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13章

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【なんだと……】

【許せない!】

私の話にシルバ達は不快感を顕にした。

【本当ね…なんかルナちゃんが可哀想…】

私は他人事のように自分の体を抱きしめた。

【可哀想って…ミヅキの事なんじゃないの?】

シンクが私の感じに不思議そうに首を傾げる。

【うん…確かにこの体の記憶ではあるけど、私は美月として過ごしてからミヅキになったから…なんかルナちゃんとは別人格で見てる感じなんだよね…】

それでもこんな小さい子達が酷い目にあっていたという事実にいたたまれなくなる。

【そうか…】

シルバ達の怒りが少し収まったところで続きを話し出した。



ルナはその日から魔力を抽出される実験へと変えられた。

死んでも構わないと言われたがなるべく殺さないようにと言われた研究者達はギリギリのラインでルナの魔力を抽出してはアナテマに無理やり魔力を流し入れた。

取り出されるルナも入れられるアナテマもお互いに辛く苦しかったが泣いても叫んでも誰も助けてはくれない。

魔力が抜かれると気を失い気がついても立つことも出来ないほどに力が無くなっている。

アナテマは自分の容量以上のものが入る事で吐き気や頭痛に魔力の暴走などが起こっていた。

地獄のような日々にルナはいつの間にか心も体も動かなくなっていた。

苦痛は消えて何も感じない。
ただ息のある人形のようだった。

ルナが全ての思考を停止して数日がたった時アナテマの魔力の暴走で研究所が破壊されて場所を移すことになった。

抵抗もしないルナは荷物のように空いてる部屋のベッドに寝かされていた。

するとそんなチャンスを待つように母のメアリアがルナの部屋に忍びこんだ。

メアリアはルナを取られてからどうにか二人を取り返すタイミングを狙っていてそれがようやく訪れた。

この日ヴォイドは城には居ないことを従者達に金を渡して情報を貰っていた。

そのタイミングでのアナテマの暴走、メアリアはここを逃したらもうルナに会えないと思い部屋を飛び出した。

ルナのいる研究所までの道は知っていたがその後どこに移されたかまでは知らなかった。

しかし騒ぎに人目のつかない方へと走っているとふと気になる部屋へとたどり着く。

部屋に入ってみればルナが拘束されること無く放置されていた。

「ルナ!」

メアリアは神のお導きだとルナに駆け寄った。

ルナを揺すって抱き起こすがルナは喜びも悲しみも何も感情を表さなかった。

「ルナ…私よお母さんよ…」

メアリアは涙を流しながらルナを抱きしめると、時間が無いと部屋を飛び出した。

この日の為にコツコツと用意した抜け穴にルナと飛び込んだ。

「アナテマ…」

メアリアはアナテマの事だけが心残りだった…しかし今引き返したらルナが見つかってしまうかもしれないとグッと堪えて城から飛び出した。

メアリアは人気のない森に飛び込むと従魔を呼び寄せる。

【ユーリー、ありがとう…お願いこの子をどうかここから遠いところに連れて行って…】

メアリアは翼を持つ従魔にルナを託した。

【クエー?】

【私は行けないの…まだ残してきた子がいるから。あなたはこの子を無事にこの地から出したら好きに生きて、決してここに戻ってきては駄目よ】

【クエ…】

ユーリーは悲しそうにメアリアに擦り寄っるとメアリアの髪をモゴモゴと噛む。

【ユーリー、あなたとの契約を一日で解除します。だからそれまでにお願い!】

メアリアがルナをユーリーに縛り付けるとその場を去ろうと後ろを向いた。

【クエー、クエー】

ユーリーはメアリアも行こうと言うように服を噛んで引っ張っている。

【ごめんね…】

メアリアはユーリーを振り切って城へと戻った。

【クエー】

そんなメアリアを追いかけようとしてくるユーリーにメアリアは怒鳴りつける。

【言うことを聞きなさい!早く行くの!飛んで!】

メアリアに睨まれてユーリーは悲しそうにとぼとぼと歩くとチラッと後ろを振り返る。

メアリアは黙ってユーリーを睨みつけていた。

ユーリーは諦めたように翼を広げて飛び立った…

その後ろ姿を見てメアリアは胸を撫で下ろした。

これでルナは大丈夫…ユーリーありがとう。

メアリアはグッと覚悟を決めて今度はアナテマの元に向かった。
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