上 下
377 / 687
9章

489.旅立ち

しおりを挟む
何かが優しく頭を撫でる感触が心地よく、私は目を覚ました。

「おはようございます…」

寝ぼけまなこを擦りながら目を開けると前にご機嫌のセバスさんが笑顔全開で私を撫でていた…

「お、おはようございます…セバスさん早起きですね…」

はぁ~とあくびをすると…

「気がつくともう朝になってました」

「ん?」

なんだかおかしな発言に目が覚める。

「セバスさん…寝ましたか?」

私が聞くと

「私は三日は寝なくても大丈夫なので…」

その答えは…寝ていなかったと言うことか?

私はわけがわからず朝から頭を抱えた。

【ミヅキおはよう】

シルバが悩む私の頬を舐めると

【そいつは一晩中ずっとミヅキの事を見ていたぞ。ニヤニヤと気持ち悪かった…】

シルバが欠伸をしながら教えてくれる。

「えっ…」

ニコニコと笑うセバスさんを見ると何も言えなくなり聞かなかったことにした…

外に出るともう村の人達が起きて昨日の片付けを手伝ってくれていた。

「おはようございます!」

「おはよう、昨日は楽しかったなぁ~」

「定期的にまたやりたいもんだ!」

村の人達も楽しそうに片付けをする。

「誰かまた結婚式しないかね~この際この村で挙げられますとか宣伝して回ろうか」

村人が冗談を交えながら話していると…

「それいいわね!」

エミリーさんが乗り気になる!

「私司祭様を募集してみるわ!うちは料理も評判いいしミヅキちゃんが作ってくれたウエディングケーキの材料もあるし!」

「いいですね!私はドレス作りがしたいです」

村の娘達がキャッキャッと騒ぎ出すと…

「ミヅキちゃんうちの村でそういう事してもいいかい?」

エミリーさんが聞いてくる。

「えっ…別に誰がやったっていいんだから大丈夫だよ」

「そうかい?本当にミヅキちゃんは欲がないねぇ…」

困った様に悪うと

「ならうちの牛乳はミヅキちゃんところは特別価格でいいからね!今回もたくさん持ってておくれ!」

「うん!」

そういう方がやっぱり嬉しいや!

ホクホク顔でミヅキは牛乳をしまっていった。

ミヅキがせこせこと牛乳をしまっている間に…

「昨日は大変お騒がせしました」

セバスさんがエミリーさんに挨拶をしている。

「大丈夫だよ。心配になる気持ちはわかるからね。あんたみたいに強い人がそばにいるなら安心だよ」

エミリーさんがトンとセバスさんの肩を叩いた。

「セバスさん…知らせないで悪かったな」

「本当にごめんなさい」

ルンバさんとリリアンさんが申し訳なさそうに声をかけると

「いいえ!私の勘違いからこのような事になってしまい…謝るのは私の方です。ポルクスさんの結婚式をぶち壊さないで本当によかったです」

「ぶち壊す気だったんだ…」

「いえ!それはイチカさんを捨ててミヅキさんを取ったとしたらですよ」

セバスさんが笑うと

「そんな事は絶対ありませんよ…」

ポルクスさんが怖々声をかける。

「おはようございます」

イチカと並んで現れる、ポルクスはイチカを気遣うように横に寄り添っていた。

「お二人とも…改めておめでとうございます。二人が末永くお幸せにいることを願ってますよ」

セバスさんが笑ってイチカの頭に手を置く。

「ありがとうございます…セバスさん…私はポルクスさんと幸せになりたいと思います!ですからミヅキ様の事よろしくお願いします」

イチカは深々と頭を下げた。

「ええ、大丈夫です。きちんと見ておきますからあなたは自分の幸せを優先しなさい。それがミヅキさんも一番喜ばれますよ」

「はい!」

「ポルクスさんもイチカさんを大切にしなさいね、約束を違えば…」

ニコッと笑うと

「大丈夫です」

ポルクスはセバスの微笑みに怯むことなく言い返した。

「大丈夫そうですね。イチカさんもとても幸せそうですから」

「本当だよな~二人が来るとむず痒くて仕方ないわ」

セバスの後ろからアランが声をかける。

「嫌だね~妻子持ちは幸せな空気をプンプンと醸し出してて!」

ベイカーも便乗すると

「ベイカーさんもアランさんも頑張ってください」

ポルクスが余裕の笑みで返すと

「なんで俺達だけなんだよ!セバスさんだって同じだろ!」

「いや、セバスさんは本気になれば今すぐでも相手が見つかりそうだし…」

ポルクスの言葉にイチカがうんうんと納得する。

「確かにセバスさんのファンは多いよね、しかもみんな本気な子が多いからねぇ…」

覚えのあるリリアンさんが苦笑すると

「いえ、そんな事ありませんよ。それに私は今は他の事に感心がありますからね」

笑って楽しそうに片付けをしているミヅキを見つめた。

「まぁ俺も今はいいや、頑張るのはアランさんだけだな」

「俺は…美味い飯を作ってくれて俺の世話を甲斐甲斐しくしてくれていつも寄り添ってくれる人がいいな!」

アランさんの理想に…

「それって…」

話を聞いていたデボットやレアルが顔を合わせると…

「なんだ?いるのか!」

アランさんが期待を込めた目で見ると

「いや…それってセシルさんじゃないですか?」

「はっ?」

アランさんが顔を顰めると

「だって料理も出来るし、アランさんの世話してたし常に寄り添ってましたよね?」

「まじか…」

アランが愕然とすると

「セシルさんが女性だったら理想そのものだな!」

ベイカーさんがからかうように笑うと

「なるほど…あいつを女にすればいいのか…」

アランさんが真剣に考え込んでいる。

「アランさん?じょ、冗談だよな」

ベイカーが引き笑いをすると

「あ、ああ…」

アランは曖昧に返事を返した…


村の片付けも終えてミヅキ達はセバスさんと町に帰ることにした。

「皆さんお世話になりました!牛乳もたくさんありがとうございます」

楽しかった結婚式も終えて牛乳も無事たくさんもらい大満足のミヅキだった。

「イチカとポルクスさんはここでしばらくお別れだね」

寂しそうに二人を見ると

「ミヅキ様…お体に気をつけて無理しないで下さいね」

イチカが寂しそうに手をとる。

「うん、イチカもポルクスさん達と仲良くね!王都に帰ったらみんなにもよろしく言っておいてね」

「はい!」

「ミヅキ、色々とありがとうな。イチカも別に一生の別れじゃないんだから笑顔で見送ってやろう」

ポルクスがイチカの肩に優しく手を置く。

「おお、ポルクスさんすっかり旦那さんだね!」

二人の距離がなんだか縮まった感じに思わずニヤニヤしてしまう。

「二人は村で少し過ごしてまた王都に戻るんでしょ?」

「はい、エミリーさんのお手伝いをしながら料理を習いたいと思ってます」

「頑張ってね!あと帰る時は気をつけてね!大変ならプルシアと送るから言って!あとは…寂しくなったら…」

心配になって思わず言うと

「大丈夫ですよ。こう見えても戦えますからね」

イチカはチラッと足の鞭を見せると…

「それにこの指輪があればいつでもミヅキ様と繋がっているのを感じられますから」

イチカは大事そうに私からの指輪とポルクスさんからの指輪を触った。

いつもいつも近くにいてくれたイチカの旅立ちにミヅキの方が寂しくなる…

「また…一緒にご飯食べようね…」

伺うようにイチカに言うと…イチカは顔をみるみると顔を赤くして…

「もちろんです!ポルクスさんのものになった今でもミヅキ様への感謝の気持ちは変わりませんから!」

イチカがギュッとミヅキを抱きしめた。

「そっか…ポルクスさんのものになったのか…」

なんだか前よりも大きくなったイチカの胸に埋もれてミヅキは別の事を考えてしまった…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩
ファンタジー
「ほっといて下さい」のもうひとつのお話です。 本編とは関係ありません。時系列も適当で色々と矛盾がありますが、軽い気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ✱【注意】話によってはネタバレになりますので【ほっといて下さい】をお読みになってからの方がいいかと思います。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。