上 下
150 / 687
番外編【ネタバレ注意】

アランの春

しおりを挟む
私はその日アランさんとシルバ達と町を歩いていると…

「や、やめてください!」

路地裏から女の人の嫌がる声が聞こえてきた。

私とアランさんは顔を見合わせると頷きあい、声のする方へと急ぎ走った!

するとそこには綺麗な女の人がガラの悪い男の人達に囲まれ腕を掴まれていた。

「離してください!人を呼びますよ!」

女の人は抵抗するが、男達はやめる気は無いようでニヤニヤと笑っている。

「好きなように声だせよ、でも誰も助けてなんてくれないと思うぜ」

男達はナイフを取り出すと刃をチラつかせた。

女の人の顔色がサーっと青くなると…

「ちょっと、何してるんですか!」

やめさせようと声をかける!

男達が私の声に振り向くと…

「そのくらいにしておけ、今なら許してやるから」

いつの間にかアランさんが男達のそばにいき、女の人を掴んでいた手を捻りあげていた。

「誰だお前…口出すんじゃねぇよ!これは俺達とこの姉ちゃんの問題なんだからな!」

「知るか!女が嫌がってるのを黙って見てられるか!」

「ア、アランさんがかっこいい…だと」

私は驚きアランさんを見つめると

「そこ!うるさいぞ!」

アランさんにギロッと睨まれた。

「この人達が…いきなり…私怖くて…」

女の人はブルブルと震えてアランさんにしがみついた!

「うおっ!」

アランさんの叫び声に目を向けると鼻の下が伸びている…よく見るとお姉さんの大きな胸がアランさんのたくましい腕に当たっていた。

「まぁ任せておけ」

アランさんは女の人にとびっきりの笑顔を見せると胸を叩いた。

「この野郎!調子にのるなよ!」

「女にいい所見せたいからってこの人数相手にする気か?」

男達はアランさん達を取り囲こもうとすると

「あんたはあの子の傍に行きな」

お姉さんを私の方へと逃がした…すると男達が私達に目を向ける。

「逃がすかよ!」

一人がお姉さんに手を伸ばそうとするので

【シルバ!】

「グルルル…」

私達の前には頼りになるシルバが立ち塞がった。

【ミヅキに触るなら…噛み砕く!】

シルバの唸り声に男達は驚き尻もちをついた。

【シルバ、この人達私じゃなくてお姉さんに興味あるんだよ】

【はっ?ミヅキに興味無いとかあるのか?こいつら変態なのか?】

シルバが理解できないと首を傾げる。

うちの子の私の評価が変だ。

「おい!シルバ!いいとこ取るんじゃねぇよ!ここは俺に任せておけ!」

アランさんがシルバを注意するとシルバは私の指示を仰いだ。

【ああ言ってるがどうする?アランの事、齧ってもいいか?】

【だ、ダメだよ!まぁアランさんもいい所見せたいみたいだからここは花を持たせてあげよう。シルバはお姉さんに手を出そうとする人がいたら押さえつけてくれる?】

【わかった】

シルバが頷くと私はお姉さんの手を引っ張ると自分の方に引き寄せた。

「お姉さん!こっちに来てください」

「だ、大丈夫なの?」

お姉さんはシルバに怯えながら私の手を握りしめた。

「はい!この子は私の従魔なのでお姉さんに危害は加えませんよ」

シルバは安全だと背中を撫でて見せた。

するとシルバがうっとりと私の撫でる手を気持ちよさそうにしていると…

「あら、本当に気持ちよさそう…よく見るとかわいいわね」

「ですよね!シルバは可愛いんです!毛並みも最高で強くて頼りになるし、もう!一番かっこいいの!」

「そ、そうなの?」

お姉さんがシルバを見ると触ろうと手を伸ばした。

「グルルル…」

シルバがそれを拒否した。

「きゃあ!なんなの!」

お姉さんが手を慌てて引っ込めてシルバに怯えると

【こら!シルバ吠えちゃダメでしょ!】

【ミヅキ以外に頭撫でられるとか絶対に嫌だね】

【もう~】

シルバがぷいっと横を向く。

「おい!こっちも見てくれよ!」

こちらでバタバタしているとアランさんがいつの間にかそばに来ていた。

「あれ?終わったの?」

「ああ、全く大した事ない奴らだな。まるで手応えないぞ」

アランさんが物足りなそうに肩を振り回す。

「ありがとうございます!本当に助かりました!」

お姉さんがそんなアランさんの手を掴かんでぎゅっと握りしめた。

「いいってことよ」

アランさんが鼻の下を再び伸ばすと…

「よかったらお礼をさせて下さい!」

目をキラキラとさせてアランさんを見つめる…私はアランさんとお姉さんを交互に見ると…

「私は何もしてないですからお礼なら、アランさんにしてあげて下さい!」

ニコッと笑った。

「ミヅキ…お前って奴は…」

アランさんが空いた手で口をおおって感激している。

頑張ってアランさん!

私はアランさんにウインクを送った!

「じゃあよかったら…そこのお店で何か奢らせて下さい」

「いいのか?じゃあお言葉に甘えて…」

アランさんが同意するとお姉さんが腕を組んで二人でお店に消えていった。

【あいつ…まぁいいか】

シルバが何か言いたそうに並んで歩いている二人を見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの… 乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。 乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い! 原作小説?1巻しか読んでない! 暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。 だったら我が道を行くしかないじゃない? 両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。 本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。 ※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました) ※残虐シーンは控えめの描写です ※カクヨム、小説家になろうでも公開中です

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚

克全
ファンタジー
田中実は60歳を前にして少し心を病んでいた。父親と祖母を60歳で亡くした田中実は、自分も60歳で死ぬのだと思ってしまった。死にたくない、死ぬのが怖い、永遠に生きたいと思った田中実は、異世界行く方法を真剣に探した。過去に神隠しが起ったと言われている場所を巡り続け、ついに異世界に行ける場所を探し当てた。異世界に行って不老不死になる方法があるかと聞いたら、あると言われたが、莫大なお金が必要だとも言われた。田中実は異世界と現世を行き来して金儲けをしようとした。ところが、金儲け以前に現世の神の力が異世界で使える事が分かり、異世界でとんでもない力を発揮するのだった。

余命一週間を言い渡された伯爵令嬢の最期~貴方は最期まで私を愛してはくれませんでした~

流雲青人
恋愛
◇書籍化が決まりました。 ◇9月下旬に販売予定です。読者様のおかげで実った書籍化です。本当にありがとうございます。 また、それに伴い、本編の取り下げが行われます。ご理解の方、よろしくお願い致します。 ______________ 伯爵令嬢のステラに突き付けられたのは、あまりにも突然過ぎる過酷な運命だった。 「ステラ様。貴方の命はあともって一週間といった所でしょう。残りの人生を悔いのないようにお過ごし下さい」 そんな医者の言葉にステラは残り僅かな時間ぐらい自分の心に素直になろうと決めた。 だからステラは婚約者であるクラウスの元へと赴くなり、頭を下げた。 「一週間、貴方の時間を私にください。もし承諾して下さるのなら一週間後、貴方との婚約を解消します」 クラウスには愛する人がいた。 自分を縛るステラとの婚約という鎖が無くなるのなら…とクラウスは嫌々ステラの頼みを承諾した。 そんな二人の一週間の物語。 _______ ゆるふわ設定です。 主人公の病気は架空のものです。 完結致しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。