ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい！

9章

487.払拭

「と、とりあえずアランさんの事は置いといてセバスさん落ち着いて下さい！」

ベイカーが大声でセバスに声をかけると

「私はあなたにも怒ってますよ」

セバスが微笑みながらベイカーを見つめる。

「えっ！俺？」

思わぬ矛先にベイカーが慌てると

「それで？一番重要なことを聞いていませんでした…本当は聞きたくないが…」

セバスさんの語尾が弱々しい…

「重要な事？」

真剣な顔でベイカーに向き合うと

「相手は誰なんですか…」

「あ、相手？」

「結婚のです！」

「ポルクスの？」

「ポルクス…？」

ピカッ！

空が狼狽えるように光った…

「セ、セバスさん？」

何故か衝撃を受けてい様子のセバスに伺うように声をかける…

「ポルクスだと…あいつはミヅキさんに手を出したのか？イチカさんがいるのに？」

「ミヅキに？」

「ベイカー！お前はそれを許したのか！？」

「えっ！？な、何？」

セバスは鞭を高くあげると雷を鞭に落とした…それを魔力と練るとベイカーに向かって放った！

「ま、まじ？」

ベイカーは咄嗟に構えて剣で雷を切る！

しかし全てを防ぎきれずに後ろに吹き飛ばされた！

「うっ！わあぁぁぁー！」

ベイカーは木々をなぎ倒しながら吹き飛んだ。

「お、おい！やりすぎだろ！」

アランは再度ベイカーを狙っていたセバスの攻撃を受け止める！

「邪魔だ、アランどけ！」

セバスがアランを睨みつけるとそのまま顔を近づける！

「いい加減に…しろっ！」

アランは近づくセバスの頭に思いっきり頭突きをかました！

ゴンッ！

骨まで響く音にお互い頭を抑えて蹲る。

「お前らしくない！ちょっと頭を冷やせ！」

アランが涙目になりながらセバスに怒鳴ると

「わかってますが…納得出来ない…」

赤くなったおでこを抑えながら下を向いて力なく答えると…

「セバスさーん！」

可愛いあの子の声が聞こえた。

思わず顔をあげると、会いたかったあの子が心配そうに顔を曇らせてこちらに近づいてくる。

「ミヅキ…さん」

後ろからはシルバとベイカーがよろよろとついてきている…どうやら吹き飛ばされたベイカーがミヅキとあったようだ。

「セバスさん！」

ミヅキが自分に近づいてくると…ゴロゴロと雷雲が騒ぎ出した…

ちょうどミヅキの上に雷雲が移動していた。

「ミヅキさん！」

セバスはミヅキに駆け寄ると自分の体でミヅキを包み込む、すると直後にセバスの体に雷が落ちた！

ドンッ！痺れは無いが軽く衝撃が走る！

「な、何？セバスさん大丈夫？」

ミヅキの声にセバスはほっとする。

よかった…ミヅキさんに落ちなくて…

「ミヅキ！セバスさん！大丈夫か！」

二人に落ちた雷は地面を黒く焦がしている…その様子にベイカー達が慌てて駆け寄ってきた。

「私は大丈夫、なんともないよ」

ミヅキはモゾモゾとセバスさんの腕の間から顔を出す。

「私も…大丈夫…です。雷には…耐性があります…から…まって、今雲を散らします…」

セバスが笑ってミヅキの無事を確認すると

「セバスさん背中が…」

「セバス…大丈夫か？」

ベイカーとアランがセバスの背中を痛々しげに見つめる…セバスの背中の服は焼け焦げ皮膚が火傷で捲りあがっていた。

「大丈夫…雷を逃がすとミヅキさんにまで感電してしまうので…自分の体に留めただけですから」

「だけって…背中の皮がめくれてるぞ…」

「嘘！」

ミヅキが腕の中でもがくがセバスさんが離してくれない。

「セバスさん！背中見せて！」

「嫌です…」

久しぶりに感じる痛みにきっと酷いことになっている背中の傷をミヅキには見せたくなかった…

「大丈夫…少し休めば治りますから…アラン…上着を貸してくれ」

セバスがアランを見ると

「ほらよ」

アランが自分の上着を脱いでセバスの背中に被せた。

「もう！セバスさん離して！」

ミヅキの言葉にセバスは顔を曇らせる…

「ミヅキ…さんそれよりも重要な聞きたい事があります。なんで結婚式の事私に教えていただけなかったのですか？」

「あっ…そ、それは…」

急に話を変えられてミヅキがたじろぐと

「私にはミヅキさんの結婚式に出る資格はないと？」

「私の結婚式？」

ミヅキが首を傾げてベイカーとアランを見つめる。

二人ともよく分からんと首を振る。

「だって…ポルクスさんとイチカの結婚式だから…セバスさん達はお仕事忙しいと思って…でも後でちゃんと報告しようと思ってたよ？」

寂しそうな顔で下を向くセバスさんの顔を両手で包むと上を向かせる。

「セバスさんがそんなにイチカ達の結婚式に出たかったなんて…ごめんね」

ミヅキがしょんぼりと謝ると…

「えっ…ポルクスさんとイチカさんの結婚式？」

「うん…どうしよう…もう一回二人に結婚式してもらう？」

あんまりにも寂しそうなセバスさんにミヅキは本気で悩んでいると…

「ミヅキさんが結婚式をするのでは？」

「私は司祭役だよ。結婚式の準備は全部したけど、だって大切なイチカの結婚式だから…ただ…やりすぎたのはごめんなさい！」

ミヅキは怒られる前に先に謝っておく。

チラッと何も言わないセバスさんを見るとセバスさんらしからぬ顔で口を開けたまま固まっていた…

つんつん…動かないセバスさんを突っつくと

「セバスさんさっきかどうしたの？なんか変だよ？」

心配そうにセバスを見つめていると…おでこの傷に気がつく…よしよしと撫でながら回復魔法をかけると

ドサッ！

セバスが倒れ込んだ！

「えっ！？」

目の前で倒れ込むセバスさんにあわてて抱き起こそうと手を出すと…

「よかった…」

ガシッとその手を掴まれ絞り出すようにセバスさんが唸った。

「よくない！」

ミヅキはセバスさんを抱きしめると回復魔法をかけた！

怪我も治して落ち着いたセバスさんに改めて話を聞くと…

「やだ！セバスさん私が結婚するって勘違いしたの？」

ミヅキに笑われてセバスさんが苦笑いする。

「そのようです…シルバさん達が町に来たのをギルドの人達が見ていて…色々と間違った情報があったようです…」

面目ないと恥ずかしそうにすると

「セバスさん！そんな事俺が許すわけないでしょうが！」

ベイカーがセバスの勘違いに怒りをあらわにする！

「ですからそれを許可したと思ったベイカーさんの事が許せなくて…すみませんでした」

セバスはベイカーに頭を下げた。

「ま、まぁ…確かにそう勘違いして俺だけ呼ばれなかったら…うん！暴れるな」

ベイカーは頷くと

「セバスさんの気持ちはわかるよ」

自分だったらと想像してしょうがないと笑って許した。

「おい！ベイカーは許しても俺は許さんぞ！関係ない俺にあんなに怒りをぶつけやがって！」

アランがセバスを責めると

「八つ当たりしたのは悪かったが…王宮の部隊兵を辞めたことは後でじっくり教えてもらいますよ」

セバスはアランを見つめると…

「そ、それは…」

サーっと目をそらす。

「まぁお前にも考えがあったんだろうが…」

セバスが苦笑すると…

「とりあえず戻ろうよ、きっとみんなが心配してるよ」

ミヅキはギュッとセバスさんの手を握りしめた。