陽乃には、それが見えていなかった。

 「ねぇねぇ!バナナとオレンジどっち食べる?」
 「…あ……ぼ、僕は別にどっちでも…」
 「おすすめはねぇ~、バナナだよ!ここのクリームとかいっぱいつけると、きっとすっごくおいしいと思うよ~?どうどう?バナナ食べたいと思わない?」
 「…………えっと…もしかして斉川さん、バナナ嫌い?」
 「え゛っ!なぜバレた?!」
 「いや、なんとなく…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

処理中です...