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13章

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その日の夜、久しぶりにヴォイドがメアリアの元を訪れた。

身を固めて緊張するメアリアはルナを寝室の奥へと隠しておいた。

「今日アナテマと会ったようだな…」

「は、はい。散歩中に偶然…ヴォイド様、あの子の傷はなんですか?あの子に何をさせているのです。どうかまた会わせては頂けませんか!」

メアリアがそう懇願するとヴォイドはそっと右手をあげた。

メアリアがその手をじっと見つめていると急に手が顔を目掛けて振り下ろされた。

バシッ!

気がついた時にはメアリアは頬をはたかれて倒れ込んでいた。

「口答えするな、それともう二度とアナテマに会わないようにしろ。もしもう一度会ったらお前には消えて貰う」

メアリアは痛む頬を押さえながら涙が止まらない。

「お前に会ったせいでアナテマの魔力が安定しない、全くなんて半端なものを産んだんだ…」

「もの?アナテマはものなんかじゃありません!あなたの子供なんですよ!」

「うるさい」

ヴォイドはメアリアのもう片方の頬も叩いた。

「きゃあ!」

メアリアは叩かれた勢いに後ろに倒れ込むと声を出してしまう。

するとメアリアの声にルナが寝室から顔を覗かせた。

「おかあさま?」

扉の後ろから出てくるとメアリアは必死に声をかけた。

「出てきちゃだめ!」

ルナはビクッと固まると動けなくなった。
そして目に涙を溜めている。

「うっ、うっ…」

「あれは…」

ヴォイドはルナの存在に気がつくと眉間に皺を寄せた。

「なるほど…あれが原因でアナテマの魔力が安定しないのか、そうか確か双子で生まれたのだったな…」

ヴォイドの言葉はメアリアに言っているものではなかった。

「お、お願いです!ルナはルナには何もしないで下さい!」

メアリアはヴォイドの足を掴んでしがみつく。

「邪魔だ」

しかしヴォイドはメアリアを相手にもしないでルナの元にいくと猫のように襟足を掴んで持ち上げた。

「ひっ…」

ルナはヴォイドに睨まれて涙も引っ込んで固まっていた。

「これも使えるか?」

ヴォイドはルナを見つめてクッと口角をあげるとそのまま連れて行くことにした、メアリアの叫び声はヴォイドの耳には届いていなかった。


ルナはそのまま部屋を出されると初めて城の中心部へと連れていかれた。

そして暗く狭い部屋にいくとそこにはアナテマがいた。

「あなてま…」

ルナは母親であるメアリアから自分にそっくりな兄がいて、今日会ったのがその兄だったと聞かされていた。

初めて連れてこられ場所に初めて会った兄、不安のなか本能的に頼れるのはアナテマだけだと思いそばに寄ろうとする。

「さわるな!」

しかしアナテマはルナを拒否した。

そしてその日からルナは怖い大人達に色々な実験をされる事になった。

体に無理やり魔力をながしたり、魔法を使って魔力を根活させたり、毎日が地獄のようでそのうちに涙は枯れて泣くこともなくなってしまっていた。

そんな時あのヴォイドが部屋に来ると大人達に実験の様子を聞いていた。

「この子はアナテマ様と違い魔力がほとんどありません…しかしアナテマ様のそばにいる時だけ魔力が増えるのです」

「なんだと?」

ヴォイドが眉間に皺を寄せると説明していた大人は顔を真っ青にした。

「す、すみません…」

「その時アナテマはどうなる」

「ア、アナテマ様は魔力が増えたり減ったりとするようです。何故そうなるのかは…調査中でして…」

しどろもどろに話すとヴォイドの様子をうかがっていた。

「双子…」

ヴォイドはアナテマとルナをじっと見つめた。

「ヴォイド様?」

何も喋らないヴォイドに不安になって周りにいた研究者達が声をかける。

「その二人の魔力を一緒にする事は出来るか?」

「一緒に?そ、それは難しいかと思います。まだ魔力のコントロールもできませんし一方に魔力を渡すのはヴォイド様でも難しい事かと……」

研究者は怯えながらそう話す。

「別に自分でやらせなくてもよい、魔力を取り出してアナテマに入れろ」

「そ、そんな事をしたらこの子は死んでしまいます!」

「別にいい、代わりならまた産ませる」

ヴォイドはなんでもないと言うように返事をした。

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