ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
149 / 687
番外編【ネタバレ注意】

新年番外編『ベイカーさんとデート』

しおりを挟む
【ミヅキ…すまない】

シルバが朝から神妙な顔で謝ってきた。

【どうしたの?】

私はシルバの様子にただ事ではないと思って真剣な顔で向き合う。

【今日はシンクと野暮用があってな、そばにいてやれないんだ】

【へ?】

シルバが寂しそうに顔を逸らした。

シルバ達が用事なんて珍しいなぁと思って理由を聞くとセバスさんに頼まれてギルドの冒険者達の昇級試験相手をして欲しいと頼まれたらしい。

報酬に魔物の肉を貰えると言われてふたつ返事で了承したそうだ。

【俺達が一緒にいれないから…今日はベイカーのそばを離れるなよ】

【はーい】

私はしっかりと頷くとギルドに向かうのに何度も何度も振り返るシルバ達に苦笑しながら手を振って見送った。

「ベイカーさーん」

シルバ達が行ってしまったのでベイカーさんを呼びにいく。

「ミヅキ、どうした?あれ?シルバ達は?」

いつも一緒にいるはずの二人がいないことに気がつくと私はギルドに向かった事を伝えた。

「だからシルバ達がね、今日はベイカーさんと一緒にいるようにって…」

「俺と?」

「うん!今日は二人っきりだね」

なかなかない事に私は嬉しくて笑いかけた。

「ミヅキと二人か…そうだ!どっか二人で行かないか?邪魔者…じゃなくてシルバ達がいない隙に!」

「ベイカーさんと二人で…」

それは楽しそう!私は喜んで了承した!

ご機嫌のベイカーさんと手を繋いで町へとくりだす。

「何処に行く?ミヅキの好きなところに連れて行ってやるぞ」

ニコニコとご機嫌で笑うベイカーさんがこちらを見下ろす。

「そうだなぁ…あっ!そうだ最近町に出来た甘い物が食べられるお店に行きたい!」

二人っきりのデート…デートと言えば甘い物だよね!

「よしよし、いいぞー!連れてってやる」

ベイカーさんは急ぐぞと私を抱き上げて走り出した!

お目当てのお店に着くと席はほぼ女性客で埋まっていた。

「わぁ…女の人だらけ…」

ベイカーさんは居心地悪いかな…

チラッとベイカーさんの様子を伺うとバチッと目があった。

「どうした?早く座ろう」

しかしベイカーさんは店内の様子が見えてないのかこちらばかり見て笑っている。

お店の人に案内されて席へと通された。

「座れてよかったね!何頼もうかなぁ…ベイカーさんはなににする?」

「俺かそうだなぁ~」

二人で一緒にメニューを眺める。

「おすすめがあるよ!果実のシロップ漬けジュースと果実を干した物を練り込んだパンに木の実を使ったお菓子だって!」

ドライフルーツのパンに木の実のクッキーって感じかな?

美味しそうなメニューにどっちにしようかと迷っていると…

「よし、その二つとも頼んで半分こにしないか?」

ベイカーさんの素敵な提案に顔をあげる。

「それ最高!!」

私はそうしようと頷いた。

ベイカーさんは店員さんを呼ぶとサラッと注文してくれる、その様子に店員さんのお姉さんがベイカーさんに見とれてた。

まぁベイカーさん普通にしてたらかっこいいもんな…複雑な気持ちでそれを眺めていた。

注文を終え二人でおしゃべりしながら待っているとお店に入口が騒がしくなった…

チラッと様子を伺うと、顔を布で隠した男達がナイフを手に店に乗り込んできていた。

「大人しくしろ!金を出せ!」

店員さんの腕を掴んでナイフを突き出し脅しだした!

「あっ!」

私は思わず立ち上がると椅子が倒れて派手な音を出してしまう!

男達がそれに気がついてズカズカと近づいて来ると

「うるせぇぞガキ!大人しくしてろ!」

黙らせようと私の顔めがけて拳を突き出した!

殴られる!

私は咄嗟に目をつぶるが顔に拳がぶつかる事はなかった。

そっと目を開けると…

ベイカーさんが男の手をガシッと掴んでいた。

「俺の子に何しようとしてんだ?今さぁ二人でデート中なんだよ。二人きりになれるのなんて中々ないんだからな!見ろよこの様子!羨ましいだろ!」

デレッとした顔で男に笑いかけている。

「べ、ベイカーさん?」

今の状況わかってる?

なんかちぐはぐな態度に私も男達もたじろいでいると

「き、気持ちわりぃな!離せ!」

男は手を振り払おうとして暴れてその腕が私の頬に軽く当たった。

「いたっ…」

びっくりして思わず顔を押さえると…

ギシッ!

「ギャアアア!!」

骨が軋む音がして男が叫びながら膝をついた。

見るとベイカーさんが鬼の様な形相で男を睨みつけながら腕を握り潰していた。

「何してくれてんだ…楽しい時間を邪魔するんじゃねぇよ…しかもミヅキの顔を殴ったな…」

男を片手でそのまま持ち上げると席を立ち外に投げ出した!

「な、何しやがる!」

仲間の男達が一斉にベイカーさんに襲いかかる…が掴まれては外に投げられた。

最後の一人の頭を掴みアイアンクローをかますとギシギシと鈍い音がする。

「せっかくのミヅキとのお出かけなんだよ…変な手間取らせないでくれよ…」

ベイカーさんは男に何か呟くが男は泡を吹いて白目を向いていた。

それもゴミの様に投げつける…すると店内にいた人達から拍手がおきた!

「ありがとうございます!」

お店の人からも感謝されベイカーさんはなんの事だと戸惑っていた。

誇らしそうに席から見てるとベイカーさんが綺麗なお姉さん達に囲まれる。

「お兄さん強いのね…よかったら一緒に料理を食べませんか?」

「あっ!なら私達の席に来てください!奢りますよ」

お姉さん達はたくましいベイカーさんの腕を掴んで引っ張っている…まぁ確かにかっこよかったからお姉さん達の気持ちもわかるが…ベイカーさんは私と来てるのに…

少し頬を膨らませてお姉さん達に埋もれて見えなくなるベイカーさんを寂しい気持ちで見ていた。

「悪いけど先約がいるんだよ」

人の塊の中心でベイカーさんの断る声がした。

「えー!?どうせなら一緒にみんなで食べましょうよ~」

お姉さん達もなかなか譲る気は無いようだ…

「退いてくれ!」

こちらに来ようとするベイカーさんを足止めすると

「そんなにその子がいいわけ?」

不満そうなお姉さんの声にベイカーさんが即答した。

「当たり前だ!何より大事なんだ!邪魔しないでくれよ」

「邪魔…!」

そこまで言われてお姉さん達は肩を落として道を開けた。

ベイカーさんはお姉さん達の間からこっちを見ると私を見つける。

そして嫌そうに眉を顰めていた顔が私を見て喜びに変わる…嬉しそうにニコニコしてこちらに歩いてきた。

「ミヅキ!大丈夫だったか?」

爽やかな笑顔で微笑むとサッと私を抱き上げて怪我が無いかを確認される。

「だ、大丈夫だよ…」

恥ずかしそうに下を向いて答えると

「よかった、全くえらい目にあったな」

そうはいいながらもご機嫌そうな声が返ってきた。

「お、お兄さん…大事な子って…その子?」

お姉さん達は相手が幼い私と知って驚いた顔をしている。

「ああ、可愛い子だろ!」

ベイカーさんに自慢されるように紹介されて気まずい気持ちでペコッと頭を下げた。

「ミヅキ…です。あのね…ベイカーさんと私…デート中なんです。連れてかないで…」

伺うように今の素直な気持ちを伝えてみた。

「やだぁ!それなら早く言ってよ!ごめんね~お兄さんとデート楽しんで!」

お姉さん達は嫌な顔せずにっこりと笑うとごゆっくりと店を出ていった。

「あれ?」

意外な反応に驚いているとお店の人がサービスだと料理をたくさん運んで来てくれた。

「ラッキーだな!ミヅキ食べようぜ」

テーブルに並ぶたくさんの料理を二人で分け合って食べる…

「美味しい~!ベイカーさんこれ美味しいよ」

私が食べていた料理を見せると

「どれ?ちょっとくれよ」

ベイカーさんが大きく口を開けた…

これって…あーん…だよね。

私は頬を赤く染めながらベイカーさんの口に木の実のクッキーを近づけた。

パクッと一口で食べたベイカーさんは美味しそうに顔を綻ばせる…

「うん…美味い」

舌をペコッと色っぽく出して、唇を舐める。

「うう…甘い…」

口も胸にも甘さが広がる…

「ああ、甘いな!」

そう言う意味じゃ無いけど…

また一緒に来ようなというベイカーさんに私は笑顔で了承する。

二人で本当のデートの様な甘い時を過ごした。

それからしばらく、ベイカーさんはシルバ達に今日はギルドに行かないのか?用事はないのか?と執拗く聞いて怒らせていた。

ふふふ…またいつか二人っきりで行こうね!
しおりを挟む
感想 6,825

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう
恋愛
わたし、ハノン=ルーセル(22)は術式を基に魔法で薬を 精製する魔法薬剤師。 地方都市ハイレンで西方騎士団の専属薬剤師として勤めている。 そんなわたしには命よりも大切な一人息子のルシアン(3)がいた。 そしてわたしはシングルマザーだ。 ルシアンの父親はたった一夜の思い出にと抱かれた相手、 フェリックス=ワイズ(23)。 彼は何を隠そうわたしの命の恩人だった。侯爵家の次男であり、 栄誉ある近衛騎士でもある彼には2人の婚約者候補がいた。 わたし?わたしはもちろん全くの無関係な部外者。 そんなわたしがなぜ彼の子を密かに生んだのか……それは絶対に 知られてはいけないわたしだけの秘密なのだ。 向こうはわたしの事なんて知らないし、あの夜の事だって覚えているのかもわからない。だからこのまま息子と二人、 穏やかに暮らしていけると思ったのに……!? いつもながらの完全ご都合主義、 完全ノーリアリティーのお話です。 性描写はありませんがそれを匂わすワードは出てきます。 苦手な方はご注意ください。 小説家になろうさんの方でも同時に投稿します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。