バスは秘密の恋を乗せる

桐山なつめ

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「さっきの絵、神山くんよね?」

 美術準備室に入るなり、ストレートに切り出された。

「なんでわかったの?」
「気づいてなかったの? あたし、何度も声をかけたのよ」

 ぎゃー! 絵に集中しすぎていて、ぜんぜん聞こえてなかった!

「ど、土曜日に、お芝居を見せてもらったから……」
「お芝居? そっか。神山くん、まだ演技を続けていたのね」

 そうだ。凛ちゃんはオーディションのことも知らないんだった。

「なんで、そういう大事なこと、あたしに教えてくれないのかしら」
「凛ちゃんが心配してたってことは、神山くんに伝えておくよ」
「なんかヘンな感じ。前は、あたしが彼の一番の友だちだったのに」

 うう、よけいなことを言っちゃった。

「凛ちゃん、ごめん。私……」
「だから今度は、三人で遊びに行きましょう?」
「え?」
「あたしたち、お友だちでしょ? 仲間はずれなんて、ひどいわ」

 ぽかん。

「そ、そうだよね。私たち、友だちだもんね」

 全身から力が抜ける。よかった、凛ちゃんは最初から怒ってなかったんだ

「それより。菜月さんがコンクールに出品するなら、今度こそ本当にライバルね」
「う、うん。一緒に頑張ろうね」
「ええ。絶対に負けないわ」
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