上 下
376 / 687
9章

488.お騒がせ

しおりを挟む
久しぶりのミヅキの手の感触にセバスの荒れていた心が穏やかになる…

ギュッと軽く握り返すと…

「そうですね、ポルクスさんとイチカさんにもお祝いが言いたいです」

いつものミヅキが大好きな笑顔で微笑み返してくれた。

「よいしょ…」

セバスはミヅキを抱き上げると

「セバスさん!ちゃんと回復してないんだからおろして、シルバに乗るから」

ミヅキがまだ傷が残るセバスさんに無理して欲しくなおのでおりようとすると

「嫌です」

ハッキリと笑顔で言われる。

「久しぶりに会えたのですからどうかこのままで」

間近で懇願するように言われミヅキは頬を染めて大人しく抱かれている事にした。

「じゃあせめて回復魔法をかけさせてよ…」

セバスさんを見ると

「いえ…これは自分の行いの罰ですからこのままでいいです。それにミヅキさんにあまり回復魔法を使わせたくありませんから」

ベイカーさんもセバスさんもいつも自分の事より私の事を第一に考えてくれる。

でも私だって二人が何より大切なのに…

ミヅキはセバスさんの雷に打たれ赤くなっていた腕を触ると…

「痛いの痛いの飛んで行け…」

優しく撫でた…

それを見ていたアランは

「それいいな、ミヅキ俺のも頼むよ。あの石頭のおかげでデコが痛いんだ」

アランが髪をかきあげ赤くなったおでこをミヅキに見せると

「あれ?アランさんもセバスさんと同じ所怪我したの?」

ミヅキがアランさんのおでこに手を伸ばすと…

「その人は大丈夫です。肉でも食べればすぐに治りますから。ほらアランこれをやろう」

セバスは収納から干し肉を出すとアランに差し出す。

「迷惑かけた謝罪の気持ちです」

にっこりと笑うとミヅキをアランから遠ざける。

アランはカラカラの干し肉を受け取ると…

「こんなので俺の痛みが消えるか!」

ガブッとやけになって干し肉にかぶりつくと…

「美味いな…」

意外に美味しくもぐもぐと口を動かす。

機嫌の少し戻ったアランさんにミヅキは吹き出して笑ってしまった。


村に戻ってくるとデボットやレアル達が心配そうに村の外でミヅキ達の帰りを待っていた。

ミヅキ達の姿を見ると

「よかった…ってセバスさん!?」

「まさか…あの爆音は…」

二人がなぜか一緒に帰ってきたセバスさんに驚いていると

「すみません…少し勘違いを致しまして…もう大丈夫ですから」

三人のボロボロな様子に何があったか感じ取る。

「ま、まぁ…こうやって仲良く帰ってきたって事は喧嘩は終わったんですよね?」

少し怯えながら聞くと

「喧嘩じゃねぇよ!セバスの一方的な殺戮だ!」

「は、は…」

デボットがから笑をすると

「誤解が解けなければそうなっていたかも知れませんね」

セバスが冗談で笑うが先程の禍々しかった雰囲気にデボット達は笑うことが出来なかった。

「ミヅキ様!」

イチカがセバスさんに抱っこされてるミヅキに駆け寄ると

「大丈夫でしたか?」

心配そうに近くにかけ寄ってくる。

「あっイチカ、私は大丈夫だよ。ごめんね結婚式の夜に心配させちゃって」

ミヅキが謝ると

「イチカさん夜分に本当に申し訳ない。そしておめでとうございます。あなたの花嫁姿見たかったです」

残念そうに笑うと

「セバスさん…」

イチカが恥ずかしそうに頬を染めた。

「そしてポルクスさんもおめでとうございます。とうとう一緒になれたのですね」

セバスがすぐ後ろにいるポルクスにも声をかけると…

「い、一緒に…っていや!それは!」

なぜか慌て出すと隣でイチカがこれでもかと言うくらい真っ赤になっている。

「あれ?イチカなんか疲れてる?」

ミヅキがイチカの様子に気がつくと…

「あっ…すみません。そういう意味で言ったのではなかったのですが…ようやく夫婦となれて良かったですね…と言いたかったのです」

セバスが苦笑すると…

「あっ!そ、そういう意味ですよね!はい!ありがとうございます!」

ポルクスまで赤くなりながら恥ずかしそうにすると…

「なんだ、やる事やってんのか?」

アランさんがデリカシーの無いことをサラッと言ってしまう。

「やる?」

ミヅキはアランの言葉にイチカとポルクスを交互に見ると…あっ…と顔を真っ赤に染めた。

「起こした私が言うのもなんですがまだ夜中です。一旦休んでまた明日ゆっくり話しましょう」

セバスが恥ずかしそうにしている二人を家に戻るように声をかけると…ほっとした面々も眠気が戻ってくる。

「さぁミヅキさんも寝ましょう。今日はすみませんでした」

「ね、ねる!」

イチカ達の様子に一人動揺しているミヅキはセバスさんの言葉に過剰に反応してしまう。

「ええ…一緒に寝ましょうか?」

セバスさんは恥ずかしがるミヅキをギュッと抱きしめると…

「あ、あぁぁぁ!」

アワアワと慌てるミヅキにクスクスと笑いかけた

「何を想像しているのかわかりませんが隣で寝るだけですよ。それとも私が隣では休まらないですか?」

寂しいそうに眉を下げると

「そ、そんな事ないよ!セバスさん一緒に寝よ」

落ち着いて深呼吸するとミヅキはいつも通り笑ってあげた。


みんなで布団に戻るがセバスの分はなかったのでミヅキの布団に一緒に寝ることに…シルバ達とセバスさんに挟まれてなんだか安心すると眠くなってきた…

はぁ~とあくびをすると布団を引き上げられトントンとリズムよく優しく布団を叩かれる。

気持ちいい振動にミヅキの目はうつらうつらと閉じていく。

「おやすみなさい」

セバスさんがそっと囁くと

「おやすみ…なさい」

ミヅキはあっという間に眠りについた。

「早いな…」

アランさんがミヅキが寝るのを見ていると

「やはりこういう所は子供ですね…」

嬉しそうにミヅキの寝顔を堪能する。

セバスはやっと帰ってきた温もりに眠れる気がしなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。